愛媛編:一般家庭の蛇口は2つ――地方別「風土」「産業」「暮らし」:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(28)(3/3 ページ)
愛媛県は多様である。「東予」「中予」「南予」の3つの地方に分かれ、それぞれに異なる特性がある。幸せな移住は、マッチングする地方を見極めることから始まる。愛媛在住の筆者が、各地方の違いと魅力について語る。
東予地方、新居浜市の「暮らし」〜誰もが働きやすい町〜
新居浜市は交通網が整備されており、生活は便利である。医療機関が多く、大型ショッピングセンターもある。インターネット回線導入賃貸物件が増えているし、郊外には格安の戸建て物件も多い。
移住して就職するなら、通勤時間が首都圏よりも短いことは魅力だろう。自転車ツーキニストも多い。
人間関係は、まず問題ないといっていい。昭和初期から住友各社に転勤族が多かったこと、港湾設備があることから、排他的ではなく、寛容である。それは、転入者に対してだけでなく、新技術に対しても、他言語に対しても、同じである。技術者や技能者が多い町だけに、親しくなると世間話代わりにアイデアソンが始まることもある。
また、性差をことさらには問わない人が多い。30年以上前から女性の戦力化が叫ばれ、20年前には新居浜ウィメンズプラザ(新居浜市立女性総合センター)が設立されている。女性エンジニアの移住先として検討に値するだろう。
新居浜市役所が公開している「新居浜市移住PR動画」では、「子育て支援」について触れられている。待機児童はゼロだそうだ。
特筆すべきは、福祉の精神が根付いていることだ。そして、社会福祉上の課題を、「心」だけでなく「技術」で解決しようとする合理性と先進性がある。
新居浜市では20年以上前に、新居浜高専が中心となり、介護ロボットの産学共同研究開発プロジェクト「介護工学研究会」を発足させている。医療や福祉関係者、新居浜機械産業協同組合会員企業らの協力を得て研究開発が行われ、2003年には毎日介護賞を受賞している。現在は、福祉施設などからの要望による補助具の製作や、リハビリ病院との連携による道具の開発を行っているという。
こうした背景もあり、女性や子育て中の人や障害のある人、誰もが働きやすい町となっている。
新居浜市には「お試し移住制度」もあるので、本稿を見て興味を持った方は、検討してはいかがだろうか。
「U&Iターンの理想と現実:愛媛編」、9月22日公開の記事では、中予地方と南予地方を取り上げます。お楽しみに。
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筆者プロフィール
薬師寺聖
個人事業所セイザインデザイン自営。
1980年代より、勤務先業務の一環として、地域高度情報化推進、産学共同開発、技術イベントや地域ポータルの企画など、地域活性化活動に従事。1998年、XML1.0勧告翌月に退職し、愛媛県鬼北町に移住して開業。東京案件にテレワークで応える。XMLマスター資格試験の初発本など、著書、連載、多数(おもにPROJECT KySS名義)。Microsoft MVPを12年間受賞(Oct 2003- Sep 2015)。
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