Pythonディストリビューション使い分けのポイントを考えてみよう(macOS編)Python環境構築入門(2/2 ページ)

» 2022年04月01日 05時00分 公開
[かわさきしんじDeep Insider編集部]
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Minicondaをインストールする

 MinicondaはAnacondaから必要最低限の機能を抽出したものだ。そのコアはパッケージマネジャー/仮想環境マネジャーであるcondaと呼ばれるプログラムで、Minicondaはこれに必要最低限のパッケージ/モジュールを含んだものであり、「全部入り」のAnacondaとはインストールサイズが比べものにならないくらい小さくて済む。

 標準のインストールでは上で見たAnaconda Navigatorもインストールされない。そのため、仮想環境の作成やパッケージ/モジュールのインストールにはコマンドラインでcondaコマンドを使って行う必要がある(ただし、Anaconda Navigatorをインストールして使うことは可能)。

 Minicondaのインストーラーはconda.ioのダウンロードページから入手できる。

Minicondaのダウンロードページ Minicondaのダウンロードページ

 ダウンロードが終わったら、Anacondaと同様にしてインストールする。インストール完了後にターミナルを開くと、次のように「(base)」で始まるプロンプトが表示される。

Minicondaが有効な状態で開かれたターミナル Minicondaが有効な状態で開かれたターミナル

 condaコマンドで仮想環境を作成したり、削除したり、パッケージ/モジュールをインストール/アンインストールしたりするには以下のコマンドが使える(一部)。

コマンド 説明
create 仮想環境の作成
env list 仮想環境の一覧
env remove 仮想環境の削除
activate 仮想環境の有効化
install パッケージ/モジュールのインストール
uninstall パッケージ/モジュールのアンインストール
condaコマンドに指定可能なコマンド(一部)

 例えば、Python 3.10を使用した仮想環境「myenv310」を作成するなら次のように「conda create -n 仮想環境名 python=x.y 同時にインストールするモジュール」コマンドを入力する。「python=x.y」の「x」と「y」にはPythonのバージョンを指定する。同時にインストールするパッケージは半角空白文字で区切って複数指定できる(ここでは同時にインストールするパッケージは指定していない)。

% conda create -n myenv310 python=3.10


仮想環境「myenv310」を作成

 これにより、同時にインストールされるパッケージ/モジュールが一覧され、処理を進めてよいかが問い合わせられるので「y」を入力すれば、仮想環境が作成される。

仮想環境「myenv310」が作成された 仮想環境「myenv310」が作成された

 作成した仮想環境を有効化するには「conda activate 仮想環境名」を実行する。以下に例を示す。

仮想環境の有効化 仮想環境の有効化

 まず、このコマンドを実行する前後で、プロンプトに前置されているのが「(base)」から「(myenv310)」へ変化している点に注目しよう。これにより、現在はどの環境で作業しているのかが一目瞭然となる。

 また、「conda activate myenv310」コマンドを実行する前に実行している「python --version」コマンドではバージョンが「3.9.7」になっているのに対して、仮想環境が有効化された後は指定したPythonのバージョンである「3.10.3」となっていることに注目しよう。

 有効化した仮想環境から抜けるには「conda deactivate」コマンドを実行する。

仮想環境の無効化 仮想環境の無効化

 今度は「conda deactivate」コマンドの実行により、プロンプトの前が「(base)」に戻った点に注目してほしい。

 仮想環境を一覧するには「conda env list」あるいは「conda info -e」コマンドを実行する。

仮想環境の一覧 仮想環境の一覧

 仮想環境を削除するには「conda env remove -n 仮想環境名」コマンドを使用する。以下に例を示す。

仮想環境の削除 仮想環境の削除

 仮想環境またはベース環境にパッケージ/モジュールをインストールするには、「conda install」コマンドを使用する。ここでは「myenv310」と「myenv39」という2つの仮想環境があるものとして、両者にNumPyをインストールしてみよう。1つの方法はパッケージ/モジュールをインストールしたい仮想環境を有効化して、そこで「conda install パッケージ/モジュール名」コマンドを実行することだ。

仮想環境を有効化して、そこにパッケージ/モジュールをインストールする 仮想環境を有効化して、そこにパッケージ/モジュールをインストールする

 もう1つは、「conda install -n 仮想環境名 パッケージ/モジュール名」コマンドを実行することだ。

指定した仮想環境にパッケージ/モジュールをインストールする 指定した仮想環境にパッケージ/モジュールをインストールする

 パッケージ/モジュールをアンインストールするには、「conda uninstall」コマンドを使用する。アンインストールであることを除けば、「conda install」コマンドと同様に使用する。

 condaコマンドには豊富なオプションがある。詳しくは「conda help」コマンドや「conda コマンド --help」コマンドなどを実行してドキュメントを参照されたい。

 Minicondaは今見てきたように、基本的にはコマンドラインで使用する。また、最低限度のパッケージやモジュールだけがインストールされているので、必要なものは自分でそのたびにインストールする必要もある。Anaconda系統のディストリビューションが好きで、今述べたような操作を面倒だと思わずに、楽しく思えるのであればよい選択肢となるかもしれない。

Homebrewを使ってインストールする

 HomebrewはmacOSでよく使われているパッケージマネジャーだ。ここではこれを使ってmacOSにPythonをインストールする手順を簡単に見ていく。

Homebrew公式サイト Homebrew公式サイト

 Homebrewをインストールするには、上記画面で「インストール」と大きく書かれたテキストの直下にあるコマンドをターミナルにコピー&ペーストして実行する。

Homebrewのインストール Homebrewのインストール

 上記画面にあるようにパスワードを入力した後、さらに[Enter]を押す必要がある点には注意しよう。また、「コマンドライン・デベロッパツール」がインストールされていない場合には、そのダウンロードとインストールが行われる。

 Homebrewのインストールが終わったら、brewコマンドでPythonをインストールする。これには「brew search」コマンドと「brew install」コマンドを使用する。前者はHomebrewが提供している各種パッケージを検索するもので、Pythonを検索するなら「brew search python」などと入力する。

「brew search python」コマンドの実行結果 「brew search python」コマンドの実行結果

 この例では、「python@3.10」「python@3.7」などバージョン付きで幾つかのPython処理系が表示されている。これらのバージョンを指定してインストールすることもできるし、特にバージョンを指定しなければ、最新のバージョンがインストールされる。ここでは最新バージョンをインストールしてみよう。

最新版のPythonをインストール 最新版のPythonをインストール

 最新版のPython(3.10)をインストールしたつもりだったのだが、実はPython 3.9がインストールされた。これについては、brewコマンドでインストールするためのformulaeを調べてみると、現在は「python」「python3」「python@3」を指定して「brew install」コマンドを実行すると、Python 3.9がインストールされることが分かる。

Homebrewのformulaeを調べた結果 Homebrewのformulaeを調べた結果

 なお、Homebrewでは/usr/local/Cellarフォルダ以下に実体がインストールされ、それへのシンボリックリンクが/usr/local/binフォルダに作成される。処理系はpython3.9コマンドで実行できる。

python3.9コマンドを実行 python3.9コマンドを実行

 HomebrewでもPythonは複数のバージョンを同時にインストールできる。ただし、インストールしたPythonへのシンボリックリンクが/usr/local/binフォルダに作成されないこともある。そのようなときには、自分でシンボリックリンクを作成するなどの処理をした方がよいだろう。

 Homebrewを使ったPythonのインストールでは、公式サイトで配布されているPythonよりもバージョンが古いものが配布されていることがある(Python 3.10のバージョンは2022年3月30日時点で3.10.2だった)。また、上で見たように「brew install python」でインストールされるのが最新バージョンでないこともある。Pythonは常に最新バージョンを使わねばならないというものではないが、なるべく新しいバージョンがほしいという方は別のインストール方法を考えた方がよいだろう。


 筆者はmacOSでもWindowsでも、python.orgからインストーラーをダウンロードして、最新バージョンのPythonを(なるべく)使うようにしている。「公式サイトで配布されている」「原稿執筆には最新バージョンの方がよさそう」といった理由から、そうしているところもあるのだが、最新バージョンが常に正解とは限らない、いつも使っているお気に入りのライブラリやフレームワークがまだ最新バージョンには対応していないこともあるからだ。

 幸い、python.orgにせよ、Anaconda/Minicondaにせよ、Homebrewにせよ、macOSでは複数バージョンのPythonを同時にインストールしておける。venvモジュールを使うか、condaを使うかの違いはあるが、プロジェクトで使用するのがどのバージョンのPythonなのかを考え、それに合ったPythonを(必要なら)インストールし、仮想環境を適切な構成で作成するといった使い方がよいだろう。

「Python環境構築入門」のインデックス

Python環境構築入門

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