「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1448の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ1448」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ1448は、ログリーダーの非同期セカンダリ待機の動作を変更する設定です。SQL Serverの全バージョンに対応します。
SQL Serverには、AlwaysOn可用性グループやデータベースミラーリングといったLSN(ログシーケンスナンバー)トランザクションの順番に並べられた変更履歴を使ったソリューションがあります。
これらはプライマリと呼ばれるユーザーからのデータ更新を受け取るSQL Serverと、セカンダリと呼ばれるプライマリでのデータ変更を受け取り、データのコピーを保持するSQL Serverから構成されています。一般にプライマリとセカンダリの同期は変更の転送、受け取り、反映の処理があるため遅れます。
同じようにLSNを使うソリューションにレプリケーションがあります。レプリケーションは可用性を高めるためのものではなく、データを配信することで分散処理を可能にするソリューションです。例えば本店から支店へマスターデータを配信することで、支店からのマスターデータ参照処理を支店内で終わらせることが可能となります。
可用性担保と分散処理の実装のため、可用性グループとトランザクションレプリケーションを併せて利用したい場合、2つのソリューションがトランザクションログのレコードを用います(図1)。
図1のレプリケーションでは、パブリッシャーとディストリビューター、サブスクライバーという3者がデータの同期に関わっています。そこにさらに可用性グループが関与するため運用が複雑になりがちです。
この状態では可用性グループのプライマリになっているノードが停止し、セカンダリレプリカへフェイルオーバーした時や、同期セカンダリが停止した際などに、問題が起きます。
既定動作では、レプリケーションのトランザクションログを読み出すログリーダーエージェントは、可用性グループで同期が保証されたトランザクションしか対象にしません。つまり、フェイルオーバー後に更新されたデータをレプリケーションで配信しません。
トレースフラグ1448を有効にすると、セカンダリが変更を受け取れていない場合においてもレプリケーションの処理が続行できるようになります。このトレースフラグを有効にするかどうか、判断は運用設計に依存します。可用性グループとレプリケーションを併用している環境では設定した方が良いでしょう。
可用性グループとレプリケーションの設定手順については以下のMicrosoftのドキュメントを参照してください。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | − | − |
クエリスコープ | − | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
図2は、可用性グループとレプリケーションを同時に使ったときのSQL Server Management Studioのオブジェクトエクスプローラーの様子です。可用性グループとレプリケーションが同時に動いていることが分かります。
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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