セットアップ全国行脚で九州弁に大苦戦システム開発プロジェクトの現場から(2)(1/2 ページ)

開発現場は日々の仕事の場であるとともに、学びの場でもある。先輩エンジニアが過去に直面した困難の数々、そこから学んだスキルや考え方を紹介する。

» 2007年04月23日 00時00分 公開
[稲井紀茂アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ]

 「情報システムで経営を効率化する」ことを志し、新卒でIT業界に飛び込んだ私。配属先は学ぶ環境があるとはいい難く、まずは本来の仕事をこなしながら自分の中で課題を決めて取り組み、いろいろなプラットフォームの操作を習得しました。

 その後、何もない環境から手探りであるシステムの開発を成し遂げ、多くを学ぶことができました。今後もITエンジニアとしてやっていく自信のついた1年間でした(連載第1回 試行錯誤で分かったスパゲッティコード撃退法)。

2つの誘い

 IT業界に入ってから1年が過ぎようとするころのことです。「次のステップとして取り組むべきことは何か」を考え、自分なりに出した結論は以下のようなものでした。

  • 大規模なプロジェクトで、システム開発の手法を学ぶ
  • オープン系の開発スキルを向上させる
  • 組織/チームの一員としてのヒューマンスキルを身に付ける

 これらのテーマに取り組む機会は、当時自分が置かれていた環境では望めず、何とかして道を切り開かなければという危機感を覚えていました。

 そんな折、私は普段現場で接している人たちから、2つのお誘いをいただいたのです。

 1つはある会社の社長からで、「フリーランスとしてうちの契約社員にならない?」というお誘いでした。正社員としての保証はない代わりに待遇は良く、月給はほぼ倍近くになります。

 もう1つは現場での上司に当たる人からで、「うちの会社に来ない?」というものでした。こちらは報酬はさほど変わらないものの、正社員としてシステム開発の仕事に就けるという話でした。

 お金があるに越したことはありません。フリーランスの報酬は魅力的に感じました。しかし落ち着いて考えてみると、フリーランスではきちんとしたシステム開発の仕事に就けないリスクがあり、ヒューマンスキルを身に付ける機会も乏しそうだと感じました。

 中長期的な視点に立ってみれば、自分がどちらを選ぶべきかは明らかでした。最終的に後者のお誘いを選択することにし、社長さんには丁重にお断りをしました。

 人生で初めての退職届を書き、自社に向かいました。退職届を手渡すと担当の営業さんは一応引き止めてくれましたが、私にとってその会社は毎月勤務実績表を提出すれば月給を振り込んでくれるだけの存在でした。特に感慨もなく、淡々としたお別れとなりました。

Xプロジェクトへの参画

 転職後、配属されたのはOA機器や事務機器を扱う会社のSI(システム開発)部門です。顧客にコンピュータ機器を納入しつつシステムの導入も請け負うというビジネスで、自社開発のパッケージシステムとカスタム開発を二本柱としていました。

 配属後しばらくはパッケージシステムの導入プロジェクトに所属し、主に小規模改修を担当していました。プラットフォームが慣れ親しんだVisual Basicだったこともあり、当時の私のスキルでも十分に対応できるものでした。

 3カ月ほどたったある日、私は別のプロジェクトに所属する上司から声を掛けられました。「このままパッケージの開発部隊に所属し続けるのと、『Xプロジェクト』に参画するのと、どちらがいい?」

 Xプロジェクトはカスタム開発のプロジェクトで、要件定義を進めている段階、つまり上流工程の真っただ中でした。プロジェクト自体の難易度が高く、メンバーの勤務時間も長いなど、相当タフだといううわさです。果たして自分はついていけるのか? 役に立てるのか? そんな思いが胸をよぎります。

 しかし、自分が決めたテーマを振り返ってみれば、Xプロジェクトへの参加はやはり絶好のチャンスです。行くしかありません!

 「お役に立てるか不安ですが、頑張りますのでぜひXプロジェクトでやらせてください!」

 「よし分かった。異動する方向で手続きしよう」

 上司にしてみれば、若手の中からアサインするメンバーを選ぶに当たって、同じようなスキルレベルならやる気のありそうな者を選ぼうということだったのでしょう。こうして私はまたも上司の言葉を転機として、一歩志望に近づいたのです。

「しんどい」プロジェクトでの経験

 Xプロジェクトは、紳士靴に端を発する欧州ブランドの日本法人をクライアントとし、予算額・要員数とも、この会社では未曽有といえるくらい大規模なものでした。

 私はこのプロジェクトに要件定義から参加し、設計・開発に加えてベンダ管理も担当、導入・保守も経験するなど、ひと通りのフェイズでさまざまな役割を経験することができました。

 しかし会社としても慣れない規模ということで、プロジェクト自体はご多分に漏れず見事に難航してしまいました。気力と体力で何とか乗り切りましたが、ピーク時の残業は月160時間に迫る勢いでした。

 そのころ、私をXプロジェクトに加えてくれた上司は、たばこをくゆらせながらの「はぁ〜、しんどいなぁ〜」(関西弁調で)が口癖になっていました。実際、とてもしんどかったです……。

 紆余(うよ)曲折、苦労話はたくさんありますが、今回は店舗への機器導入にまつわる話を取り上げます。

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