どの時代にも生き残るエンジニアのスキルとスタンス:技術スペシャリストは、ほんの一握り(1/3 ページ)
私がベンチャー企業を渡り歩きVPoEになるまでの経歴と、活躍している多数のエンジニアたちと出会い、一緒に仕事をしてきた経験を基に、外部の状況にかかわらず必要とされるエンジニアに共通するスキルやスタンスをお伝えします。
コロナ禍により、「ニューノーマル時代」というワードが広がりました。新たな生活様式といわれるように、IT業界もテレワーク化が一気に加速しました。IT業界に関しては、技術や文化なども移り変わりが激しいため、エンジニアの市場価値も変化してきたと思います。
特集 ニューノーマル時代のセルフモダナイゼーション。今回は、スクールフォトや保育ICTなど幼保DXを提供する「千」のVPoE(Vice President of Engineering、エンジニア組織のマネジメント責任者)として多数のエンジニアを見てきた橋本が感じる、市場価値が高い人の特徴やエンジニアの市場価値の変化をお伝えします。
技術のコモディティ化と市場価値
最近、Web開発の技術に関してコモディティ化している企業と先進的な取り組みをしている企業の差別化が進んできていると思います。
言語、フレームワークとしてRuby on RailsやLaravelで開発を行い、インフラではAmazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)が使われるのは当たり前になっており、開発環境やデプロイもDockerをベースとした技術選定を行っている企業が一般的になりつつあります。転職したい人やエンジニアになりたい人で、先ほど紹介したような技術を習得しようと頑張っている方も多いのではないでしょうか。
一昔前の技術スキルはコモディティ化が進んでおり、例えば「Rails(Ruby)とEC2(AWS)で開発して、運用していました」というだけでは、市場価値として差別化が難しく、評価が厳しくなる傾向があります。先進的な取り組みの企業にとっては「知っていて当たり前、使えて当たり前」という評価になるため、スキルのベースラインを超えていない人は、モダン開発企業に対しては選択肢が狭まる傾向にあります。さらに上のキャリアアップを考えている人は、ベースラインを超えつつ特徴的なスキルが必要になるともいえます。
エンジニアのキャリアとして「ベースラインに達すること」を目標にする人が多くいるため、ベースライン付近のスキル保持者の人口は多くなります。そうすると、そのレイヤーのエンジニアは市場価値(給料)が低下したり固定化したりしやすく、キャリアアップがなかなか進まないという声も耳にするようになりました。
私の考えでは、技術を手段として捉える「Railsが使えます」ではなく、「ECサービスの運用とプロダクトの設計を行い、Railsによる構築、運用ができます」というように「技術で何ができるのか?」がエンジニアに問われる時代になったと思います。そういう意味では、Web開発エンジニアに求められるハードルは高くなっているでしょう。
逆に、特徴的なスキルを持ち、プロダクト開発に対して大きな期待役割や成果を残す人は、市場価値が高く、年収が1000万円を超える収入のエンジニアが少なくありません。それだけ格差が生まれているのも、コモディティ化している原因といえるでしょう。
「特徴的スキル」とはどんなものでしょうか。
フロントエンド、バックエンド、ネイティブアプリ、クラウド(インフラ)、セキュリティなどプロダクト開発の基本技術領域において専門性の高いスキルを持ち、企業が抱えるさまざまな開発課題を解決すること。これらを持つ企業内で数人しかいないレベルのエンジニアは、技術スペシャリストとして市場価値がとても高くなります。
技術スペシャリスト系はエンジニアのキャリアの王道ですが、頭一つ抜けるための努力はとても大変であり、また各技術領域のコミュニティーに積極的に参加するなど、セルフブランディングも必要です。
基本技術以外の分野としては、人工知能(AI)や機械学習(ML)、ブロックチェーンなどプロダクトの根幹部分を支える技術も評価される領域です。しかしこれらの専門性は、習得することも成果を出すことも非常に難しい面が今はあると感じます。またプロダクトの内容やフェーズによって重要性が変わるため、まだまだ市場価値の変動が大きい領域でしょう。
後で説明しますが、技術スキル以外の「ポータブルスキル」も評価されるスキルです。
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