拡張イベントセッションターゲットの情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(88)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、拡張イベントセッションターゲットの情報を出力する方法について解説します。

» 2022年02月28日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_xe_session_targets」における、拡張イベントセッションターゲットの情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)です。

概要

 SQL Serverでは、拡張イベント(XEvent)の機能を使用してSQL Serverの内部で発生したイベントや付随する情報を記録し、パフォーマンス問題の解析や問題の原因特定に必要なデータを収集できます。

 類似の機能として、以前からSQL Serverトレースがありました。拡張イベントはより新しい機能となり、採取パフォーマンスの改善や対象のイベント、収集できる情報の増加、記録方法の選択肢の増加がなされました。

 拡張イベントを収集するには、あらかじめ拡張イベントセッションを構成して、採取対象とするイベントや含める情報、記録先であるターゲットなどを設定しておく必要があります。そして、拡張イベントを採取する期間にあわせて、拡張イベントセッションを開始、停止します。

 「sys.dm_xe_session_targets」動的管理ビューでは、拡張イベントセッションごとに、出力先として設定されたターゲットについての一覧情報を取得できます。

出力内容

列名 データ型 説明
event_session_address varbinary(8) イベントセッションのメモリアドレス
「sys.dm_xe_sessions」の「address」列との多対一のリレーションシップがある
target_name nvarchar(60) セッション内のターゲットの名前
target_package_guid uniqueidentifier ターゲットを含むパッケージのGUID
execution_count bigint セッションに対してターゲットが実行された回数
execution_duration_ms bigint ターゲットが実行された時間の合計(ミリ秒単位)
target_data nvarchar(max) イベント集計情報など、ターゲットが保持するデータ

動作例

 拡張イベントセッションを作成して、ターゲットを構成しました(図1、図2)。

図1 図1 新規に「XESESSION01」という名前の拡張イベントセッションを作成した
図2 図2 「event_counter」と「event_file」ターゲットを追加した

 「sys.dm_xe_session_targets」動的管理ビューを出力すると、作成した拡張イベントセッションの情報は表示されませんでした(図3)。

図3 図3 開始していない拡張イベントセッションは表示されないことが分かる

 作成した拡張イベントセッションを開始して、もう一度「sys.dm_xe_session_targets」動的管理ビューを出力すると、作成した拡張イベントセッションのターゲット情報が表示されました(図4)。

図4 図4 拡張イベントセッションを開始するとターゲット情報が出力された

 「sys.dm_xe_session_targets」動的管理ビューでは、開始済みの拡張イベントセッションのターゲット情報しか表示されないようです。記録するように構成したイベントは、まだ何も実行していないので、「execution_count」列の値は「0」でした。

 「target_data」列の値から「event_file」ターゲットの保存先の情報などを確認できそうです(図5)。

図5 図5 「event_file」ターゲットの「target_data」列の値のXMLを表示したところ

 次に、拡張イベントセッションに構成されたイベントを何回か実行します。ターゲットに記録されたイベントの数と、「execution_count」列の値は一致しないようでした(図6、図7)。

図6 図6 「event_file」ターゲットの記録先のファイルには12個のイベントが記録されている
図7 図7 「event_file」ターゲットの「execution_count」列は「2」となっていた

 また、「execution_duration_ms」列の値についても、ターゲットの有無によるクエリの実行時間の差を測定して比較してみましたが、これらの値も一致しないようでした(図8)。

図8 図8 「event file」ターゲットの有無によるクエリ実行時間と「execution_duration_ms」の比較結果

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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