New Relicの調査で、ITシステム停止による損失コストが膨大な額に上っていることが明らかになった。AI導入の進展によって、システム運用の複雑さに拍車が掛かっている。
いかにシステムを安定稼働させ、想定外のシステム停止を防ぐか――。これは今や、ビジネスの信頼性や利益を確保するための重要な要素になっている。企業におけるシステム停止の影響や、それを発生させないための対策はどうなっているのか。
New Relicは市場調査会社Enterprise Technology Research(ETR)と共同で調査を実施し、年次調査レポート「2025 オブザーバビリティ予測レポート」を2025年11月4日に発表した。世界23カ国、11業界のITおよびエンジニアリング分野のリーダーやチームメンバー1700人を対象とした調査から、デジタルビジネスのダウンタイムが膨大なコストを引き起こすことが明らかになった。
深刻なシステム停止の影響は甚大だ。調査によれば、1時間当たりの損失コストの中央値が200万ドル(約3億800万円)で、復旧までの1分ごとに約3万3000ドル(約508万円)が失われている。年間ベースでは、損失の中央値が7600万ドル(約117億2000万円)に達しており、障害の検出や対応スピードが企業の損益を左右している実態が浮き彫りになった。
システム停止の主な原因としては、以下のような要素が挙がっている。
エンジニアは業務時間の約3分の1(33%)を障害対応に費やしており、新機能の開発や革新的なコーディングへの注力など、本来取り組むべき活動を阻害されている。
調査レポートは有効な対策として「フルスタックオブザーバビリティ」を挙げている。フルスタックオブザーバビリティとは技術スタック全体の可視化を指し、以下5つの主要カテゴリーに分類されるという。
調査では、フルスタックオブザーバビリティ導入企業の1時間当たりの損失コストは100万ドルと、未導入企業の半分にとどまった。さらに週1回以上の深刻な停止を経験する割合も、導入企業では23%、未導入企業では40%と明確な差が出ている。
AIの導入がオブザーバビリティの需要を押し上げているという調査結果も注目に値する。経営幹部の45%が、オブザーバビリティの必要性を高める最大の要因として「AI技術の導入」を挙げている。
一方でAI監視の導入率も伸びている。オブザーバビリティにおけるAI監視機能の利用率は、2024年の42%から2025年には54%へと上昇。AI監視を導入していない、または導入予定がない企業はわずか4%にとどまる。
インシデント対応やオブザーバビリティの向上に貢献するAI機能として、主に以下が挙がった。
調査レポートで明らかになったのは、システムの複雑化がAI技術の導入によってさらに加速する状況だ。システムの内側はこれまで以上に見えにくくなっている。一方で、そうしたシステムにおいて障害の予兆や障害に迅速に対処するためにも、AIをいかにシステム運用に取り込むかが課題として挙がっている。
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