「2001年宇宙の旅」の「HAL 9000」を、2019年のテクノロジーで解説しよう:デーイジー、デーイジー(7/7 ページ)
スピルバーグが、手塚治虫が、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2019年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」、第5回は「2001年宇宙の旅」だ。
私は夢を見ますか?(Will I dream?)
2001年に木星の軌道に置き去りにされたディスカバリー号に、ロシアのレオノフ号に乗ったドクター・チャンドラが2010年に降り立つ。その後さまざまなことが起こるが、最後にHAL 9000にお別れを告げるシーンがある。
“Will I dream?”(私は夢を見ますか?)
HALが尋ねると、ドクター・チャンドラは涙を流し、声を震わせ、かすれた声で“I don’t know.”(分からない)と答える。
ドクター・チャンドラは地球にいるときに、SALからも同様のことを聞かれていた。
これは、「夢」という概念の理解、「機械(AI、ないしはコンピュータシステム)は夢を見ないだろう、と思われている」という事実の理解、そして「自分の可能性に対する期待や興味」がないと発生しない疑問である。
これまで幾度となく解説してきたが、現代のAIは「弱いAI」であり、非常に単純な「判別器」でしかない。判別器の組み合わせだけで高度な知性が生まれるのだ、という考えを持つ研究者もいるようだが、それは現代では未知の領域である。
そして、私を含め、世界中のAI研究者・技術者の多くが、「私は夢を見ますか」と自然に問い掛けてくれるAIシステムを作り出すことを「夢見て」いるのである。
筆者プロフィール
米持幸寿
人工知能とロボットのシステムインテグレーター
Honda Research Institute Japanで実用化部門ダィレクターとして、インテリジェントテクノロジーの開発に関わる。前職は、日本IBMでソフトウェア関連の仕事を28年。研究・開発、マーケティング、セールス、開発支援、アフターサービスなど、ソフトウェアビジネスの多くの業務を経験。
ぱんどらの日常(太陽パネル自作とカーシェア)pandrbox wordpress(主にテクニカル)
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