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第1回 えっ、iPodってただの音楽プレーヤーじゃないの?Windowsネットワーク管理者のためのiPhone/iPod touch入門(1/2 ページ)

Windows管理者のために「仕事」で使えるiPhone/iPod touch活用連載スタート! 今回はiPhoneとiPod touchの違いやビジネスに使えるアプリケーションを紹介する。

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Windowsネットワーク管理者のためのiPhone/iPod touch入門
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連載目次

 アップルのiPod(アイポッド)は皆さんご存じだろう。これは、アップルが開発した携帯用音楽プレーヤーだ。さまざまなモデルがあり、それぞれ機能が異なるが、「iPod」と名の付く製品は、いずれもMP3形式などの音楽データを内部に転送して、外出先でこれを聴くことができる。

 「そんなことは分かっているが、どうしてそんな音楽プレーヤーの記事をこのサイトで取り上げるのだ」というおしかりの声が聞こえてきそうだ。確かにiPodは携帯用音楽プレーヤーだが、最上位モデルであるiPod touch(アイポッド タッチ)は、実は単なる音楽プレーヤーではない。いや、むしろ音楽プレーヤーの機能はオマケみたいなもので、もっともっと面白く便利な使い方がいろいろとできる。

iPod touch
iPod touch

 例えば筆者もiPod touchを持っているが、音楽データは1曲も入れていない。それじゃあ何に使っているのかといえば、電子メールをチェックしたり、Webを見たり、RSSで最新記事をチェックしたり、最新の株価を見たり、会議中に資料のPDFデータを見たりと、ほとんどパソコンと違わない使い方をしている。最初から入っている便利な標準アプリケーションもあるが、後から自分の好みのアプリケーションを、ネットワークからダウンロードしてインストールすることもできる。アプリケーションは10万本を超えており、まだまだ増加中だ(ITmediaのニュース)。つまりiPod touchは、音楽プレーヤー機能を持った、汎用のアプリケーション用携帯端末なのだ。知っている人からすれば何をいまさらだろうが、「音楽プレーヤーで何でそんなことができるの?」と思った方も少なくないのではないかと思う。今回の記事、そしてこのコーナーで今後公開予定のiPod touch/iPhone(アイフォーン)活用記事は、そういう方を対象としたものである(iPod touchとiPhoneの違いについては後述)。

 アップル製であるiPod touchは、もちろんWindows OSを搭載しているわけではないし、Windows用アプリケーションが使えるわけでもないが、メール端末やWebビューア、文書ビューアなどとして、Windowsネットワーク環境でバンバン活用することができる。少々細かい話だが、Exchange Serverに接続するための機能も標準で持っている。このコーナーの目的は、ちょっとポケットに忍ばせて、会社や自宅で便利に使えるiPod touch/iPhoneを紹介することだ。Windows Server Insiderで公開するのだから、会社や自宅のネットワーク環境はWindowsベースのものとする。Windowsネットワーク環境でiPod touch/iPhoneをどう生かせるか、活用のちょっとしたヒント、使う上での注意点などを、あくまでアップル・カルチャーに精通していないWindows管理者、Windowsユーザーの視点から解説していこう。今回は、iPod touchとiPhoneの違いを簡単に踏まえ、無線LAN(Wi-Fi)機能、仕事に使えそうなアプリケーションをいくつかえりすぐって紹介する。

 ただし注意点を1つ。iPod touch/iPhoneは、基本的に個人での利用を前提に開発されているため、セキュリティ機能などはあまり豊富とはいえない(もちろん最低限の機能はある)。「そんな得体の知れない端末を社内LANに接続するなんて、許されない!」「社内で使う以上はActive Directoryで集中管理しないと!」というような会社での利用はお勧めしない。使用によって得られる利点も欠点もリスクも含めて、あくまで自己責任で使っていただくというのが本稿の趣旨である。

iPod touch=iPhone−携帯電話−カメラ−GPS!?

 iPod touchは「iPod=音楽プレーヤー」、iPhoneは携帯電話(スマートフォン)で、両者はまったく違う製品だと思っている読者もいらっしゃるだろう。両者のハードウェアを比較すると、確かに重大な違いがある。

項目 iPod touch iPhone
価格例*1 1万9800円(iPod touch 8GB)/
2万9800円(iPod touch 32GB)/
3万9800円(iPod touch 64GB)
3万720円(iPhone 3G 8GB)/
3万6480円(iPhone 3G 16GB)/
4万6080円(iPhone 3GS 16GB)/
5万7600円(iPhone 3GS 32GB)
携帯電話回線(3G)によるデータ通信 なし 内蔵
携帯電話回線(3G)による通話 なし 内蔵
Wi-Fiによる通信機能 内蔵 内蔵
ショート・メッセージ・サービス なし 内蔵
マイク なし(外付け可能) 内蔵
カメラ なし 内蔵
GPS なし 内蔵
電子コンパス なし 内蔵(iPhone 3GSのみ)
搭載OS*2 iPhone OS 3.1.x iPhone OS 3.1.x
厚さ 8.5mm 12.3mm
重量 115g 133g(iPhone 3G)/
135g(iPhone 3GS)
iPod touchとiPhoneの主な違いと共通点
執筆時点の最新機種で比較してみた。内蔵ハードウェアに差異はあるが、Wi-Fi内蔵とiPhone OS 3.1.x搭載という点は共通であり、アプリケーション・プラットフォームとして見れば大きな違いはない。
*1 iPod touchはアップルのApple Store、iPhoneはソフトバンク モバイルの各オンライン・ショップで2010年5月中旬に確認した価格。iPhoneは契約内容によって変わる場合がある。
*2 OSのバージョンは2010年5月中旬時点のもの。発売時期によっては、これよりバージョンの古い製品もあるが、アップグレードは可能。

 このように、携帯電話回線やカメラ、GPSなどのデバイスはiPhoneにしかない。当然ながら、これらのハードウェアに依存したアプリケーションは、iPhoneでしか使えない。しかしそれ以外の部分、例えばアプリケーションに提供されるAPIや、OSのサービスなどは両者でほとんど共通している。アプリケーションから見れば、ソフトウェア的には、iPod touchもiPhoneも基本的には同じものと考えてよい。事実、先ほどお話しした10万本超のアプリケーションの多くは、iPod touchでもiPhoneでも共通して使える。iPod touchもiPhoneも、無線LANのWi-Fiに標準対応しており、Wi-Fi環境なら、いずれも通信端末として活用可能だ(詳細はすぐ次で述べる)。

 むしろ「会社で仕事に使う」という観点で考えた場合、両者の価格差というか、コスト差の方が影響は大きいかもしれない。iPod touchの方は買いきり商品である。最初に購入したら、後はお金はかからない。一方のiPhoneは、携帯電話として契約する必要があるので、初期費用に加えて毎月の使用料を支払う必要がある。細かい契約内容の話は割愛するが、iPhoneの年間維持費は、10万円弱程度はかかるものと思われる。また契約についても、個人でするのか、法人でするのかなどで手続きが大きく変わってくる。社内規程などの関係で、個人契約による携帯電話の使用料金を会社に請求するのは難しいというケースもあるだろう。

 もちろん、iPhoneには携帯電話のデータ通信機能(3G)を使って、外出先でも使えるという圧倒的な利点があるのだが、作業端末としての導入ハードルの低さを考慮し、この連載ではiPod touchの方に重点を置いて説明していく予定だ。iPhoneはiPod touchを機能的に包含しているから、説明の多くはiPhoneでもそのまま当てはまるはずである。どうしてもiPhoneにしか当てはまらないことがある場合には、その旨を明記するようにする。

 なお、日本でも間もなく(2010年5月中)発売が開始される「iPad」がこの時期何かと話題だ。一部には「大型化したiPhone」というような解釈もあるようだ。iPadでもiPod touch/iPhoneアプリケーションが動くようだから、当たらずといえども遠からずかもしれないが、画面解像度などは異なるので、iPad用のネイティブ・アプリケーションはiPod touch/iPhone用とは別扱いだ。用途も別だと思われるので、iPadについては機会があれば触れることにして、本稿の主眼には置かないことにする。

Wi-Fiでつなげばネット端末に

 iPod touch/iPhoneの重要なポイントは、無線LAN(Wi-Fi)を標準で内蔵していることだ。これはPCでもよく使われるIEEE 802.11b/gという規格に対応しており、市販のアクセス・ポイントや公衆無線LANサービスも利用できる。つまり、社内にアクセス・ポイントがあれば、Wi-Fi経由でiPod touch/iPhoneを社内LANに接続し、社内のサーバやインターネット上のサイトにアクセスできるわけだ。

 iPod touch/iPhoneでのWi-Fiネットワーク接続は、後で述べるようにトラブルがなければ難しくない。通常は、自動で検出された周囲のWi-Fiネットワーク一覧から選び、「パスワード」と表現されている暗号化のキーを入力するだけだ(暗号化方式は自動的に選択される)。

Wi-Fiネットワークの接続設定
自動で検出された周囲のWi-Fiネットワーク一覧から対象のネットワークを選び(左)、暗号化のキーを「パスワード」として入力する(右)。トラブルがなければ、これでWi-Fiネットワークに接続できる。

 ただ、ブログの体験談などによれば、アクセス・ポイントによってはiPod touch/iPhoneとうまく接続できないことがあるようだ。実際、筆者の仕事場にも、暗号化の方式次第でiPod touch/iPhoneとの接続が途切れてしまうアクセス・ポイントがある。このあたりの詳細は今後の連載で取り上げてみたい。

 最近の市販アクセス・ポイントではiPod touch/iPhoneとの接続が保証/サポートされる製品もある。心配であれば、こうした製品を選ぶとよいだろう。

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