「ターミネーター」のモト・ターミネーターを、2022年のテクノロジーで解説しよう(後編):I'll be back(2/4 ページ)
スピルバーグが、手塚治虫が、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2022年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」。「ターミネーター」後編は、3と4を中心に解説する。
TERMINATOR4の無人バイク「モト・ターミネーター」
ジョン・コナーに扮(ふん)するクリスチャン・ベイルがかっこよ過ぎる「TERMINATOR4」には「モト・ターミネーター」という二輪のロボットが出てくる。これがめちゃくちゃかっこいい。私も昔二輪乗りだったが、そうでない人にもかっこいいと思ってほしい。二輪ロボットのエンジン音がとてもかっこいい(かっこいいの連呼で、私の気持ちを分かってほしい)。ものすごく機敏で早そうだ。そりゃそうだ、上に人が乗ってないだけ軽いし、空気抵抗も少ない。さて、二輪ロボットについて解説してみよう。
小さなおもちゃとしての二輪であれば、かなり以前からラジコン二輪がある。走り始めるのは意外と簡単で、手で保持してタイヤを回転させ、放せば走り始める。一度走り始めたら意外とコケない。問題はゆっくり走れないこと、止まれないこと、だ。
停止しても倒れない二輪といえば、村田製作所が作った「ムラタセイサク君」がある。二輪ならではの装置ではなく、中央の風車のように見える回転車輪でバランスを取っている。なぜそんなことが可能なのだろうか。
固いハンドルを回すことを考えてみてほしい。左に回そうとすると自分自身は右へ倒れるように動くだろう。これは反作用の一種だ。ある程度軽いものを回転させるとしても、急激な加速度で回転速度を上げると反作用で反対方向へ回転しようとする力が働く。そこで、ロボットの中心に回転車輪を置き、微妙かつ高速に制御することで自転車に乗った人形が倒れないように制御できる。このため、ムラタセイサク君は止まったまま立っていられる。
2017年に本田技研工業(ホンダ)が「転ばないバイク」を発表した。こちらは、人間が乗って走れる本当のオートバイだ。発売はされていないが、ビデオでデモ映像を流している。何とこのバイク、無人でガレージから出てくる。ホンダによれば、ハンドルのクラウン角を深くし、ハンドルを左右に振ることでバランスを取り、転倒回避などに応用することを考えているという。報道では「転ばない」となっているが、実際には倒れる。「無人でも立っていられる」が正しいかと思う。その後、改良版が発表されたり、ヤマハ発動機からも同種のものが発表されたりしている。
問題は、転がると簡単に壊れることと、転がった後立ち上がるためにどうするか、ということだ。その部分が解決しないと、無人で走る二輪車は実現できない。というより、二輪車を無人で走らせる意味が分からない。あ、どこかに無人配達する、というニーズはあるか。
ロボットとして自律走行するものを作るなら、もっと安定した四輪でいいではないか。現代社会では二輪で走る価値が、四輪で走る価値を超えられていないのだろうと思う。しかし、モト・ターミネーターはハンターとしてとても役に立っているようだ。
Point!
必要があるなら、無人で走る二輪走行ロボットを作る技術は既にある。
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