かつて“実験的すぎる”とされたフレームワークが“安定版”へ進化し、LangGraphとの連携強化で運用面の信頼性も向上した。群雄割拠するAIエージェント開発の世界で、LangChainは再び存在感を示せるか注目。
2025年10月22日、大規模言語モデル(LLM)を活用してAIエージェント(AIが自律的に判断し行動するプログラム)を構築するためのオープンソースフレームワークLangChain(ラングチェーン)と、それと連携して複雑なワークフローをグラフ構造で表現/実行/管理する基盤となる補助フレームワーク LangGraph(ランググラフ)がそろってバージョン1.0として正式に公開された。
なお、LangChainとLangGraphに加え、エージェントの動作を監視し、性能を評価し、運用を支援する商用プラットフォームLangSmith(ラングスミス)も用意されており、これら3つのレイヤーで開発から本番運用までを一貫して支援する「LangChainエコシステム」が形成されている。
今回のv1.0リリースで注目すべきポイントは、大きく3つある。
LangChainでのエージェントの実行ループ(公式サイトより引用)今回のv1.0リリースは、今後v2.0が登場するまで後方互換性(古いバージョンとの互換性)を維持することが約束されており、開発者は安心して本番環境のアプリケーションに導入できるようになっているのもポイントだ。
――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の発表から技術の“今”を少し深く見ていく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
LangChainは2022年10月の開発開始から2023年ごろまで、RAG(検索拡張生成)をはじめとする“LLMアプリケーション”を簡単に構築できるライブラリとして注目を集め、多くの開発者に支持されました。しかしその後、「ソースコードが製品向きではない」との批判や、頻繁なアップデートによる「破壊的変更(互換性を壊す更新)」が相次いだ結果、「本番環境で使うのは怖い」という印象が広まり、“安定性”の欠如が課題とされていました。
そうした課題を受けて、今回のLangChain 1.0では、コード構成の整理やv1.0系における後方互換性の維持を重視し、開発者が安心して使える“安定版”へと進化しました。さらに、処理をグラフ構造として管理できるLangGraph 1.0(初版0.1は2024年6月に登場)も正式にリリースされ、長時間動作するAIエージェントでも中断からの再開や例外処理が容易になるなど、運用面での信頼性が大きく向上しています。なお、このLangGraphはLangChain 1.0の内部でも利用されており、エージェント機能の“安定性”を支える中核的な基盤となっています。
というわけで、満を持してv1.0が発表されたわけですが、ここまでのところ、正直あまり注目されていない印象です。AIエージェントの開発手段は急速に多様化しており、LangChain以外にもさまざまなフレームワークやサービスが次々と登場しています。まだデファクトスタンダード(事実上の標準)は定まっていませんが、LangChainは筆者自身も気になる存在なので、今後は自分でも実際に使ってみて、その真価を確かめたいと思います。もし詳しい方がいれば、ぜひこの記事へのSNSコメントなどで教えてください。
さて、今回の発表内容には、他にも開発者が注目すべき更新内容が幾つか含まれていた。これらを丁寧に解説すると長くなるので、残りは以下に箇条書きでまとめておく。
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