SUSE LINUX Professional 9.1日本語版
最大の魅力は統合管理ツール「YaST」
SUSE LINUXといえば、管理ツール「YaST」が真っ先に思い浮かぶ。YaSTはインストーラであり、パッケージ管理ツールであり、ハードや各種サーバソフトの設定・管理ツールでもある。その高い完成度は、他ディストリビューションの追随を許さないといっても過言ではない。
サーバ管理用、ディスク管理用など、単機能のツールを多数用意しているディストリビューションもある。KISSの原則(Keep it Simple, Stupid)にはかなっているかもしれないが、いちいちメニューをたどるのが面倒だ。YaSTは1つのウィンドウにほぼすべての機能を統合しているため、そうした煩わしさはない。何かをするときはYaSTを起動すればよい。
■インストールまでやってくれるサーバ管理
サーバを構築する場合は、左ペインの「ネットワークサービス」をクリックして、右ペインでサーバを選択する。選択したサーバがインストールされていない場合は、インストーラが起動するので、指示に従ってCD-ROMの挿入などを行えばよい。YaSTが自動的に処理してくれるので、パッケージを選択したりする必要は一切ない。
画面2 YaSTの「ネットワークサービス」画面(画像をクリックすると拡大表示します) |
インストール済みあるいはインストールが完了すると、そのサーバの管理画面ウィンドウが表示される。必要な項目を選択して、マウスでオプションをクリックするなりディレクトリをキー入力したりするだけで、設定作業が行える。ただし、YaSTといえども万能ではない。HTTPサーバ(Apache 2.0)の設定画面を見れば分かるとおり、Apache 2.0の機能に対してYaSTに用意されている設定項目は非常に基本的なものに限られている。
画面3 HTTPサーバの設定画面。Apach 2.0の一部の機能しか設定できない(画像をクリックすると拡大表示します) |
なお、ターミナル上でyastコマンドを実行すれば、テキスト版のYaSTも利用できる。
画面4 テキスト版のYaST(画像をクリックすると拡大表示します) |
■悩み無用のパッケージ管理
パッケージ管理機能は非常に強力だ。インストール済みパッケージについては「オンライン・アップデート」に任せておけば、最新版に自動的にアップデートしてくれる。
画面5 パッケージのアップデートはほぼ全自動(画像をクリックすると拡大表示します) |
新規インストールの際は、パッケージ名や機能、詳細情報などから必要なパッケージを検索できるほか、グループごとに分類されたツリービューからインストールするパッケージを選択することも可能だ。
画面6 YaSTのパッケージ管理画面(画像をクリックすると拡大表示します) |
ウィンドウ下部にはディスクの使用状況が表示されているので、あらかじめdfコマンドなどで調べておく必要はない。もちろん、パッケージの依存関係も自動的に処理してくれるので、「自分がやりたいこと」に集中できる。
SUSE LINUXを特徴付ける別の側面
一部の目ざといユーザーはともかく、日本におけるSUSE LINUXの普及はここから始まるといってもよい。最後に、SUSE LINUXがどのようなディストリビューションなのか、端的に表れている部分をいくつか紹介しよう。
■SUSE LINUXのディレクトリ構造
RPMを利用している点など、Red Hat的な一面を持つSUSE LINUXだが、ディレクトリ構造はRed Hat Linuxとは若干異なる。これまでRed Hat Linuxを使っていた人がSUSE LINUXに移行する場合は、まずそのディレクトリ構造に慣れなければならない。
画面7 ルートディレクトリから、いくつかのサブディレクトリに移動している様子(画像をクリックすると拡大表示します) |
もちろん、違うとはいってもUNIX系OS同士であり、Linuxディストリビューション同士である。習熟にさほど時間は必要ないだろう。
■メインはあくまでKDE
X Window Systemを使わない人にとっては関係ない話だが、使う人にとっては重要な問題だろう。ディストリビューションによって、力を入れているウィンドウマネージャ(あるいはデスクトップ環境)に違いがある。大抵のディストリビューションは複数環境のサポートをうたっているが、単にインストールできるというだけである場合が多い。
Pro 9.1は、明らかにKDEでの使用を前提とした作りになっている。試しにGNOMEに切り替えてみると、それがよく分かる。
画面8 GNOMEの画面。KDEの画面と見比べてみてほしい(画像をクリックすると拡大表示します) |
動作に支障があるわけではないし、自分でカスタマイズすることもできるので、使用上の問題はない。また、KDEとGNOME以外にWindowMakerやfvwm、twmがデフォルトでインストールされる。ほかのウィンドウマネージャも、YaSTで追加できる。
安心して使えるディストリビューション
以上、簡単にPro 9.1の特徴を紹介してきた。
短期間ながらPro 9.1を触っていて感じたことは、簡易性と安心感である。設定や管理についてはYaSTでほぼすべて賄えるため、SUSE LINUXが用意しているアプリケーションを使うだけであれば、他ディストリビューションからの移行で問題になる「お作法の違い」に悩まされることもない。
(異論はあるだろうが)Red Hat Linux/Enterprise Linuxがデファクトスタンダードになっている日本市場において、それらと十分に競合できる完成度と資本力を持ったディストリビューションが登場した。今後発売されるサーバ向けOSにも期待したい。
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