Riverbed、「SD-WANは昔のPBXからの解放と同じ」SD-WANは、何をしてくれるのか(8)(2/2 ページ)

» 2017年09月25日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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WANのコストは、回線だけの話ではない

――違いの分かる人たちは、今の話を理解できますが、そういう人たちばかりではありません。「コストを削減できますよ」と言えるに越したことはないはずです。ViptelaなどのSD-WANベンダーが、当初コスト削減を強力に訴求したのも当然だと思います。

オファレル氏 コストはネットワークトランスポートだけの話ではありません。グローバルネットワークの運用組織の問題があります。インターネット接続サービスを使うことでコストを低減したり、帯域幅を広げたりするだけでなく、グローバルネットワークの設計・構築・運用をシンプル化することでコストを低減できるのです。

 例えば欧州では、大企業の多くがルータ運用代行サービスを使っています。「接続拠点を増やしたい」「ポリシーを変更したい」「アプリケーションを追加したい」「QoSを変更したい」など、ネットワークに何らかの変更を加えたい場合、いちいちルータ運用代行業者に連絡して、その後設定が終了するまで待たなければなりません、これでは昔のPBXの世界と変わりません。しかも、1つの変更作業に、例えば2万ドルが掛かるケースもあります。クラウドコンピューティングの時代に、こんなことをやっている意味はあるのでしょうか?

 2016年の初めごろ、私たちは顧客に、「SD-WANとは何か」を説明するのに苦労していました。しかし、CiscoがViptelaを買収したことで、SD-WANはCiscoのお墨付きをもらったとも言えます。実際、私たちも最近は、SD-WANについて説明する必要がなくなりました。多くの顧客は何らかのSD-WAN的なプロジェクトを、既に進めています。CiscoのISRルータ製品の多くについて、EOL(End of Life:提供終了時期)が近づいていることも、こうした変化を後押ししています。

 こうしたアプローチを、WANだけでなく、有線/無線LANに広げられると、さらにメリットが大きくなります。

 クラウド管理型Wi-Fi製品の市場も広がってきています。大学では、学生1人当たり6〜10のモバイルデバイスをWi-Fi接続するようになるとの予測もあります。このような、ボリュームの飛躍的な拡大に対応できる管理ソリューションが求められています。

 さらにこれがIoTにつながっていきます。今後は膨大な数のセンサーなどを接続し、管理していかなければならず、複雑さはどんどん増していきます。

 つまり、SD-WANは安価な帯域を確保するというだけではないのです。複雑さ、密度、規模が増すネットワークをどう管理していくかという問題でもあるのです。だからこそ、昔のPBXのように、全てを手作業で管理する世界は、崩壊しようとしているのです。

「Wi-Fiアクセスポイントの世界にも変化が必要」

――Wi-Fi市場はそれ自体、非常に厳しい競争が繰り広げられている世界です。既存ベンダーとどう戦っていくつもりなのですか?

オファレル氏 Wi-Fi市場は成熟度を増しています。しかし、この市場も変革の時を迎えています。集中型のコントローラーから分散型のコントローラーに移行し、クラウドによる管理へと進んでいます。現在、エンタープライズWi-Fiで大きなシェアを獲得しているのはCiscoとHPE Arubaです。Arubaはセキュリティに強いとされてきましたが、以前ほどの差別化には苦労しています。

 一方、CiscoのエンタープライズWi-Fi製品は、主にAirespace、Aironet Wireless Communicationsの買収によって獲得した技術に基づいています。これらは主に集中型のコントローラーに基づいていて、クラウドベースの管理に移行するのには大きな努力が必要になるでしょう。Merakiはローエンドの市場に特化しています。

 SD-WANというトピックから離れても、新規参入ベンダーがシェアを獲得できるチャンスは大いにあります。WANとWi-Fiがクラウドベースの管理によって統合できることは非常に重要です。

 もう1つ言いたいことがあります。小売業では非常に興味深いことが起こっています。世界中の大規模小売業者が、オンラインベンダーとの競合を余儀なくされています。しかし、事業の拡張を続けている企業は多数あります。こうした企業は例外なく、顧客が店舗内で優れたWi-Fi環境を享受できるようにすることに気を使っています。店舗内での働きかけや事後の分析に使いたいからです。これにはWAN帯域と良いWi-Fiシステムが必要です。

 すなわち、少なくとも小売業では、SD-WANとクラウド管理のWi-Fiを融合する必要があるのです。企業の方がこれを理解しているため、私たちが説得する必要はありません。小売業界では、もともとITスキルが不足しているところも多いので、簡単に集中管理できることは彼らにとって重要です。

 当社のある顧客は、アバクロンビー&フィッチのような、若者向けの商品を売る会社で、来店客は皆、Wi-Fi接続を当然のように使います。これによりPOSシステムや在庫管理システムが圧迫される現象が起きていました。そこで当社のSD-WANとWAN最適化を導入し、問題を解決しました。

セキュリティと同時にユーザーエクスペリエンスも重要

――セキュリティについては、どのようにアプローチしているのですか? ゲートウェイでの機能を充実させるのか、それともセキュリティサービスとの連携を進めるのかという点ですが。

オファレル氏 両方です。ゲートウェイのファイアウォールにシンプルなセキュリティポリシーを適用し、アプリケーション単位で出入りのトラフィックを制御できます。一方で、「どのアプリケーションのトラフィックをZscalerなどのクラウドセキュリティプロバイダーに向けるか」を設定することもできます。「Office 365などのトラフィックは、セキュリティ機能を通さない」という判断もできます。さらに一般的なトラフィックについてはデータセンターのファイアウォールを通すといったことができます。

――ユーザーアイデンティティに基づくアクセス制御も組み込まれているんですよね?

オファレル氏 既にその機能は搭載しています。あなたがどこからアクセスしても、あなたであるという情報を基に、セキュリティポリシーを適用できます。

 さらに当社の重要な差別化ポイントとして、ネットワークパフォーマンス管理およびアプリケーションパフォーマンス管理の、管理コンソールへの統合を進めていることが挙げられます。特定拠点や特定の接続において、誰がどのアプリケーションを使っているか、どれくらいの帯域幅を消費しているか、レイテンシの状況はどうかを即座に確認できます。

 セキュリティの観点からユーザーエクスペリエンスを管理することは重要ですが、ユーザーの体感パフォーマンスを向上することも重要です。私たちは端末で動作するパフォーマンステスティング製品も持っています。このため、インターネット経由でのOffice 365のパフォーマンスが、オンプレミスのSharePointと比べてどうかといったことが分かります。こうした機能は「SteelCentral」というパフォーマンス管理製品の一部ですが、SteeelConnectとの統合が進んでいくことになります。

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