VMware PlayerとLive CDで手軽に試せる
商用、非商用ともにメジャーバージョンアップが相次いだ2007年。主なディストリビューションを取り上げ、更新内容を紹介します。同時に、これらを手軽に仮想マシンで試す方法にも触れます。(編集局)
鶴長 鎮一
2007/12/28
リリースラッシュだった2007年
今年も多くのLinuxディストリビューションがリリースされました。例年の定期的なバージョンアップを遂行したものに加え、数年ぶりのメジャーリリースを果たしたものもあり、2007年はリリースラッシュの様相を呈しました。
数あるディストリビューションを使って、年末年始の休みに1人、Linuxインストール大会にふけるのも一興です。2007年にリリースされた主なLinuxディストリビューションを振り返ります。
■ディストリビューションの大別
ディストリビューションを利用することで、Linuxカーネルをはじめとするデスクトップ環境、サーバ環境など、豊富なアプリケーションソフトを簡単な手順でインストールすることができます。またパッケージ管理機能により、インストールにとどまらない、更新や削除、パッケージの依存解決といったことが可能になり、パッケージ管理方式が各Linuxディストリビューションの大きな特徴となっています。
現在提供されているLinuxディストリビューションのほとんどは、表1のいずれかに大別することができます。
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以下、2007年に更新された非商用ディストリビューションを取り上げ、紹介しましょう。
名称を統合し着実にアップデート「Fedora」
Fedoraは、Fedoraプロジェクトによって無料で提供されているディストリビューションです。リリースのたびにインストールメディアが雑誌の付録として取り上げられるなど、国内でも多くのユーザーを擁しています。
画面1 Fedora |
Red Hatが2003年まで無償で提供していた「Red Hat Linux」が、有償でサポートを行うRed Hat Enterprise Linuxに移行したことに伴い、Red Hatの支援を受けたFedoraプロジェクトが、無償で利用可能なコミュニティベースのディストリビューションとしてFedoraを提供しています。コミュニティによる開発を進めることで、最新の技術を積極的に取り込むことができ、その成果がRed Hat Enterprise Linuxに反映されています。
3Gbytesに及ぶインストールメディアには、フリースソフトウェア(※注1)にこだわった豊富なパッケージが収録されており、サーバ・デスクトップどちらの用途にも高い汎用性を発揮します。ほぼ半年ごとにメジャーアップデートがリリースされており、開発の勢いがうかがえます。
注1:単に無償で使用できるだけでなく、ソフト改変の自由、再配布自由などの権利が与えられていることを含めたフリーソフトウェアの意。 |
セキュリティ対応、バグ対応といったアップデータの提供は、次の次のメジャーバージョンアップがリリースされてから1カ月後まで続けられます。現在の半年間隔のメジャーバージョンアップが続いた場合、リリース後13カ月でメンテナンス期間を終了することになります。
関連リンク: | |
Fedora Project http://fedoraproject.org/ja/ |
■更新内容
2007年5月のメジャーバージョンアップで、Fedora Coreに追加パッケージを提供していたFedora Extrasが吸収され、名称も単に「Fedora」が使われるようになりました。11月にはFedora 8がリリースされ、着実に主要コンポーネントのアップデートが実施されています。ほかにもパッケージ管理ツール「yum」「Pirut」「Pup」の性能改善や仮想化環境の強化、オープンソースJava環境「IcedTea」の採用などが行われています。
用途の汎用性を高めるため、インストールメディアがCD数枚に及ぶことが定番となっていましたが、Fedora 7以降はDVD(またはそのイメージファイル)のみが提供されています。ただしLive CDも同時に提供されており、Live CD起動後、ハードディスクへのオンラインインストールが可能です。Fedoraではバージョンごとに青を基調にしたGNOMEデスクトップテーマが使用されており、Fedora 8では「Nodoka」が使用されています。
関連リンク: | |
Fedoraプロジェクト「リリースの見どころ」 http://docs.fedoraproject.org/release-notes/f8/ja/sn-OverView.html |
約3年ぶりにアップデートした「Debian GNU/Linux」
Debian GNU/Linuxは、Debian Projectが無償で提供しているディストリビューションです。基本となるシステムが最小限にまとめられているため、必要機能を構成しやすく、UbuntuやKNOPPIXのようにDebianをベースにした派生ディストリビューションが多数作成されています。
画面2 Debian GNU/Linuxのデスクトップ |
パッケージ管理システムにAPT(Advanced Package Tool)を使用しており、4.0では1万8000以上のパッケージが利用可能と、Linuxディストリビューションの中でも最多を誇っています。デスクトップ環境はデフォルトでGNOMEが使用されていますが、KDEやXfceに対応したCDも提供されています。
関連リンク: | |
Debian http://www.debian.org/ |
■更新内容
約3年ぶりにリリースされた4.0では、3.0に比べ約2000のパッケージが追加され、さらに初期インストールではGUIが利用可能になっています(注2)。日本語環境では標準文字コードがEUCからUTF-8に変更されており、マルチバイト環境が強化されています。
注2:GUI版インストーラを使用するには、ブート画面で「boot:」プロンプトで「installgui」と入力します。 |
また1枚のインストールメディアメディアで複数のCPUアーキテクチャをサポートするmulti-arch CD/DVDが採用されており、「i386/amd64/powerpc版」と「alpha/hppa/ia64版」が用意されています。パッケージ管理システムではセキュリティが改善されており、Secure APTを使用することで、ミラーサイトからダウンロードしたパッケージの正当性を評価することができます。ほかにもXFree86からX.Orgへの変更や、インストール時に論理ボリュームマネージャ(LVM)の設定や暗号化が可能になっています。
関連リンク: | |
Debian GNU/Linux 4.0 -- リリースノート http://www.debian.org/releases/etch/releasenotes |
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