OSSデータベースのMySQLとPostgreSQLは「次の段階」へ進む:Database Watch(2016年9月版)(2/2 ページ)
オープンソースデータベースの両雄、MySQLとPostgreSQLはどちらも近々大きく変化を遂げそうです。まだ公式発表前ですが、現在入手できる情報から「来たるべき進化」を考えます。
PostgreSQLも次の次は大きな転機を迎えそう?
PostgreSQLも近々大きく動きそうです。
PostgreSQLの現行バージョンは「9.5」です。2011年に9.0となり、MySQLと同様に年次のバージョンアップごとに小数点第1位の数字を上げてきました。9.xでは当初、「ストリーミングレプリケーション」という、外部製品で実装していたレプリケーション機能が本体に組み込まれたのが大きな変化でした。後にマルチコア対策が強化され、マルチコア環境での性能を向上させました。加えてJSON対応では、JSON型やJSONB型などのサポートもMySQLより早期に進めていました。
例年通りだと次のバージョンは2016年9月……ですが、遅くとも年内には正式版が発表されることになるでしょう。なお、出荷候補(RC)版として、2016年9月1日に「9.6 Release Candidate 1」がリリースされています。
しかしその次は、9.7ではなく「10」になる可能性があります。直近、2016年7月6日に開催された翔泳社主催のイベント「DB Online Day 2016」にて、PostgreSQLのコミッターも務めるSRA OSSの石井達夫氏が「(次のPostgreSQLが9.6だとしても)その次は間違いなく10.0になると思います。来年のお楽しみですがね」と述べ、信ぴょう性が増してきました。
MySQLと同様に、バージョン番号の1の位の数字を上げることには、節目と位置付ける何か大きな意味が込められているはずです。石井氏は私見として「並列処理やクラスタリングにあると思う」と話していました。
直近に目を向けると、もうすぐ発表されることになる次期PostgreSQL(恐らく9.6)で象徴的に捉えられているのは「パラレルクエリ」です。クエリを並列で実行するために、複数プロセスで処理できるようにする機能と説明されています。
PostgreSQL 9.xでは、並列処理に関係する技術要素を徐々に整備していますが、もしかしたら「9.6」でそれを一段落付けた集大成となるのかもしれない、と予測されています。それならば、“次の次”でバージョン番号の1の位を上げることにも頷けます。そして、PostgreSQLは将来の方向性として、性能面の強化に目を向けていると推測できます。「商用RDBに追い付け、追い越せ」の勢いで、処理性能の強化にまい進していきそうです。
PostgreSQLの周辺では、2016年12月2日から2日間、東京・秋葉原で「PGConf.Asia 2016」が開催されます。PostgreSQLには前身のソフトウェアがありますが、正式に「PostgreSQL」となったのは1996年から。ということで、2016年は「PostgreSQL 20周年」に当たります。その節目のイベントとなるように準備が進められているようです。
MySQLやPostgreSQLに限らずOSS全般にいえることですが、いろいろな形でコミュニティーを支えるメンバー、ユーザーがいるからこそ、ソフトウェアは発展していきます。多様な企業のメンバーがオープンな場で建設的な議論を進めらられるのは、さまざまな意味で貴重なことだと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- MySQLの「気になるウワサ」はどこまで本当?
Webの世界で人気の高いオープンソースRDB「MySQL」は、振り返ると買収や分岐など、運命に翻弄されてきましたが、中には正しくない話も出回っているようです。あの話は、本当ですか? - オラクル、“3倍高速”な「MySQL 5.7」一般提供開始
オラクルが「MySQL 5.7」の一般提供を開始。前バージョン比で最大3倍高速とする性能、拡張性、管理性の向上、JSONサポートによるNoSQL機能などを強化した。 - PGECons、PostgreSQL 9.5の性能検証やデータベース移行の検証結果を公表
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムが、「PostgreSQL」の普及推進に向けた活動成果発表会を開催。PostgreSQL 9.5の性能検証やデータベース移行検証結果などを公表した。 - 「PostgreSQL」はエンタープライズでどこまで使える? ”SIエンジニア連合”が技術検証
商用DBからPostgreSQLへの移行ノウハウを「普段は競合」に所属するITエンジニアらが合同で検証した成果は? 9.4での性能評価資料の他、移行プロセス検証なども。