RAC構築で失敗しない重要ポイントとは?Oracle SE RACで手軽に高可用性システム(3)(1/3 ページ)

Oracle 10gからStandard EditionでもRACシステムを構築できるようになった。成功の鍵は、SE RACならではの制限事項や落とし穴をうまく乗り越えること。そのための情報を提供しよう。(編集部)

» 2007年07月13日 00時00分 公開
[松下雅株式会社コーソル]

 本連載は第1回第2回で、Oracle Real Application Clusters(以下、RAC)を導入する際の考慮事項、Red Hat Enterprise LinuxにRACを導入する際のOS設定について解説しました。今回はいよいよ、実際にRACを構築する際のポイントを解説します。

 RACの構築というと途端に難解だというイメージを持つ方もいるかと思いますが、Oracle Clusterwareの導入が加わるだけで、それほど大きな手順の変更はありません。実際の構築では、図1の順番で製品を導入し、データベースを構築することとなります。

図1 RAC構築の手順 図1 RAC構築の手順

 今回はこの構築手順の中から、特にRAC固有のフェイズについて解説します。以下の手順は、「racsrv1」「racsrv2」という2つのサーバに、「atmark」というデータベースを構築したケースです。

Oracle Clusterwareの導入

 Oracle Clusterwareは、Oracleデータベースと同様、Oracle Universal Installer(以下、OUI)を用いて導入します。インストールするディレクトリやディレクトリの別名など設定項目はいくつかありますが、ここでは[クラスタ構成の指定]と[ネットワーク・インターフェイスの使用方法の指定]の画面を取り上げます。両画面ともRACで使用するネットワークの設定を行う画面であり、RAC固有の設定です。

 RACでは、3つのネットワークを使用します。

パブリック・ネットワーク
サービスを提供するためのネットワーク。実際のクライアントからの接続にはバーチャル・ネットワークを使用しますが、その基盤となるネットワークです。

プライベート・ネットワーク
クラスタリングしたノード間でのみ通信を行う、専用ネットワークです。

バーチャル・ネットワーク
クライアントからの接続用のネットワークです。パブリック・ネットワークと同じネットワーク・セグメントの中で、異なるIPアドレスを指定します。

 ネットワークのイメージは、図2のようになります。

図2 RACで使用される3つのネットワーク 図2 RACで使用される3つのネットワーク

 各ネットワークのIPアドレスとホスト名を決めておき、[クラスタ構成の指定]の画面でホスト名を設定します(図3)。初期画面では1ノード分のみ設定されているので、ホスト名を確認し、誤っていたら[編集]ボタンを押下して編集します。その後[追加]ボタンを押下し、2ノード目以降を設定します。

図3[クラスタ構成の指定]の画面 図3[クラスタ構成の指定]の画面

 続いて[ネットワーク・インターフェイスの使用方法の指定]の画面です(図4)。OUIは、Oracle Clusterwareを導入するノードのすべてのNIC(Network Interface Card)を検出し、当該画面に表示します。表示された各NICに対して、それぞれ[パブリック]ネットワーク用なのか、[プライベート]ネットワーク用なのか、Oracle Clusterwareでは[使用しない]のかを指定します(NICに対して指定するものなので[バーチャル]ネットワークの指定はありません)。

 OUIはデフォルトで以下のセグメントのIPアドレスをプライベート・ネットワークとして認識しますので、当該IPアドレスをパブリック・ネットワークに使用する際には注意が必要です。

  • 10.0.0.0
  • 172.16.0.0〜172.31.0.0
  • 192.168.0.0〜192.168.255.0

 インターフェイス・タイプ([パブリック]か[プライベート])を変更するには、当該行を選択し[編集]ボタンを押下します。

図4[ネットワーク・インターフェイスの使用方法の指定]の画面 図4[ネットワーク・インターフェイスの使用方法の指定]の画面

 以上が、OUIで注意すべきネットワークの設定です。「OUIで」と記載したのは、最後の注意事項があるためです。

 Oracleデータベースを導入する際、OUIの最後にroot.shを実行しますが、同様のものがOracle Clusterwareにもあります。Oracle Clusterwareではroot.shを、RACを構成する全ノードで実行する必要があり、1ノードずつ順番に実行します。

 root.shを最後のノードで実行する際、先に挙げたネットワーク・セグメントのIPアドレスをパブリック・ネットワークとして指定しているとエラーが発生します。原因は、root.shの中で実行されているvipcaにあります。vipcaはVirtual IP Configuration Assistantの略で、その名のとおりバーチャル・ネットワークの設定を行うユーティリティです。バーチャル・ネットワークはパブリック・ネットワークの上に成り立つため、OUIがプライベート・ネットワークとして認識するIPアドレスの上には作れません、というエラーです。

 しかし作ること自体に問題はなく、OUIを起動したノードで明示的にvipcaを起動することで対応可能です。vipcaで注意する点は1つ。最初に記載したとおり、バーチャル・ネットワークはパブリック・ネットワークと同一のネットワーク・セグメントに作成する必要がありますので、パブリック・ネットワークのサブネットマスクを確認し、誤っていたら修正してください。

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