取り戻せないのなら、無力化しちゃいましょ――あらかじめ失われたノウハウたちよ:コンサルは見た! AIシステム発注に仕組まれたイカサマ(7)(1/3 ページ)
チラシ制作システム発注詐欺で「北上エージェンシー」の生駒が企てたのは、「マッキンリーテクノロジー」のAI学習ノウハウを無料でかすめ取ることだった。ことの真相を知った江里口美咲が向かった先は――。
「コンサルは見た!」とは
連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。
前回までのあらすじ
AIを活用したチラシ作成システムの発注をにおわせて、「マッキンリーテクノロジー」に無料で精巧なプロトタイプを作らせた、広告代理店「北上エージェンシー」の技術部長 生駒。その目的は、同社の持つAI学習ノウハウを着服し、他の開発会社と格安で契約し、以前自分のミスで作った赤字の穴埋めを行うことだった。
マッキンリーの営業 日高から相談を受けた「A&Dコンサルティング」の江里口美咲は、単身「アルプスソフトウェア」を訪問し、ことの真相を突き止めた。彼女が次に向かった先は……。
登場人物
A&Dコンサルティング
マッキンリーテクノロジー
北上エージェンシー
アルプスソフトウェア
社長、お耳に入れたいことが……
「A&Dコンサルティングの江里口さん?」
「お忙しいところ恐縮です。北上社長」――「北上エージェンシー」の社長室で名刺を手に首をかしげる同社の創業社長 北上幸三に、江里口美咲は深々と頭を下げた。
「実は、御社が進めているAIによる自動広告作成システムの開発の件でお話がありまして」
「ああ、システム企画部長が勧めているプロジェクトだね。それが何か?」
「その生駒部長について、少しお耳に入れておかなければならないことが……」
「何だね」
「そうですね。商取引を行うモノのあるべき姿についてといったところでしょうか」
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