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新人、アーキテクチャチームで「運命の出会い」システム開発プロジェクトの現場から(19)(3/3 ページ)

開発現場は日々の仕事の場であるとともに、学びの場でもある。先輩エンジニアが過去に直面した困難の数々、そこから学んだスキルや考え方を紹介する。

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「先を読んで」仕事に取り組む

 初めは、この管理者ポータルは作業スコープに入っておらず、Mさんが個人的に作っていたようです。

 しかし、カットオーバーが見えてきた時期になると、

 「今後このシステムを運用、監視していくに当たり絶対必要になる! 必要だと思うから作ってるんだ!」

というMさんの信念のとおり、

 「早い時期から着手してくれていて助かった」

とプロジェクト内からの評価と注目度が一気に高まったのです(私が参加したのはこのころです)。

 賞賛の嵐の中、Mさんは私に、

 「いいか、先を読んで仕事をするって大事なことだ。当たり前のことだけじゃなく、その一歩先っていうのが自分の価値を高めるんだ」

といいました。

 私は、Mさんってすごいな、と思うと同時に、私も「先を読んで」仕事に取り組もう、とSEとしての姿勢を決めたのです。

 意識し始めても、すぐには管理者ポータルのようなすごい発想は出てきません。

 けれど、この意識のおかげで、仕事を頼まれたときには、成果物について「その最終形はどんな感じですか?」と聞き、期待された最終形を少しでも超えるように、もう一歩先を行けるように、仕事に取り組むことになりました。

もう1人のコワモテ上司、Nさん。2人に見る上司の理想形

 アーキチームでの経験を語るならば、Nさんの存在も伝えたいです。

 NさんはMさんと同じくヒゲのコワモテ上司でしたが、Mさんと違う点は、Nさんはカミナリが発生しない人だということです。

 Mさんとともに、最初から一歩先を見て作業をしていたNさんは、

 「仕事を楽しくするべし!」

という姿勢を強烈に見せてくれた方です。

 私が失敗しても、稚拙な質問をしても、「へへ、まじで?」と笑いながら話を聞いてくれ、一緒にリカバリをしてくれました。

 とある日、私が作ったプログラムのミスで、テスト環境のマスタがすべて消えるという惨事が起きました。

 私が帰った後の出来事のため、聞いた話から内容を起こすと、

みんな 「あれ? おい。なんだ? マスタ消えてるぞ! だれだ〜〜??」

 しばし、原因解析中……。

Mさん 「ん? あ! すいません、うちの檜山ですっ!」

と手を振って大声で謝って、Nさんとともに夜を徹して改修と復旧をしてくれたそうです。

 翌朝、その話を聞いた私がNさんのところに行くと、

 「へへ、まじ大変だった。けど、しゃーない(笑)」

といってくれました。

 Mさんは横で「うむ」とひと言。

 2人とも余裕があってこその対応だと思うのですが、この恩を仇で返すようなことがあってはいけない、と奮起したのをいまでも覚えています。

 このときの2人の姿を「なりたい上司」として頭に描き、その後自分に後輩ができた際の対応に生かせたこと、2人がプロジェクトを離れたいまも、気に掛けてくれ、相談に乗ってくれることを、本当にありがたく思っています。


 やや私信めいた文となってしまいましたが、これが私の運命の出会いです。

 大げさではなく、仕事に対する姿勢づくりのきっかけをくれた貴重な経験です。こうしたきっかけがあるからプロジェクトって面白いと思います。

 さて次回は、「初めてのスーパーバイザー経験」です。

 つまり、いよいよ私が後輩の面倒を見る立場になったときのお話です。お楽しみに。

筆者紹介

アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ

檜山亜紗美

1982年生まれ。東京理科大学理工学部経営工学科を卒業後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズに入社。Javaの大規模プロジェクトで開発から運用までを経験、現在はStrategic Delivery Office(社内組織)にて方法論の展開・定着化に取り組む。趣味は幹事(ノンジャンル)。主催から出欠係まで幅広くたしなむ。



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