転職であなたの信用が落ちることも転職を阻む意外な落とし穴(7)

転職する際に重視することは何か。給料、希望職種、経営者のビジョンや方針、スキルアップ支援など。しかし、いざ転職する場合に、そんなこととは関係なく、思いもよらぬことで転職を断念しなければならないことがある。そんな例を、毎回キャリアデザインセンターのキャリアコンサルタントが紹介する。

» 2004年02月19日 00時00分 公開
[石川裕麻キャリアデザインセンター]

転職と社会的信用

 転職を実行に移す段階で問題となることをこれまで取り上げてきました。今回も意外と知られていないことについて取り上げたいと思います。それは、転職した場合の「社会的信用」についてです。

 このように書くと、「それは時代遅れだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 確かに転職自体には、一昔前のネガティブなイメージはほとんどなくなりました。現在は転職する、という選択肢も認知され、「キャリアアップのための転職」や「転職して年収大幅アップ」などポジティブに受け止められるようにもなりました。

信用されなくなる!?

 ところが、転職することで信用されなくなることがあるのです。

 それは、お金を借りることです。

 転職する際に、活動費用がかかること、離職期間があるとその間の収入がなくなること、さらには転職し給与が下がる可能性があることなどの金銭的なリスクは、本連載の第1回(「転職にも必要な軍資金」)でも触れました。

 このくらいの蓄えがあれば安心、いくらまでなら給与が下がっても問題ない、というシミュレーションを具体的にされている方も多いようです。が、それ以外にも転職にまつわるお金の“落とし穴”は存在するのです。

転職自体には満足だったが……

 2003年秋に弊社に相談にいらした坂本さん(仮名)は、結婚2年目の30歳。現職の大手流通企業での社内SEの仕事に特に不満はありませんでしたが、すでに自社ではやり終えたといった達成感を感じてしまい、社外にサービス提供のできるSE職にチャレンジしたいと転職活動を始めました。

 応募した企業の選考は順調に進み、希望のシステムインテグレータ企業からオファーを得られました。提示された給与も前職とほぼ同水準の提示があり、坂本さんはその企業への入社の決意をうれしそうに報告くださいました。

 入社から1カ月、新しい仕事にもようやく慣れたころ、坂本さんにその後の状況を聞くために連絡してみると、なぜか少し浮かない様子でした。聞けば小規模な組織だけに仕事をどんどん任されやりがいを感じているし、職場環境にも非常に満足しているとのこと。ところが、「実はもう1つ、楽しみにしていた夢が先延ばしになりそうなんです」と話すではないですか。

 坂本さんは転職と同時に、マンションの購入を計画されていたのです。前職の有休消化中に売り出し中のマンションのショールームを奥さまと見て回り、気に入った物件の購入を決断したところ、「ローン審査」の壁が立ちはだかりました。

公的金融機関のローン

 坂本さんの前職は、誰もが知る大手企業で、業績も好調です。そんな企業を退社してベンチャーともいえる企業に転職したことを、銀行の融資担当に根掘り葉掘り聞かれたというのです。そんなことがあり、せっかく気に入ったマンションもあきらめざるを得なかったということで、すっかり意気消沈していたのでした。

 銀行をはじめとする民間の金融機関では、転職してから間もない場合、融資の審査が通らないことがあります。一般的には同じ会社に3年以上在籍していることが問題なく審査をクリアする条件となり、転職したばかりの場合は、転職の理由や内容について詳しくヒアリングされることになります。規定の職務経歴を提出することもあるようです。

 同じ転職でも、経験を生かしてステップアップする転職か、会社の信用度は、といったことで融資の是非が変わる可能性があるために、その説明が求められるのです。

 ただし、公的金融機関などでは融資の判断材料として過去の年収を重視し、転職歴などをあまり問われないケースもあります。

 そのほかにも、クレジットカードの使用限度額が減少することもあり、転職後は多額のお金を借りることができにくくなる事実はあるのです。

 転職を考える際には、何よりも事前準備が大切です。転職することによって、仕事自体だけでなく、自分を取り巻く環境はどう変わるのか。何もかもを調べ上げて確認しなければならない、というのは極端でしょうが、3年先、5年先の「人生プラン」を思い浮かべ、自分自身に問い掛けることは必要ではないでしょうか。

著者紹介

石川裕麻(いしかわゆま)

早稲田大学教育学部を卒業後、キャリアデザインセンターへ入社。転職雑誌『type』の広告営業を経験後、人材紹介事業部での営業とキャリアカウンセリングを担当。

マーケティング部へ異動し現在に至る。



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