コードを手で書いた経験のある最後の世代は、AI時代をどう生きるか:技術力はコミュニティーで伸ばせ(2/3 ページ)
エンジニアがAI時代を生きのこるために必要な「技術力」と「仕事力」。自分で負荷をかけねばならない「ホワイト社会」で、どのようにこの2つの力を獲得すればいいのか、具体的な行動指針を「きのこる先生」が提示する。
「いま」のエンジニアの生存戦略
エンジニアという職業も、社会そのものまでもがすごい速度で変化していく現在、エンジニアはどんな生存戦略を立てればいいのでしょうか。答えはとてもありふれたものです。ずばり、「自分の成長によって道を切り開いていきましょう」です。
チャレンジを探して飛び込む
現在は社会のホワイト化によって、成長のために不可欠な「チャレンジ」の機会を逃してしまうリスクがある時代です。強制的に負荷をかけられることが減った良い時代ですから、自分でチャレンジを探して飛び込んでいきましょう。
菌類、エンジニアとしての能力には「技術力」と「仕事力」の2つがあると考えています。それぞれを伸ばすためのチャレンジを探す方法を、ちょっと考えてみましょう。
技術力はコミュニティーで伸ばす
設計、実装、運用や開発プロセスといったソフトウェア開発の技術を伸ばすには、コミュニティー(会社の枠を超えた興味、関心で集まったエンジニアたちの活動)に参加するのが効果的です。
コミュニティーでは、それぞれが技術や知識、経験を持ち寄ります。会社の業務で経験するよりもはるかに幅広い課題と解決、技術と経験に接することができる場は、自分の知識と経験を広げてくれます。
自社で使っていない技術、自社よりスケールの大きな課題、自社では絶対に経験したくない失敗の事例まで、コミュニティーの多岐にわたるトピックは、自社の業務だけでは見えない景色を見せてくれます。
コミュニティーには「それぞれが持ち寄る」と書きました。コミュニティーの文化では、参加者は単なるお客さんではなく技術や知識、経験を共有することがよしとされています。つまり、自分の持っているものをアウトプットすることも重要です。
これはコミュニティーの一員となるためだけでなく、自分の経験を技術や知識として定着させるためにも重要な行動です。コミュニティーでアウトプットするという目標があることで、自分に負荷をかけることができます。
さらに、コミュニティーには立場も経験年数もさまざまなエンジニアが集まってきます。ネットや著書で名前が知られたすごいエンジニアも大勢いますので、彼らが何を考えどう振る舞っているかを知ることは、大きな刺激になるのです。
そして、彼らもまた悩めるエンジニアであり、雲の上にいるように見えても自分がいる場所から地続きだと知ること、つまり自分も成長を重ねてそこまで行ける(可能性がある)と知ることは、エンジニアとしてのキャリアに明るい希望をもたらしてくれます。
でも、どうやってコミュニティーに参加すればいいのでしょうか。特に2020年のコロナ禍以降にエンジニアになった若い方は、「コミュニティーしぐさ」が断絶してしまった世代でもあります。そんな皆さまのために、菌類直伝「いますぐできるコミュニティー入門」をお届けします。
エンジニアとしての「人格」を作る
「Twitter」(現X)などSNSのアカウントは、そのまま交流の起点になります。名刺交換するより相互フォローした方が早いですからね。手際のいい人は自分のアカウントのURLのQRコードやNFCカードを持っていて、スマートフォンですぐアクセスしてもらえるように準備しています。
エンジニアなので「GitHub」のアカウントも作っておきましょう。コミュニティーでアウトプットするための素材を管理するためだけでも大変便利ですし、何かモノを作りたいと思ったときには絶対に必要になります。
アウトプットの「場」も作りましょう。具体的には、何らかのブログです。「はてなブログ」や「エンジニアライフ」などのサービスでもいいですし、「Zenn」や「Qiita」でも構いません。GitHubのアカウントを作ったら、GitHub Pagesという機能を使うこともできます。自分のブログをホスティングするための技術選定と準備は、それだけで技術的なアウトプットのネタになりますよね。
SNSなどのアカウントを作るなら、アイコンも重要な要素です。オリジナリティーがあり、判別性が高く、著作権を侵害していない画像を用意しましょう。自分の顔写真でも構いません。最近はAIがイラストも生成してくれますから、頼んでみるものよいでしょう。
このようにして、インターネット上に「エンジニアとしての自分」を誕生させます。普段の生活と混ぜてもいいのですが、いまから用意するなら別人格にした方がいいと思います。猫やラーメンの写真は別のアカウントにアップしましょう。
交流する
エンジニア人格ができたら、他のエンジニアと交流していきましょう。まずはSNSでフォローすることで、情報が流れてくるようにします。エンジニアの知り合いからたどっていくのが簡単ですが、心当たりがなければ著名なエンジニアを何人かフォローし、そのフォロワーの中でエンジニアっぽい人をフォローし……とツリーをたどっていけば、すぐにタイムラインがエンジニアリングに染まるはずです。
並行して、自分でもSNSに発言していきましょう。何も発言していないアカウントは、素性が分からないのでフォローされる可能性が下がります。どこかのニュースサイトで見た技術的なニュースや、タイムラインに流れてきたテックブログなどは、読んだ感想を添えるだけで立派なアウトプットになります。
エンジニアのブログを閲覧するのもお勧めです。ブログにはRSSやメール通知など更新を知るための機能がたくさんありますし、ブログ筆者のSNSをフォローしておけば、きっと新しい記事のURLを流してくれるはずです。
このようにして、技術的な情報を受け取るだけでなく発信するようになれば、自然にエンジニアとしてのソーシャルグラフが育ってきます。興味のある領域のトピックが常に流れているタイムラインができれば、情報収集の効率がグッと上がります。
参加する
エンジニアとしての人格ができたら、コミュニティーのイベントに参加してみましょう。オンラインよりはオフライン、大きなカンファレンスより小さな勉強会の方がより密に交流できます。
発表者に話しかけて感想を伝えたり質問したりするもよし、参加者同士で発表についての意見を交換するもよし。リアルな場でエンジニア同士の交流をすると、世界が大きく広がった感覚を得られます。
先ほども書いた通り、コミュニティーの参加者はアウトプットすることが良いとされています。自分の経験や知識をネタとしてストックしておき、テーマが合うイベントで発表するのを目標にしてみましょう。
インプットとアウトプットのループを回す
こうしてコミュニティーに参加する習慣が付くと、インプットとアウトプットのループが回るようになります。仕事で得た経験をネタとしてストックし、コミュニティー向けにアウトプットしていく。コミュニティーで得た知見から学び、自分やチームの技術力向上に生かす。そんな習慣が付けば、エンジニアとして技術力を伸ばしていく準備はバッチリです。
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私がベンチャー企業を渡り歩きVPoEになるまでの経歴と、活躍している多数のエンジニアたちと出会い、一緒に仕事をしてきた経験を基に、外部の状況にかかわらず必要とされるエンジニアに共通するスキルやスタンスをお伝えします。

