西脇氏は、クラウド化に伴い、まずは複数の主要なクラウドベンダーを比較。結果からいうと、Amazon Web Services(AWS)を選定した。選定においては、市場動向、耐障害性や可用性、研究投資、セキュリティ対策、コンプライアンス対策、サービスパフォーマンス、技術情報量、導入方法など、幅広い視点で検討したという。
西脇氏は、耐障害性と高可用性において「責任共有モデル」に着目した。各クラウドサービスは近しい概念を提供しており、サービスの信頼性を測ることができるという。
セキュリティ対策やコンプライアンス対策においても、AWSの適応力は高いと判断した。2018年10月時点で入手できた各社の正式資料から比較した結果、AWSでは、各国、各地域および各産業で定義されている法律や規制、プライバシー要件やフレームワークなどへの対応完了数は85に及ぶという。ユーザー管理やアクセス管理などの機能も豊富で116に及び、社内監査に対応できる点も重要な選定ポイントだった。
技術情報量もポイントの一つだった。2019年5月時点に西脇氏が調査した結果、Qiitaの投稿数は2万超、GitHubのリポジトリ数は11万超と、他社サービスの数字を大幅に超えていたという。
「AWSを含む主要なクラウドベンダーは、いずれも高レベルの品質を享受できる素晴らしいサービスだと考えています。その中でAWSを選んだのは、社内エンジニアの人気が高く、また『コンテナの利用環境として』など導入事例が多く知見も豊富であり、導入コストが低いと判断したためです」(西脇氏)
ウエディングパークが第2ステップとして計画しているコンテナ化についても触れておこう。
西脇氏は、コンテナ運用に必要な機能として、AWSのコンテナオーケストレーションツールおよび周辺サービスに注目した。具体的には「Amazon Elastic Container Service」(ECS)および「Amazon Elastic Kubernetes Service」(EKS)だ。
ECS/EKSは、AWSのコンテナ関連サービスのうち“コントロールプレーン”に所属し、デプロイやスケジュール、メンテナンスなどのコンテナアプリケーションの管理を担うものである。前者は、AWSの独自ソリューションとして2015年に登場し、後者はKubernetesを利用できるマネージドサービスとして2017年に登場した。これらにデータプレーンとして「Amazon EC2」または「AWS Fargate」を組み合わせて利用する。
西脇氏はこれらを比較検討し、ECS/EKSおよびEC2/Fargateの組み合わせによる特徴をつかんで、運用システムの設計や特性などによってすみ分けることが重要だと結論付けた。流行もあって、Kubernetesへ対応できるEKSは魅力的に感じるが、初期の学習コストや運用コストは大きくなりがちで、運用の引き継ぎにも懸念があったという。
「ウエディングパークでは、Kubernetesの導入よりもビジネス拡大を優先するビジネスファーストを重視し、ECSから開始することに決めました。ECSを実践したのち、何か不自由があったときにEKSを検討しても十分だと考えています」(西脇氏)
西脇氏は、最後にこれからのITについて、サーバレス、コンテナ、プラットフォームが加速すると予測し、講演を終えた。「コンテナオーケストレーターは現在の複雑なものからより簡易になり、コンテナエコシステムが開発の中心になるでしょう。当社のようなサービス事業者は、よりいっそうサービス開発に専念できる世界となるはずです」
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