Linux Square
第7回 読者調査結果発表

〜 業務システムへのLinux採用状況は? 〜

小柴豊
@IT マーケティングサービス担当
2002/8/17

 ここ数年のオープンソース・ムーブメントの結果、Linuxはいまや組み込み系から汎用機まで、ほぼあらゆるシステム上で稼働可能なプラットフォームに成長した。しかし、“稼働可能”であることと、実際に“稼働している”ことの違いが大きいのはいうまでもない。果たして、Linuxは実際の業務システムの中にどの程度浸透しているのだろうか? Linux Squareフォーラムが実施した第7回 読者調査の結果から、その現状を報告する。

読者の6割が業務システムにLinuxを採用

 まず読者のかかわる業務システムの現状を尋ねたところ、「ほぼすべてのシステムにLinuxを採用している」および「システム要件に応じてLinuxやほかのプラットフォームを採用している」を合わせたLinux採用率は、全体の約6割となった(図1)。また、「現在はLinuxを採用していないが、今後採用したい」という回答も25%に達していることから、今後も業務システムへのLinux導入は広がっていくと思われる。

図1 業務システムへのLinux採用状況(N=425)

 ところで、“業務システムに採用される”といっても、その内容や規模の大小によって業界にもたらすインパクトは変わってくる。そこで、Linuxの採用がどのような様子で進んでいるのか、読者の実感を尋ねてみた(図2)。

図2 Linux業務システムの進展方向(N=425)

 結果を見ると、Linuxの用途としては昔ながらの「Web/メール/ファイルサーバなどの利用にとどまっている」と感じている人が全体の4割強となる一方、「Windows NTで構築していたような小規模業務システムでの採用が進んでいる」「商用UNIXで構築していたような中規模業務システムでの採用が進んでいる」という回答も合計で4割となった。Linuxはインターネットサーバ分野を土台としながら、徐々に既存プラットフォームの分野に進出しつつあるようだ。

成長が見込まれるLinux業務システム内容とは

 次に業務システムの具体的な内容について、読者のかかわるシステムで“今後1年以内に構築/増強が見込まれるもの”、およびそれらのうち“プラットフォームとしてLinuxが採用される見込みのもの”がどうなっているのか、チェックしてみよう(図3)。

図3 今後増強する業務システム分野とLinux適用率(N=425)

 まず、業務システム全体では「オンラインショップなどのWebシステム」「基幹系システムとWeb系/情報系システムの統合」「ナレッジマネジメント/グループウェア」の3分野で、今後1年以内の構築/増強意向が高くなっている。また、Linux採用見込み度についても、同じ3分野のポイントが上位を占めた。商取引のチャネルとしてWebの活用が進む現在、Web系/基幹系のシステム統合は必然的な流れといえるだろう。LinuxはもともとフロントエンドのWebシステム構築を得意としてきたが、今後はフロントとバックエンド(基幹系)を結ぶミドル層においても、活用機会が増えていきそうだ。

業務システムへのLinux採用を阻むもの

 図3を見ていると、すべての業務システムでLinuxの採用意向が高いわけではないことも分かる。業務システム案件でLinuxが不採用になる理由を聞いたところ、「SIerや社内でLinuxシステムを構築/運用できる人材が不足している」「システム構築後のサポート体制が不安」といった課題が上位に挙げられた(図4)。今後Linux業務システムの導入を進めるためには、エンジニアのLinuxスキル向上/オープンソース・ソフトウェアのサポート体制確立といった環境整備が欠かせないだろう。

図4 業務システムへのLinux不採用理由(N=425)

業務システム用Linuxサーバの要件は

 後半では、業務システム用のLinuxサーバ選定/導入状況に関するデータを紹介していこう。

 まず業務用Linuxサーバを導入する際、見積もりを取ってよく比較するメーカー/ショップを聞いた結果、「デルコンピュータ」「日本アイ・ビー・エム」「コンパックコンピュータ」がトップ3となった(図5)。デルは国内IAサーバ市場で高い成長を続けているが、Linux分野においてもその存在感を高めているようだ。

図5 Linuxサーバ導入時の比較メーカー(N=425)

 業務用Linuxサーバを選定する際に読者が重視している点を聞いたところ、「Linuxの動作検証が確実/汎用性の高い部品構成であること」を筆頭に、「連続稼働時のハードウェア/部品の信頼性・安定性」「導入後のサポート体制がしっかりしていること」などのポイントが高くなった(図6)。2位以下はサーバ製品としてプラットフォームを問わず重要な項目が並んでいるが、トップの「動作検証」については、Linuxサーバならではの要件といえそうだ。

図6 業務システム用Linuxサーバ選定時の重視点(N=425)

 最後に、業務用Linuxサーバ導入時に読者が利用したい信頼性/可用性向上策について見ておこう。図7で分かるとおり、「サーバのRAID構成」「バックアップ/リカバリシステム」「UPS(無停電電源装置)」の3点については、もはや必須構成となっているようだ。一方でサーバの性能/処理能力向上面で見ると、IA-64搭載機やオフコン/メインフレーム機といった単体で性能を強化する方向よりは、「複数マシンによるクラスタリング(フェイルオーバー/負荷分散)」を選ぶ傾向が現在は強いようだ。

図7 業務用Linuxサーバ導入時の信頼性/可用性向上策(N=425)

調査概要

調査概要
調査方法
Linux SquareフォーラムからリンクしたWebアンケート
調査期間
2002年6月17日〜7月19日
有効回答数
425件

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