ミッションクリティカル分野の「DBアップグレード」はどう進めるべき? 富士通北陸システムズとオラクルのキーパーソンが語る勘所:確かな技術力とノウハウ、最新ソリューションの活用が成功の鍵(1/3 ページ)
ミッションクリティカル領域におけるオラクル製品の活用に関して豊富な実績と高い技術力を誇る富士通北陸システムズ。ORACLE MASTER Platinumを有する同社のエキスパートらが、Oracle Database製品の開発を主導するキーパーソンと“データベースアップグレード”を巡って議論を交わした。[プライベートクラウド/データベース統合][パブリッククラウド][Oracle Cloud][Oracle Database 12c]
“ダウンタイム最短化”を目指した金融機関のデータベース移行はどう進められたのか?
ミッションクリティカル分野におけるオラクル製品の導入/活用に関して豊富な実績とノウハウを誇る富士通北陸システムズ。高い技術力を武器とする同社のエキスパートらは、最新技術の活用や先進的な導入事例に関して、日ごろよりOracle Databaseの開発チームと緊密に情報交換を行っている。近年は富士通グループとオラクルのSI協業プロジェクト「Project SAMURAI」などを通じた技術交流も活発化しており、「今日の企業システムが直面している課題の解決」および「先進技術の活用による新たな価値の創出」といったテーマの下、それぞれの人と技術、ノウハウを結集した取り組みが進んでいる。
そんな両社のエキスパートらが目下、関心を寄せているのが「Oracle Database 12c Release 2(R2)」の登場を受けて国内でも本格化しつつある“ミッションクリティカルシステムの12cへのアップグレード”だ。先頃、このテーマに関する先進的な導入事例や有用なノウハウの共有を目的に議論の場が持たれた。富士通北陸システムズから池田高志氏(クラウド&データマネジメント事業本部 担当部長)、田所豊氏(同本部 基盤ソリューション部)、八田恵莉子氏(同)、米オラクルからOracle Database関連技術の開発を主導するロイ・スウォンガー氏(ソフトウェアディベロップメント担当バイスプレジデント)、マイク・デートリッヒ氏(データベースアップグレード&マイグレーションマスター プロダクトマネージャー)が参加したディスカッションの模様を紹介する。
スウォンガー氏(以下、敬称略) 池田さんとは、もう随分長いお付き合いになりますね。
池田 6年ぐらいになるでしょうか。
スウォンガー 私もデートリッヒも年に1回は日本を訪れ、オラクル製品の活用や課題に関する最新の状況について、富士通様、富士通北陸システムズ様をはじめ、パートナー各社の皆さまとの情報共有に努めています。なかでも、Oracle Databaseの大規模なアップグレードプロジェクトをスムーズかつ容易に進めるために富士通北陸システムズの皆さんが培われた技術およびノウハウには非常に感銘を受けています。Oracle OpenWorldで日本のお客さまにおけるアップグレードの成功事例をご講演いただいたことは強く印象に残っていますよ。
池田 当社は富士通グループの中でも特にオラクルの技術に特化したエンジニアリングの組織であり、ミッションクリティカル分野を含め、技術的に難易度の高い案件を主に担当しています。富士通とオラクルが共同で進めるProject SAMURAIの取り組みにも参加しており、お二人も昨年(2016年)からこのプロジェクトに参加されていますね。
スウォンガー 本日は、ミッションクリティカルシステムにおけるOracle Databaseのアップグレードについて、興味深い事例をご紹介いただけるとのことですが。
池田 「Oracle GoldenGate」を活用して、ミッションクリティカルなデータベースのダウンタイムを最短化しながらアップグレードした事例です。プロジェクトを担当した八田よりご説明しましょう。
八田 ご紹介するのは、金融機関のお客さまのオンラインシステムにおけるデータベース移行事例です。このお客さまでは、勘定系システムで利用しているOracle Databaseの新バージョンへの移行を検討されていましたが、既存のデータベースが数百GB〜数TB規模にまで大容量化していた一方、移行のためにシステムを停止できる時間は「月1回3時間」の定期メンテナンス時のみと限られており、そこに課題を抱えていました。
そこで、複数の移行方式を比較検討した結果、異なるOS、バージョン、ブロックサイズ間でのデータ移行をサポートし、ダウンタイムも最短化できるOracle GoldenGateを使った移行を実施する方針が固まったのです。
実際の作業としては、Oracle Database 10gから11gへの移行に加えて、よりミッションクリティカルな要件に対応できるよう、Oracle Real Application Clusters(RAC)の3ノード構成の運用系/待機系への移行を行いました。
なお、Oracle GoldenGateを使う場合でも、いずれかの時点で現行データベースの静止断面をとる必要がありますが、サービス稼働中には常にデータの変更が生じるために、それができません。だからといって全体で約42時間かかると見込まれた作業を月1回3時間のメンテナンス時間内で行おうとすれば、Oracle GoldenGateによる同期開始までに14カ月もかかってしまう計算になります。しかし幸い、待機系のデータベースを「Oracle Data Guard」で同期していたため、そこから事前にデータ移行を行い、サービスを止めずに静止断面を作成することができました。
こうした作業を経て、移行当日には最終的な差分だけを新システムに反映して整合性チェックを行うことにより、2時間以内に作業を完了させることができました。新データベースで生じた変更はリアルタイムに旧データベースにも反映し、万が一の際の切り戻しに備えています。
また、勘定系データベースの移行が完了した後は、情報系システムの刷新プロジェクトも実施しています。このお客さまでは従来、勘定系データベースから情報系システムにデータをコピーし、さらにそこからデータウェアハウス(DWH)専用機にデータをコピーした上で、それに対してデータ分析を行っていました。これに関して大きな課題となっていたのは、非同期コピーを複数回繰り返して分析用データを用意していたために、使用するデータの鮮度が低いことです。さらに、情報系システムはシングル構成だったため、システム障害への対策に不安を抱え、分析処理のパフォーマンスにも不満があるという状況でした。
そこで、新たな情報系システムでは、「データ鮮度、信頼性、性能の向上」という課題をOracle GoldenGateとOracle RAC、そして「SPARC M10」「Oracle Database In-Memory」を使うことによって解決しました。特に「データ鮮度の向上」については、Oracle GoldenGateによるリアルタイムデータ同期を生かせるような構成を採っています。
デートリッヒ すばらしい事例ですね。お客さまのシステムで使われていたデータベースはどのくらい古いものだったのでしょうか?
池田 2000年頃に導入されたものです。
スウォンガー 当時のOracle Databaseには、当然ながらインメモリ機能は備わっていません。このプロジェクトでは、長い間使われてきたデータベースを最新版にアップグレードした上で、さらにOracle Database In-Memoryという先進技術を導入し、それがきちんと使えることを実証されたわけです。すばらしい事例ですね。
デートリッヒ お客さまは今後、どのようにシステムを発展させていこうとお考えなのでしょうか?
池田 目指しているのは「24時間365日」の完全なノンストップ環境です。今後も多くの技術的なチャレンジがあると思いますが、オラクルの技術と当社のSI力でぜひ実現していきたいと思います。
提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年3月28日
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