Ubuntu 7.10 日本語ローカライズド Desktop CD

〜Linuxデスクトップの可能性を感じさせる実力派〜

海外のみならず日本国内でも人気急上昇中のUbuntu。優れたインターフェイスを備えるとともに、豊富な機能がコンパクトにパッケージされており、「Linuxデスクトップも十分使用できる」という認識を持つことができるはずです。

鶴長 鎮一
2007/12/18

はじめに

 昨今、Red Hat、Fedora、SUSE、Turbolinux、Debianなど、有償、無償さまざまなLinuxディストリビューションが提供され、用途や好みに合わせ思いのままに選択することができます。教育部門や研究機関などに用意されたローカルなディストリビューションも含めれば、まさに百花繚乱(りょうらん)の様相です。毎年数多くのディストリビューションが新規に開発される一方、アップデートが滞り、製品サポートを終了するディストリビューションも少なくありません。

関連記事:
参考 業務で使うデスクトップLinuxカタログ
http://www.atmarkit.co.jp/flinux/special/ctl_dlinux/dlinux01.html

 そんな中、Debian GNU/Linuxをベースにしたディストリビューション「Ubuntu」が注目され、盛り上がりを見せています。LiveCDを使った手軽なインストールや、簡単な操作で3Dデスクトップを楽しめることに加え、海外での評判およびUbuntu Japanese Teamの活躍を受け、日本国内でも勢いが増しつつあります。

図1
画面1 Ubuntuが提供する3Dデスクトップ環境

 本稿ではUbuntu Japanese Teamによりローカライズされた「日本語ローカライズド Desktop CD」を基にUbuntu 7.10を取り上げ、解説します。

Ubuntuの位置付け

 十数年前、SunOSやSolarisといった商用UNIXでEmacsやgccなどのGNUツールを使用するには、ソースからmakeしインストールする必要があり、新たなワークステーションの導入はそれだけでも数日を要する大変な作業でした。

 ところが1990年代初頭に登場したLinuxディストリビューション「Slackware」では、X-Windowシステムの立ち上げからネットワーク接続、GNUツールのインストールといった作業を数時間で完了できるようになりました。パッケージの充実とその導入の手軽さが受け入れられ、いまのLinux普及のきっかけとなっています。

 現在では、インストールだけにとどまらず、更新や削除、パッケージの依存解決といった統合管理機能を備え、それが各Linuxディストリビューションの大きな特徴となっています。現在提供されているLinuxディストリビューションのほとんどは、表1のいずれかに大別することができます。

系統 
主なパッケージ管理方式
(またはコマンド)
代表的なディストリビューション
RPM系 RPM Red Hat、Fedora、CentOS、Turbolinux
Debian系 APT Debian、KNOPPIX、Ubuntu
Slackware系 pkgtool、installpkg、removepkg、upgradepkg
Slackware、Plamo Linux
表1 Linuxディストリビューションの大別

 Ubuntuは表1のとおり、Debian GNU/Linuxから派生したディストリビューションで、デスクトップ版ではAPTのGUIフロントエンドを使ったパッケージ操作が可能です。またインストールにはLiveCDを活用するなど、Debianには及び腰だった初心者にも受け入れられるよう、容易なインストールと使いやすさが実現されています。

関連記事:
参考 Ubuntu Linuxが注目される理由
http://www.atmarkit.co.jp/news/analysis/200710/22/ubuntu.html

 最初のリリースとなるUbuntu 4.10(※注1)が2004年10月にリリースされてから3年、その間メジャーアップデートが、1度を除き、スケジュールどおり6カ月間隔で6度実施されています。コミュニティベースのディストリビューションにありがちな計画や期限に対するルーズさはなく、アップデータの提供期間も1年半、長期サポート版(LTS)(※注2)では3年にわたって約束されるなど、無償ソフトとは思えないサポート体制が整っています。

 UbuntuはCanonical Ltd.(※注3)の支援により、コミュニティベースのディストリビューションでありながら、定期的なリリースサイクルと、迅速で長期にわたるアップデートの提供を約束しています。さらにコミュニティからのフィードバックを最大限生かした使いやすさ、手軽なインストールを実現した、たぐいまれなLinuxディストリビューションです(※注4)。

注1:Ubuntuのリリースバージョン番号には、リリースされた年と月の組み合わせが用いられます。2008年4月にリリースされる新版には8.04が付与されます

注2:Ubuntu 6.06がLTS(長期サポート)版として提供されており、デスクトップ版で3年、サーバ版で5年のサポートが保証されています。2008年4月にリリースされるUbuntu 8.04が次期LTS版として予定されています

注3:Canonical Ltd.はマーク・シャトルワース氏が創業したUbuntuの開発支援を目的とした組織です。Ubuntu黎明期には中心的な開発者を雇用するなど、体制の礎になっています。マーク・シャトルワース氏については「Ubuntu Linuxが注目される理由」を参考にしてください)

注4:Debian社会契約のように、Ubuntuの理念やプロジェクトの哲学が公開されています(http://www.ubuntu.com/community/ubuntustory/philosophy参照)

コラム Ubuntu Server
 Ubuntuデスクトップ版には、一切サーバ系アプリケーションが用意されていません。しかし、Linuxディストリビューションに、サーバを簡単に構築したいという期待を持つユーザーも多数います。そうした要望を満たすため、Ubuntuプロジェクトでは「Ubuntuサーバ版」を作成し、配布しています。

 サーバ版はデスクトップ版とは異なり、使いやすさに対する意気込みは希薄で、セキュリティ、堅牢性、データの安全性といった点を重視しています。そのためX-WindowシステムのようなGUI環境は提供されず、インストールもキャラクタベースの対話方式により行われます。

  Linuxのサーバ用途には競争相手が多く、それらを脅かすまでには多くの段階を経る必要があります。それでも、非常に強力な存在になることに期待を込めたいところです。

  なお、現在公開されているUbuntu 7.10サーバ版では、PAE対応カーネルがインストールされるため、PAEモードをサポートしないPentium MのようなCPUでは起動することができません。genericカーネルを追加インストールする必要があります。Pentium Pro以降のIntel CPUはPAEをサポートしていますが、モバイルCPUでは例外もあるため、余っているノートPCでサーバ版の試用を考えている場合には注意が必要です。

アイコン Ubuntuを使用する方法

 インストールディスクはLiveCDも兼ねており、インストールすることなくUbuntuを起動することができます。

 またハードディスクへのインストール以外にも、Ubuntu Japanese TeamからVMware/VirtualBoxで動作する仮想マシンファイルが提供されています。LiveCDではパッケージの追加やカスタマイズなど一部の機能が制限されますが、仮想マシンなら、ほぼすべての機能を利用することができます。VMware/VirtualBoxともにWindows/Linux/Mac上で動作可能です。VirtualBoxは無償で、VMwareも実行専用のPlayer(※注5)ならば無償で利用することが可能です。

注5:VMware Playerで実行する仮想マシンの構築には、通常VMware WorkstationやServer版などを利用します。なお、VMware PlayerのMac版は配布されていません。有償のVMware Fusionを利用する必要があります。ただしその場合も対応はIntel CPUを搭載したMacintoshに限られます。

関連リンク:
参考 Ubuntu Japanese Team
(日本語ローカライズド Desktop CDや仮想マシンファイルのダウンロード)
http://www.ubuntulinux.jp/
参考 VMware Playerのダウンロード
http://www.vmware.com/jp/download/player/
参考 VirtualBox
http://www.virtualbox.org/

 
1/3

Index
Ubuntu 7.10 日本語ローカライズド Desktop CD
Page 1
はじめに
Ubuntuの位置付け
 コラム Ubuntu Server
Ubuntuを使用する方法
  Page 2
Ubuntuのインストール
インストール後の注意点
デスクトップアプリケーション
  Page 3
パッケージ管理
そのほかの7.10の新機能
企業デスクトップユースとしての可能性
おわりに

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