Turbolinux 7 Server
中澤 勇 @IT編集局 2001/12/14 |
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2001年9月に発売されたTurbolinux 7 Workstation(以下Workstation)から3カ月、ついに発売されたサーバ向けディストリビューションが「Turbolinux 7 Server」(以下Server)である。
画面1 Serverの画面。クライアント向けアプリケーションはほとんど入っていない(画像をクリックすると拡大表示します) |
なお、ServerはWorkstationをベースに開発されただけに、多くの点がWorkstationと共通している。以前に行ったWorkstationのレビューも参照していただきたい。
サーバOSとして要求される機能
Serverで重要なのは、エンタープライズレベルに対応できるスケーラビリティである。これは、基本的にカーネル2.4の採用によって実現したものでServer独自の機能ではないが、同じくカーネル2.4を採用しているWorkstationよりもServerでこそ意味を持つ機能といえる。簡単に列挙すると、
- 最大64Gbytesのメモリをサポート
- 約4Tbytesのファイルをサポート(カーネル2.2は2Gbytesまで)
- 最大16Tbytesのファイルシステムをサポート
- 最大32 CPUのSMP(Symmetric MultiProcessor)対応
- LVM(Logical Volume Manager)によるボリューム管理
といったあたりが大規模運用時に威力を発揮するだろう。
ここまではカーネルが提供する機能だが、大規模になればなるほど運用をサポートするツールが必要になる。この点については、まずWebベースの設定ツール「Webmin」が採用されている。Red Hat Linux 7.xやそれをベースにしたMiracle Linux 2.0でも使われている定番ツールなので、知っている人も多いだろう。また、複数台のマシンに同時にServerをインストールできる「KickStart」機能も装備されている。同社のシステム導入・運用管理ソリューション「Turbolinux PowerCockpit」にも対応しているので、より大規模な運用も可能だ。
画面2 Webminを起動したところ。有名な管理ツールなので説明は不要だろう(画像をクリックすると拡大表示します) |
バンドルソフトウェアについては後であらためて紹介するが、バックアップソフトウェア「NetVault 6.5 Turbolinux Edition」(Turbolinux Server 6.5は「NetVault 6」)がバンドルされている。パーティションやファイル単位でのバックアップが可能なほか、今回から2Gbytes以上のファイルが扱えるようになった。さらに、HDDに仮想的なテープライブラリを作成してテープドライブがなくてもバックアップできる「バーチャル・ライブラリ機能」が追加されている。標準的なフォーマットであるcpioが使われているため、NetVaultが破壊されてもリストアが可能なのも魅力だ。
画面3 NetVault 6.5を起動したところ。メニューなどは日本語化されていないが、日本語ファイル名も扱える。使い方も、付属のアプリケーションガイドで丁寧に解説されている |
さらに最新バージョンへ
ディストリビューションの新バージョンで期待されるのは、ディストリビューションを構成するソフトウェアの新しさにあるといえる。そこで、使用ソフトウェアのバージョンや仕様を見てみよう。以下に示すように、Workstationからさらに進化していることが分かる。
■基本システムとサーバソフトウェア
|
Server
6.5
|
7 Server
|
最新版
|
|
Apache |
1.3.17
|
1.3.20
|
1.3.22
|
BIND |
8.2.3
|
9.1.3
|
9.2.0
|
sendmail |
8.9.3
|
8.11.6
|
8.12.1
|
ProFTPD |
1.2.1
|
1.2.1
|
1.2.4
|
Squid |
2.3.STABLE4
|
2.4.STABLE2
|
2.4.STABLE3
|
xinetd |
-
|
2.3.3
|
-
|
iptables |
-
|
1.2.2
|
1.2.4
|
Samba |
2.0.7
|
2.2.1a
|
2.2.2
|
PostgreSQL |
7.0.2
|
7.1.2
|
7.1.3
|
MySQL |
3.23.33
|
3.23.39
|
3.23.46
|
OpenSSH |
2.3.0p1
|
2.9p2
|
3.0.2
|
表2 主要サーバソフトウェアのバージョン Sever 6.5:Turbolinux Server 6.5 7 Server:Turbolinux 7 Server *2001年12月12日時点(安定版のみ) |
■標準仕様への対応
Workstationのレビューでは、WorkstationがFHS 2.1準拠であるとお伝えした。Serverではこれが2.2(2001年12月現在の最新版)準拠にアップしている。これで、ディレクトリ構造が標準仕様に追い付いたことになる(注)。
注:ちなみに、FHS 2.3についての議論もすでに開始されており、2002年には策定される予定。すると、次はFHS 2.3準拠のディストリビューションを作らねばならないことになる。わずかな変更とはいえ、ディレクトリ構造を定める仕様がそんなにコロコロ変わってよいものだろうかという気がしないでもない。 |
もう1つ、Serverで標準規格準拠がうたわれているのがLI18NUX(注)だ。正確には「LI18NUX 2000国際化規約Basic Level」に準拠しているとパッケージやマニュアル、プレスリリースに記載されている。
ただし、「LI18NUX 2000国際化規約Basic Level準拠」には注意が必要だ。マニュアルには、「正式準拠しています」としながらも、そのためには「『LI18NUX2000パッチキット』をインストールする必要がある」と書かれている。ここまではよいのだが、次に「インストール後におけるTurbolinux 7 Serverの動作を保証するものではありません」とあるのは疑問を感じる。動作保証できないものを取り上げて「準拠」をアピールするのはいかがなものだろうか。
注:LI18NUX(Linux Internationalization Initiative)はFree Standards Groupの国際化ワークグループで、プログラムの国際化に必要なロケール、コードセット、ライブラリ、入力メソッドなどを標準化している。 |
■バンドルソフトウェアはサーバに特化
Serverには、2枚のCompanion CDに多くのバンドルソフトウェアが収録されている。リコーのTrueTypeフォント5書体はServerにも付属するため、Workstationと同様に美しいフォントを利用できる。
ただし、WorkstationにバンドルされていたATOK Xは付属していない。代わりに、先に紹介した「NetVault 6.5 Turbolinux Edition」やRealVideo/Audioストリーミングサーバ「RealSystem Server Basic 8.0.1」、RealVideo/Audio作成ツール「RealSystem Producer Basic」、経路検索ソフト「駅すぱあと イントラネット」などが収録されている。いずれも体験版ではなく製品版だ。このように、バンドルソフトウェアはWorkstationと明らかに異なる選択基準で選ばれていることが分かる。
Workstationとの違い
初めに「多くはWorkstationと共通」としてWorkstationのレビューも参照するように書いたが、若干異なる部分もある。そこで、最後にWorkstationのレビューでServerに適用できない点を補足しておく。
パッケージ構成(CD枚数やマニュアル数)はほぼ同じだが、ServerではDisk 1、2がInstall CD、Disk 3、4がSource CD、Disk 5、6がCompanion CDとなっている。マニュアルは当然ながらServer用に作り直されており、ユーザーガイドはサーバアプリケーションやWebminの解説で占められている。丁寧な作りで好感が持てる仕上がりであることを付け加えておきたい。
また、Workstationのレビューではパッケージ管理がturbopkgだけでは少々不満であるとしたが、ServerにはGUIベースのパッケージ管理ツール(KPackage)が用意された。
画面4 Workstationにもあるturbopkg(Zabom)と、Serverから追加されたKPackage(画像をクリックすると拡大表示します) |
KonquerorでRPMファイルをダウンロードしようとすると、KPackageが起動してそのままインストール作業に移行するなど、なかなか使い勝手がよい(注)。状況や目的によってツールを使い分けられるようになり、この点での不満は解消されている。
注:KPackageはKDEプロジェクトの成果物の1つ。 |
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