「争奪戦が激しいITエンジニア職」とその理由 AIがあってもなぜ人材不足?:企業の9割が「需要増を実感」、ITR調査
生成AIやAIエージェントにより既存業務の効率化が進む一方、ITエンジニア不足が顕著だ。ITRの調査によれば、企業における人材不足が拡大しているが、とりわけ特定の職種に関してその傾向が強い。その背景には何があるのか。
生成AIやAIエージェントの利用が広がり、ITエンジニアが担ってきた業務をAIで効率化する動きも進んでいる。その中で浮き彫りになっているのは、ITエンジニアの人材市場が飽和するというよりも、むしろ企業が依然として人材の確保に苦戦している実態だ。
ただし特定の技術職において特に人材不足が深刻になる傾向もみられる。そうした人材不足の最新の実態が見える調査結果を、IT調査会社のアイ・ティ・アール(以下、ITR)が2026年8月6日に公開した。従業員300人以上の企業を対象に、2026年5月11〜21日にオンラインで実施したもので、829件の有効回答に基づいてる。
「IT人材不足」なぜ深刻化? 特に足りないエンジニア職とその理由
ITRの調査から見えてきたのは、特定のエンジニア職に関してとりわけ人材不足の傾向が強まっていることだ。その背景には何があるのか。
調査結果を見ると、システム技術者の不足状況について「確保できていない」と回答した企業の割合は、全ての職種で3割を超えた(図1)。中でも確保が難しくなっているのが、高度な専門性を持つ人材だ。システムエンジニア(上級)は42%、コンサルタント(上級)は40%の企業が「確保できていない」と回答した。
つまり企業が直面しているIT人材不足は、単純に「技術者の数が足りない」というだけではない。特に、高度な知識やスキルを持つ人材ほど確保が難しくなっている状況だ。
企業の9割が「需要増」を実感 その背景は?
なぜそうした人材の確保が難しくなっているのか。まず挙げられるのが、企業におけるシステム技術者の需要そのものの拡大だ。
システム技術者への需要について、「非常に増加している」と回答した企業は28%、「やや増加している」は62%だった。合わせて90%の企業が需要の増加を実感している。この調査で9割に達したのは今回が初めてとのことだ。
需要増加の要因として上位に挙がったのは、「DXプロジェクトの推進」「生成AI活用など新規テクノロジーの調査・研究」「セキュリティ管理の強化」などだった(図2)。
この調査結果からは、企業が直面する人材不足が単なる「人数不足」ではまとめ切れないことも見えてくる。DXに加えて、生成AIなどの新技術への導入やセキュリティ強化など、企業が注力する取り組みにおいては、それぞれの領域に関する専門知識や、技術を実際のシステムや業務にどう適用するかを判断できる人材も必要になる。
IT人材への需要が拡大するとともに、求められるスキルも高度化する傾向があると考えられる。こうした変化が、上級のシステムエンジニアやコンサルタントといった専門性の高い人材ほど確保が難しくなっている現状として現れているとみられる。
確保しにくい高度人材、契約単価も上昇
高度な人材を巡る需給の逼迫(ひっぱく)は、契約単価にも表れている。
ITRによると、2026年度は特にコンサルタント(上級)やシステムエンジニア(上級)など、高度なスキルを持つ職種で契約単価の上昇が顕著だった。
ITRのプリンシパル・アナリスト水野慎也氏は、今回の結果について「IT人材不足は一時的な採用難ではなく、DX推進や生成AI活用の拡大を背景とした構造的な課題」と分析する。
その上で、企業には採用活動の強化だけでなく、シニア人材や地方人材、オフショア開発の活用、AIによる業務効率化などを組み合わせた「多面的な人材戦略」が求められると指摘している。
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