「ターミネーター」のモト・ターミネーターを、2022年のテクノロジーで解説しよう(後編):I'll be back(1/4 ページ)
スピルバーグが、手塚治虫が、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2022年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」。「ターミネーター」後編は、3と4を中心に解説する。
「ターミネーター(TERMINATOR)」シリーズの技術を2022年のテクノロジーで解説するシリーズ、前編はTERMINATORの「T-800型ターミネーター」や、TERMINATOR2に登場する「T-1000」のリキッドメタルボディーを解説した。後編では、主にTERMINATOR3と4に登場するクルマやバイクを解説する
TERMINATOR3の無人で走るクルマ
第3作「TERMINATOR3」に出てくる女性ターミネーター「T-X」には、他の機器を制御できる能力があり、逃走するジョンを無人のパトカーが追い掛けてくる。これについて考えてみよう。TERMINATOR3の物語の設定年は2004年だ。
自動車の開発者から聞いたことがある。「最新のクルマは全部コンピュータで制御されているから、センサーとプログラムさえできれば自動運転は可能だ」と。EV(電気自動車)や、ハイブリッド車の多くが、そのような状態だという。これはどういうことだろうか。
自動車業界で最初に電子制御が始まったのは、エンジンの燃料噴射と点火だ。キャブレターからインジェクターと電子制御プラグに置き換わった。トランスミッションがマニュアルからオートマチックになった時点で、ギアシフトは電子制御になった。回転数などを制御するのでアクセルもペダルと直結しておらず、実は電子制御されている。これによりクルーズコントロールができる。走るのに直接関係ないが、ドアロックも電子化された。キーをポケットに入れたままロックできたり、キーレスエントリーしたりなどをサポートするためだ。
エコのためにエンジンのアイドリングストップ機構が作られたことや、坂道発進アシストで、エンジンの再起動、ゼロ発進、という手順も自動化された。運転アシスト技術が発達し、衝突防止の自動ブレーキができた。高速道路などでレーンを超えないようにハンドルも左右に自動で制御(レーン追従)されるようになった。これで完成だ。自動車部品の展示会では、部品メーカーがこういった運転操作に対する作用装置(アクチュエーター)の展示に力を入れている。
今日のこれらの装備が全て備わっているクルマなら、コンピュータを乗っ取れば無人で走る可能性があるそうだ。もちろん「自動運転」を行うには周辺を認識するためのレーダーやカメラなどが必要だが、動かそうと思えば動くのは確かだ。つまり、T-Xにはさまざまな機器の制御チップにもぐりこむハッキング機能が搭載されていた可能性がある。
2004年の設定時点で、米国のパトカーがそこまで電子制御化されていたかどうかは微妙だが、クルーズコントロールやレーン追従アシストは法律の問題もあって日本より米国のほうが早くから導入されていた。私も米国で運転したことが何度かあるが、かなり以前からクルーズコントロールが当たり前に使えたので、実際可能だったかもしれない。
Point!
現代の最新のフル電子制御の自動車なら、コンピュータを乗っ取れば無人で走らせられるかもしれない。
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