「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、クエリ実行中に発生した待機情報をセッションごとに出力する方法について解説します。
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本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_session_wait_stats」における、クエリ実行中に発生した待機情報をセッションごとに出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2016以降です。
SQL Serverでは、クエリ実行などの要求はタスクに割り当てられます。タスクは、単一または複数のスレッドに割り当てられて実行されます。
タスクを処理するそれぞれのスレッドでは、ネットワークやディスクI/Oの完了待ち、ロックの獲得待ち、他のスレッドへのCPUの割り振りなど、さまざまな要因で待機が発生することがあります。
SQL Server 2016以降では、「sys.dm_exec_session_wait_stats」動的管理ビューを使用することで、現在存在するセッションで発生した待機について、セッションや種類ごとの発生回数や時間などの累積情報を取得できます。そのため、この動的管理ビューを採取して解析することで、ボトルネックになっている箇所を特定し、パフォーマンス改善につなげられる可能性があります。
なお、SQL Server 2014以前では、「sys.dm_exec_session_wait_stats」動的管理ビューは使用できませんでしたので、セッションごとの待機の累積発生状況を確認する方法はありませんでした。
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
session_id | smallint | セッションID |
wait_type | nvarchar(60) | 待機の種類の名前 詳細は「sys.dm_os_wait_stats」を参照 |
waiting_tasks_count | bigint | 該当する待機の種類における待機を開始した回数 |
wait_time_ms | bigint | この待機の種類の合計待機時間(ミリ秒単位) 「signal_wait_time_ms」が含まれる |
max_wait_time_ms | bigint | この待機の種類における最大待機時間 |
signal_wait_time_ms | bigint | 待機スレッドがシグナルを受け取ってから実行を開始するまでの合計待機時間(ミリ秒単位) |
「sys.dm_exec_session_wait_stats」動的管理ビューを出力してみます(図1)。
セッションごとに、さまざまな待機の種類について、発生回数や待機時間の情報が出力さていることが分かります。出力される情報は、直前のクエリ処理の情報ではなく、セッションを開始してからの累積情報となるため、注意が必要です。
サーバ高負荷の原因調査などで、原因となるクエリを特定したい場合には、負荷の高い期間中に「sys.dm_exec_session_wait_stats」動的管理ビューを一定時間ごとに出力すると良さそうです。同じ待機の種類の「waiting_tasks_count」列や「wait_time_ms」列、「signal_wait_time_ms」列の値で時間の変化に伴う差分を計算していくことで、一定時間ごとに待機が発生する状況の変化を確認できます。
なお、「wait_time_ms」列の値には、「signal_wait_time_ms」列の、リソースの待機が終了したあとにスケジューラからのシグナルを待機していた時間も含まれます。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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