IBMはAIでネットワーク運用を支援するソフトウェア「IBM Network Intelligence」を発表した。ネットワーク障害の検知や原因特定をAIが担うことで、不可が高まるネットワーク運用の課題に向き合えるようにする。
IBMは2025年10月15日、AI技術でネットワーク運用を支援するソフトウェア「IBM Network Intelligence」を発表した。企業のネットワークは、クラウドサービスやリモートアクセスの普及によって構成が複雑化。運用現場ではトラブル対応や障害の原因特定に多くの工数が割かれている。
人的リソース不足が課題となる中で同社が提供するのは、トラブルが発生してから個別対処を繰り返す、従来のネットワーク運用から脱却するための手段となる。
IBMは根本的な課題として、ネットワークを流れるデータが増加し続けていることに加え、そのデータが組織内のさまざまなシステムや機器に分散していることだと指摘。データやシステムがサイロ化(孤立化)する結果、データ同士のつながりを把握できず、ネットワークにおける挙動やその関係性をリアルタイムに分析するのが難しくなっている。
IBM Network Intelligenceは、「分析AI」と「推論AI」を組み合わせることで、複雑化したネットワーク運用の課題に対処する。分析AIはネットワークデータを理解する。推論AIはデータの関係性を把握して問題や根本原因を仮定し、洞察を提供する。
分析AIは、同社の基盤モデル「IBM Granite」ファミリーの一つとして開発された時系列基盤モデル(時系列データにを用いて事前学習したモデル)に基づいている。ネットワーク用に特化しており、膨大なテレメトリーやアラーム、フローデータ(通信の流れをまとめたデータ)を事前学習している。これにより、従来の統計的機械学習やルールベースの手法では見逃されがちな隠れた問題の検出や、閾(しきい)値に基づかない異常の検出を可能にする。
分析AIのデータは推論AIに供給され、AIエージェントが問題の検出や原因の特定、修復案の生成を実行する。トラブル発生時にチームが集まって原因を突き止めるプロセスを、AIエージェントによる反復可能な仕組みで置き換えることを目指す。
IBMは同製品について、自律的なネットワーク運用を目指す過程で段階的に導入できるとしている。
信頼性が重視されるネットワーク運用の現場においてAIを取り入れた自律的な運用を取り入れる判断はすぐにはしにくいが、まずはパフォーマンス管理やイベント管理システムと並行して“セカンドオピニオン”として活用するのであれば現実的だ。信頼を構築しながら“スクリプト化された自動化”の先へと運用モデルを移行できる可能性はある。
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