Turner & Townsendは、「2025-2026 Data Centre Construction Cost Index」(2025年版データセンター建設コスト指数)レポートを発表した。世界52市場の指数比較で東京が2年連続で1位となった。
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建設マネジメントコンサルティング企業Turner & Townsendは2025年11月5日(英国時間)、「2025-2026 Data Centre Construction Cost Index」(以下、2025年版データセンター建設コスト指数)レポートを発表した。
それによると、2025年の世界データセンター建設市場の売上高は、主にAI(人工知能)投資および開発のペースにけん引され、5275億ドルに達する見通しだ。
Turner & Townsendはデータセンターを、「主にクラウドの運用に使用される空冷式の従来型データセンター」と、「AIワークロードをサポートするために設計されたデータセンター」(以下、AIデータセンター)に大別している。
世界の主要52市場を対象に、従来型データセンターの建設コストデータでデータセンター建設コスト指数(以下、DCCCI)を算出し、これを基にランキングを作成している。2025年のランキングでは、東京が前年に続いて1位となり、DCCCIは1.26、データセンター建設コストの1ワット当たり単価は15.15ドルだった。
2〜5位は、シンガポール(DCCCI:1.21、1ワット当たり単価:14.53ドル、以下同)、スイスのチューリッヒ(1.19、14.24ドル)、大阪(1.18、14.12ドル)、米国のシリコンバレー(1.11、13.31ドル)だった。シンガポールとチューリッヒは前年も同順位で、大阪は2025年に初めてランキングに登場した。シリコンバレーは前年の4位から1つ順位を落とした。
6位は米国のニュージャージー(前年5位)、7位はノルウェーのオスロ(前年9位)、8位はニュージーランドのオークランド(前年6位)、9位はスウェーデンのストックホルム(前年11位)、10位はフィンランドのヘルシンキ(前年8位)となっている。
これらの市場は、用地の供給、限られた請負業者、労働力の動態といった地域的要因により、建設コストが高い。各地域におけるデータセンター建設の主要ハブとなっている。
Turner & Townsendの日本法人は、「この結果は、建設コストが高い都市では、ハイテクで複雑なデジタルインフラへの需要が強いことを示している。東京はデジタルインフラの進化において極めて重要な拠点だ」と述べている。
また、大阪が新たに4位にランクインしたことは、「日本のデータセンター市場が世界的に存在感を高めていることを物語っている」と説明している。
2026年にかけてデータセンター建設コストは緩やかに上昇する見通しだ。従来型データセンターの建設コストはある程度安定しているが、AIデータセンターでは状況が異なり、コストの変動要因が幅広く、広範なグローバルベンチマークデータはそろっていない。
2025年のDCCCIでは、従来型データセンターの建設コストのワット当たり単価は5.5%上昇している。これは前年の上昇率(9.0%)を大きく下回っている。
建設市場全体のコストインフレの沈静化がその背景にある。Turner & Townsendの「2025 Global Construction Market Intelligence」によると、2025年の建設セクター全体の平均インフレ率は4.2%だ。
一方、米国内のデータセンター建設プロジェクトに関するTurner & Townsendの最新の分析では、AIワークロードをサポートするために設計された高密度の液冷式データセンターは通常、従来型データセンターよりも建設コストが高いことが明らかになっている。
米国内の同等規模(ITキャパシティーベース)の液冷式データセンターと空冷式データセンターの平均建設コストを比べると、液冷式の方が7〜10%高いという。
Turner & Townsendによると、こうしたより大規模で技術的に複雑な液冷式データセンターは、米国、英国、欧州、東アジアなどの市場で地歩を固めつつある。これらはより複雑な建設物であり、高負荷に対応するために必要な高コストの技術システムと冷却システムを含んでいる。
2025年のDCCCIは、20カ国以上における300件以上の進行中または最近のプロジェクトから、データセンター建設コストのベンチマークデータを収集し、算出された。
建設コストデータを補足するため、データセンター業界の280人以上の専門家を対象にオンライン調査も実施された。
建設コストデータは、2024年10月1日〜2025年10月1日の平均為替レートで米ドルに換算されている。
多くのクラウドベンダーやデータセンター事業者が、従来よりもコストの高い液冷式データセンターを増強する場合、中長期的にはクラウドサービスの利用料や、コロケーションの料金に転嫁される可能性もある。今後のデータセンターサービスの動向にも留意する必要がありそうだ。
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