島根編:就業も支援! コミュニティーも支援! 呑み会も支援! ――八面六臂の“おせっかい”ぶりを発揮する、松江のスーパー公務員トリオ座談会:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(14)(3/4 ページ)
「本気」と書いて「マジ」と読む――U&Iターンの理想と現実をお届けする本連載。島根編第3回は、U&Iターンエンジニアたちに大人気のスーパー公務員たちをお招きして座談会を開催しました。
「市立中学校でRubyの授業実施」の裏話
佐藤さん 松江市立中学校の授業でRubyやるようになったのも大きいですね。福田さんが風穴を開けたっていうか。
羽角 え、福田さんが?
福田さん 風穴を開けたなんてカッコいいもんじゃないです。あるとき急に、市長が「市立中学校でRubyを教えます」って発表して、メディアにも「松江市が市立中学校でRubyプログラミング授業を開始へ」なんて出ちゃいまして(笑)。
困ってしまって、ネットワーク応用通信研究所の高尾宏治さんや本多展幸さんに「力を貸してください」とお願いして巻き込んだ。そうしたら、彼らの教育に対するモチベーションがすごく高い。安易な方法で楽しようとしてたら、楽したくない人たちのボタンを押しちゃって(笑)。今ではNPOの「Rubyプログラミング少年団」ができて、小学生向けの取り組みにまで広がってます。
杉原さん 何に1番苦労しました?
福田さん 先生たちに「私は先生たちの仕事を増やす敵じゃないですよ! 一緒にできることを考えながらやりましょう!」と説明するのに苦労しました。平成28年度から市内の全中学校で実施できるようになったのは、後任が粘り強く先生たちとコミュニケーションを取り続けたおかげです。
佐藤さん 新しいことを始めようとすると最初は警戒されますよね。杉原さんと福田さんは新しいことにチャレンジして形にできるのがすごい。
福田さん 最近やっと、プロジェクトの方向性に確信を持てるようになってきました。活動を続けてきたことで私たち公務員の役割も増えてきたので、Rubyを軸に、新規事業の支援をしたり、企業誘致を担当したり、U&Iターンを支援したり、と部署が変わってもIT業界に関わり続けられるようになってきました。
杉原さん 公務員のプレーヤーが増えてきたね。
福田さん そう。新しいプレーヤーにノウハウを引き継いでプロジェクトを多様化させることができるようになってきました。
「Uターン」と「Iターン」は、かなり違う
羽角 UターンとIターンは同一の文脈で語られがちですけど、実は全く異なるものではないでしょうか。
杉原さん そうですね。Iターンには大きく2つのパターンがあります。1つ目は所属している企業が島根にブランチオフィスを出して本社から異動してくるパターン。今のところ島根ではこれが多い。もう1つは、島根に縁はないけれど島根やRubyを意識していた人たちが単身で乗り込んでくるパターン。
佐藤さん モンスター・ラボの御供(みとも)さんのパターンですね。まつもとゆきひろさんのツイートを見て、東京で開催したU&Iターン転職イベントに参加して、本当にIターンしてくれた。
福田さん 当時、私と杉原さんは、専任のコーディネーターが個別に話を聞いて、転職候補の企業をレコメンドしたり、企業や居住環境の視察に島根へ行くための旅費を半額サポートしたり、といったITエンジニア向けマッチングサポートを東京事務所で担当していました。御供さんは、どうしてモンスター・ラボにIターン転職を決めたんですか?
羽角 そのイベントで、ぼくが彼と面談したんです。自分で言うのも何だけれど、「ハスミが仕事できそうだったのと、その後Skypeで面接した島根開発拠点代表の山口が優しくていい人だったから決めた」って言ってました(笑)。
杉原さん Iターンを決めるには「キーマン」が必要なんだね。
羽角 Uターンはどうですか?
福田さん Uターンの人たちは、何というか「重たい」ことが多いんです。故郷に帰るとなると本当に骨を埋める決断になるから、なかなか決まらない人が多い。考え過ぎてしまって、何社就職先を紹介しても決まらない人もいます。
佐藤さん Iターンの方がそういう意味では「軽やか」ですね。必ずしも終の棲家ではないから。
福田さん 全員がそういうわけではないけれど、Uターンはシリアスな決断が多いから、ワクワク感が少ないみたい。エンジニアって本当は、場所に縛られない働き方ができるもっと軽やかな仕事なので「何かもったいない」と思います。
杉原さん UターンとIターンでは、決断するときの優先順位が違うよね。羽角さんたちIターンは、「やりたいこと」「住みたい環境」が先にある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 島根編:通勤は自転車、ランチは出雲そば――松江っ子エンジニアのIターンライフ
家電量販店がない! 三菱東京UFJ銀行のATMがない! でもね……U&Iターンの理想と現実をお届けする本連載。島根編第2回は、通勤や住宅事情などの「松江市に住み、働くということ」のリアルをお届けします - 島根編:どこでも働けるということ――Iターンエンジニアが実践する屋外開発と開発合宿
ITエンジニアはPCと電源があれば、どこでも働けるよね?――U&Iターンの理想と現実「島根編」の第1回は、お城で、お寺で、民宿で、ネットワークとクラウドツールを駆使して働くIターンエンジニアのリモートワーク事情を紹介します - 新潟編:最大200万円の住宅取得補助も――妙高市役所の木浦笙子さんに聞く、U&Iターンへの行政支援
新潟に移住したら、行政はサポートしてくれるの?――U&Iターンの理想と現実をお届けする本連載。新潟編第2回は「移住を支援する行政担当者」にインタビューしました - 沖縄編:ヤギはめったに食べないよ!――沖縄の歴史、言葉、通勤着
沖縄といえば、「ちんすこう」「シーサー」「スピード」「ビギン」「米軍基地」。でも、それだけじゃないんです。U&Iターンの理想と現実「沖縄編」のスタートです! - 長野編:都会に疲れたら田舎においで!――長野で働くエンジニアの給与、残業時間、求人数
長野といえば「野沢菜」「善光寺」そして……「働く場所!」。U&Iターンの理想と現実「長野編」の始まり始まり - 岡山編:立ち乗客3人で「すげー満員じゃあ」――岡山の交通、住宅、生活事情
岡山編第2回は、交通事情や住宅情報など、移住検討者が気になる情報をセキララにレポートする - 高知編:はちきん娘がプライベートを大公開――高知の家賃、生活費
高知編 第2弾は、家賃や食費など生活面で掛かる費用について、はちきん娘(土佐弁で男勝りでハツラツとした女性)がセキララにお伝えする。高知をはじめたとした地方への移住を検討するエンジニアの参考になれば幸いだ - エンジニアは、もっと自由に働ける――U&Iターンのススメ
地方への移住を検討するITエンジニアに、全国のご当地ITライターがリアルな情報を届けるポータルサイト、それが「@IT式 U&Iターンスタイル」だ