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女性エンジニアは、ホントに不利?転職を阻む意外な落とし穴(6)

転職する際に重視することは何か。給料、希望職種、経営者のビジョンや方針、スキルアップ支援など。しかし、いざ転職する場合に、そんなこととは関係なく、思いもよらぬことで転職を断念しなければならないことがある。そんな例を、毎回キャリアデザインセンターのキャリアコンサルタントが紹介する。

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増加する女性エンジニア

 当社は3カ月に一度、エンジニア向けの転職イベントを開催しています。非常に好評をいただいており、来場者数は回を追うごとに増加しているのですが、ここ最近で目立つ変化がありました。それは、女性のエンジニアをよく見掛けるようになったことです。以前と比べると2倍から3倍の女性エンジニアが来場し、スキルレベルも徐々に高まってきている感があるのです。

 女性の活躍の場がエンジニアの世界にも広がってきたことは喜ばしいのですが、一点、気になることがあります。彼女らと話している際中に、よく「この業界で働いていくうえで、女性エンジニアは不利なのでしょうか」と聞かれるのです。「女性だから……」という理由で、何かしらの嫌な経験をしたことがある方々なのでしょうか。他業界の方からもこの手の質問を受けることがあります。ただIT業界は、エンジニア特有の業務内容や勤務時間などのせいで、他業界よりも余計に女性たちが敏感になっているような気がします。

 では本当にIT業界は女性には不利なのでしょうか? 今回は、いくつかのポイントから、このテーマを皆さんと一緒に検証してみたいと思います。

体力面で大きな男女差が……

 女性が男性よりも働くうえで不利だといわれているポイントはいくつかあります。まず1つ目は体力面です。昨年の11月初旬にお会いした森下恵子さん(仮名・27歳)は、医療系のシステム開発にかかわるエンジニアでした。12月のカットオーバーを前に、毎日終電まで残業、もしくは泊り込みという日々が1カ月ほど続いたそうです。

 森下さんは、決して体が弱い方ではないのですが、時々体調を崩して早退することがあったといいます。「男性エンジニアの中には体調を崩しがちな人がいなかったのですが、女性エンジニアは全員何かしらの問題を抱えていました」と森下さんは振り返っていました。

 森下さんの例に限らず、疲労に対する持久力に男女差があることは医学的にも証明されています。また、月経によってホルモンバランスが崩れやすいために、体調が悪くなりがちです。一般的にエンジニアの勤務形態は残業が多いので体調にも多少の影響を与えるかもしれませんが、(体力面で)非常につらい期間は、続いたとしても1カ月〜1カ月半程度ではないでしょうか。この程度の期間であればうまく自己管理することによって乗り越えられます。女性自身が自分の体調に留意しつつ、自己管理できれば、「男性エンジニアより不利」とはいい切れないのではないでしょうか。

結婚や出産にまつわる偏見

 次に、女性が不利といわれるポイントは、「結婚・出産」にかかわることです。キャリア志向の女性が増え、結婚時点では働き方が変わらなくても、出産のタイミングでは何かしらの変化が起こることが多いものです。体調不良や産休中のブランクの問題、仕事復帰の難しさなど、キャリアアップについてさまざまなリスクを抱えています。

 ただ、この点に関して問題なのは「産休を取る・取らない」ということではありません。女性は産休を取ることがあるかもしれませんが、男性も突然病気で入院することがあります。その意味においてリスクは同じです。

 では何が問題なのか。それは、周囲から「女性だからいずれ結婚・出産し、退職するだろう」と見られ、大きな仕事を任せてもらえなくなる恐れがあることです。いわば「いずれ退職する」という偏見を持たれることです。

 女性の結婚適齢期は25〜28歳とよくいわれますが、この年齢はエンジニアにとって非常に重要な時期です。リーダーとなり、プロジェクトをマネジメントするための資質をきたえる時期といえます。会社としては、新卒から3年、4年と一生懸命に育ててきても、女性はこれくらいの年齢で結婚・出産退職してしまうと思うと、どうしても男性の教育をメインに考えてしまうのです。この考え方や偏見を何とか変えてもらわなければ、女性エンジニアには非常に不利なポイントとなってしまうでしょう。

女性特有のデメリットを回避する方法

 しかし、偏見とは分かっていてもその見方を変えさせるのは非常に困難なこと。なぜならば、実際に結婚や出産を契機に退職する女性は多いからです。こうした“誤解”を避けるには地道なコミュニケーションが必要です。普段から「自分は女性だが一生働きたいと思っていること」「できる限り出産や育児においても仕事を犠牲にしない努力をする覚悟があること」などを上司にアピールしておくといいでしょう。これによって産休中のブランクや仕事復帰の難しさといった問題なども解決できるのではないでしょうか。

 出産後にも女性は不利だといわれるポイントがあります。それは子どもの世話により早退や遅刻をしやすくなり、周囲からの評価が下がってしまうこと。ただこれは、女性が子どもの世話をするという前提のもとでの話です。昨今では男性にも同じことがいえますので、特に女性だけが不利とはいえません。このポイントも上司とよくコミュニケーションを取り、配偶者と協力していく旨などを伝えておいた方がいいでしょう。

 日ごろから職場の上司とコミュニケーションを取っておけば、女性エンジニアだから不利になるということを回避できます。ただ、男性と女性は体の構造が違うので、会社側は「差別」ではなく「区別」して考えてほしいものです。会社の理解を得るには女性エンジニア自身が努力しなくてはならないという面がありますが、自身の努力ではどうにもならない問題を抱えているよりは、はるかに展望が開けているのではないでしょうか。

 女性に生まれたからには、女性ならではのメリット・デメリットを理解し、それらとうまくつきあいながら働いていきたいものですね。

著者紹介

鈴木敦子

青山学院大学教育学科を卒業後、キャリアデザインセンターへ入社。転職誌『type』の広告営業、人材紹介営業を経てマーケティング課へ異動、現在に至る。中途採用人材による企業の活性化を願い、転職希望者の心理を考え続ける日々を送っている。



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