Dockerは「Docker Desktop 4.44」の一般提供を開始した。「Docker Model Runner」「MCP Toolkit」「Docker Desktop CLI」など、さまざまな機能が強化されている。
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Dockerは2025年8月14日(米国時間)、「Docker Desktop」の最新版「Docker Desktop 4.44」の一般提供を開始した。AI(人工知能)モデルの管理強化や新CLI(Command Line Interface)コマンドによるKubernetes管理の簡素化などの更新が実施されている。
「Docker Model Runner」(DMR)は、Dockerを使って、大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAIモデルを管理、実行、デプロイ(展開)ができる機能だ。バージョン4.44では、このDMRから、AI推論要求と応答を直接確認できるようになり、モデルの動作に関するトラブルシューティングとデバッグを迅速に実施できるようになった。この機能によって、AIワークフローの透明性が高まり、問題の発生や修正(つまり、デバッグ)がしやすくなる。AIやLLMベースのアプリケーションを試しているユーザーにとっては使いやすさが大幅に向上する。
複数のAIモデルを同時に実行し、リアルタイムでリソースをチェックできるようになった。これによって、システムのロックアップやパフォーマンス低下を防ぐことができる。さらに、埋め込みモデルと推論モデルを同時に実行できるため、開発者は負荷の高い高度なAIユースケースでも、性能や安定性を心配せずにDocker Desktopを利用可能だ。
MCP(Model Context Protocol)サーバのアップロード、保存、管理が可能な「Docker MCP Toolkit」で、開発タスクを自動化する、BlockのCLIアシスタント「Goose」と、GoogleのオープンソースAIエージェント「Gemini CLI」が、MCPクライアントとして利用できるようになった。
これらを使うことで開発者は、Docker MCPカタログで利用可能な140台を超えるMCPサーバに、シームレスに接続できる。「GitHub」「PostgreSQL」「Neo4j」などのコンテナ化されたMCPサーバに、ワンクリックでアクセスすることが可能だ。
Docker Desktopを管理するためのコマンドラインツール「Docker Desktop CLI」で、「Kubernetes」を直接管理するための新しいコマンドが使えるようになり、ツールやUI(User Interface)画面を切り替える必要性が少なくなった。
この新しいコマンドによって、Docker Desktopに含まれるKubernetesクラスタの有効化、無効化、ステータス確認、構成オプションの表示などが1つのコマンドラインで実施可能になった。
設定画面における検索が改善され、構成をより迅速に見つけられるようになった。
「macOS」では、「Apple Virtualization」がデフォルト(初期設定)の仮想化バックエンドとなった。Appleのハイパーバイザーフレームワークを介して仮想化がネイティブに処理されるため、仮想マシンやコンテナの起動(コールドスタート)がこれまでより速くなり、メモリも効率的に管理できる。
この新しい仕組みのおかげで環境のセットアップやトラブルシューティングが簡単になり、開発者は開発の最初の段階で無駄な時間を減らし、素早く作業を始められる。
4.44では、「Windows」で「WSL 2」(Windows Subsystem for Linux 2)を使用する環境向けの更新もある。更新内容は以下の通り。
これによって、応答性や安定性を犠牲にすることなく、グラフィックスを多用するパイプラインやマルチモデルのパイプラインを、Windows上でテストできるようになった。
なお、一部ユーザーからは「4.44.0」へのアップデート後にWSL 2環境でコンテナやイメージが表示されなくなる不具合も報告されているため、念のためアップデート前にはバックアップを取っておいた方がよいだろう。また、重要なセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性(CVE-2025-9074)が報告されているため、利用する場合は早急にバージョンを「4.44.3」以降へのアップデートする必要がある。
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