GoogleはAPIの活用を目指す企業に向けて、APIエコノミーの未来を形作る7大トレンドを紹介した。
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Googleは2022年4月21日(米国時間)に公式ブログで、APIエコノミーの未来を形作る7大トレンドを紹介した。
Googleは、企業IT環境におけるAPIとAPIエコノミーの役割について、次のような認識を示している。「あらゆる業界の企業が競争力の向上を目指してデジタルトランスフォーメーションを推進しており、その過程で、ハイブリッド/マルチクラウド環境の複雑さを克服することがますます必要になっている。利益率の低下を背景に、リソース利用の効率化が追求される中、APIとAPIエコノミーは、サービス、アプリケーション、クラウドを接続する上で、今後も重要な役割を担っていくだろう」
Googleは、企業がAPIエコノミーの構築を成功させるために知っておくべき動向として、次の7つを挙げて解説した。
デジタルエコシステムとアプリケーションをサポートするAPIの数が世界的に急増しており、それに伴ってセキュリティリスクの懸念も高まっている。
APIを保護するには、全てのアプリケーションに対する操作を可視化し、技術スタックのあらゆるレベルで観察、分析、対処が必要になる。企業がよりオープンかつ分散型になるとともに、ネットワーク境界の保護を中心とした従来のセキュリティから、ゼロトラスト、暗号化、アプリケーションID、強力な認証、認可に基づく多層防御を優先するモデルに移行する組織が増えると予想される。
2014年のKubernetes(K8s)のリリース以来、システムをマイクロサービスに分解する方向に業界が大きくシフトしている。だが、何千ものマイクロサービスを連携させることは、技術の無秩序な拡散を招く恐れがある。単一のアプリケーションをサポートするにとどまる“マイクロサービスの島”だらけになりかねない。
そのために2022年以降、マイクロサービスAPIがIT部門の新たな焦点になることが予想される。例えば、Kubernetesネイティブのイングレスゲートウェイが、アプリケーションのモダナイゼーションにおける重要な要素技術として浮上している。
イングレスゲートウェイはKubernetesリソースの前に位置し、企業がそれらのサービスをAPIで公開することで、新しいビジネス価値を提供することを可能にする。これによって、基盤となるリソースの抽象化、発見、容易な利用を支える重要なイネーブラーになる。
古い開発コンセプトに見えるイベントドリブンアーキテクチャ(EDA)は、サーバレス、非同期、ストリーミングといったユースケースなど、さまざまなインタラクションの中で新たな一面を見せている。特に、マイクロサービス間のAPIに依存しないリアルタイムデータ交換をサポートする望ましいパラダイムとなりつつある。
ただし、EDA技術は今日のデジタル要件の多くを満たしていないので、セキュリティ、アクセス制御、ガバナンス機能を提供する製品がますます登場すると予想される。
多くの企業では、イベントドリブン設計を実装する技術は持っているが、イベントドリブンの相互作用を考え、設計し、管理するイベント思考のビジョンが欠けている。企業は新しい考え方を導入し、適切な準備とスキル評価で取り組みを成功させる必要がある。
RESTは、APIの設計によく使われる標準だが、GraphQLはその柔軟性と使いやすさから、開発者の間で人気を集めている。
GraphQLの際立ったメリットの一つして、開発者が1回のAPI呼び出しで、複数のアプリケーションやサービスに対してシームレスにデータを照会できることがある。これは特に、BFF(Backends for Frontends)パターンに有効だ。企業はデータのオーバーフェッチを行ったり、特定のクライアントタイプごとにAPIとエンドポイントをパッケージ化したりすることなく、クライアントが要求するデータを複数のマイクロサービスから集約し、提供できるからだ。
2022年には、GraphQLの導入が引き続き進み、BFFパターンの利用が加速される見通しだ。
クラウドの普及が進んできたが、ソフトウェアの大半はまだオンプレミスで動作している。そのために企業では、ハイブリッドAPIアーキテクチャによって、既存技術との橋渡しをしながら革新を続けることが求められている。
ただし、異種分散IT環境では、APIの構築とデプロイは困難だ。複数のクラウドとソフトウェアベンダーが関わるからだ。そこで2022年には、軽量、ポータブル、スケーラブルなハイブリッドAPI管理を可能にする、「マルチAPI管理を考慮した設計」のアプローチが、広く採用される見通しだ。
API管理は、企業の全てのAPIが、それぞれどこから来ているかにかかわらず、API管理の全てのメリット(一貫した可視性、ガバナンスとセキュリティのガードレール、分析など)を享受することを保証する必要がある。
スマートスピーカー、スマートウォッチ、車載インフォテインメントなどに見られるように、特定のデバイスでは、音声エクスペリエンスの提供が主流となっている。
モバイルアプリケーションやWebサイトなど従来のインタフェースと同様に、音声エクスペリエンスを迅速に実現することが急務だ。そのために多くのチャットや音声アプリケーションおよびシステムがAPIエコノミーに加わり、独自の会話APIを公開するようになり、多様なプラットフォームで新たなインタラクションやイノベーションを生み出すことが予想される。
APIは、開発者がITやセキュリティチームに報告せずに構築することが多いので、「新しいシャドーIT」と見なされるようになっている。今後は、「APIは、社内用のツールやアプリケーションからデータを公開する重要な方法だ」と認識し始めるIT部門が増えるだろう。
APIは、データアクセスのガバナンス構築に重要な役割を果たし、シャドーAPIパブリッシャーに、標準的なプロセスへの準拠を促す。シャドーITは差し迫った脅威ではなく、新しい社内アプリケーションを生み出し、全社的に活用できるアプリケーション革新を促進する、技術的な優位点になり得る。
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