その“優しさ”は本物か?――“優しい先輩”の落とし穴:田中淳子の“言葉のチカラ”(32)(1/2 ページ)
いつも優しくて、間違ったことをしても怒らない先輩。その人、本当に優しいの?
人材育成歴30年の田中淳子さんが、人生の先輩たちから頂いた言葉の数々。時に励まし、時に慰め、時に彼女を勇気付けてきた言葉をエンジニアの皆さんにもお裾分けする本連載。
前回は、新卒時に希望の部署に配属されなかったり、さまざまな職種を転々としたりしたエンジニアの話を紹介した。今回のテーマは「先輩」だ。優しい先輩と厳しい先輩、本当にあなたのことを思っているのはどちらの先輩だろうか?
美容院で、美容師の成長について話を伺った。
印象に残ったのは「厳しい先輩」と「優しい先輩」の話だ。「若い人は、どうしても優しい先輩の方にすり寄ってしまうんです。厳しいことを言う人とは、だんだん距離を取るようになります。ですから、いつも言っているのです。『優しい先輩は、どんなときでもただ優しいだけ。あなたが困ったときにもただ優しくて、助けてなんかくれないから』」とのことだった。
その“優しさ”は本物か?
私にも心当たりがある。
新人のころ、Aさんという先輩がOJT担当として私を指導してくれた。A先輩は全くダメ出しをしない、優しい人だった。
ある日、実機を使って試したいことがあり、マシンを予約しようとした。しかし、私が使いたい日時は既に別の先輩(Bさん)が予約していた。こういう場合はどうしたらよいのかA先輩に相談した。
A先輩は、「そういうときは、予約表のBさんの名前の隣に田中さんの名前を書いておけば大丈夫。Bさんが何とかしてくれるから」とアドバイスをくれた。「それで大丈夫なのかな?」と疑問に思ったが、A先輩が言うことを鵜のみにして、予約表のBさんの名前の隣に自分の名前を私は書きこんだ。
翌日、Bさんが予約表を手に血相を変えてやってきた。
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