Linux Square
第12回 読者調査結果発表
〜 オープンソース採用のメリット/デメリットとは? 〜
小柴豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/6/1
情報システムへのオープンソース・ソフトウェア(以下OSS)採用は、ここ1年で地方自治体などにも急速に広まっているという(@ITNews「お役所仕事とLinuxのフシギな関係、HDE」)。では、OSSシステムに取り組むエンジニアは、OSSの活用に現在どのようなメリット/課題を感じているのだろうか? Linux Squareが実施した第12回読者調査の結果から、その状況をレポートしよう。
OSSの活用状況は?
初めに読者のかかわる情報システムにおける、OSSの活用状況を聞いた結果が図1だ。
図1 OSSの活用状況(全体 n=795) |
回答者全体の過半数となる56%が「現在OSSを活用している」ほか、「2004年度中に活用予定がある」「活用に向けて評価/検証している」といった予定・検討者層も、併せて24%に上っている。情報システムにおけるOSSの活用は、今後も着実に進んでいく見込みだ。
OSS導入システムの種類は?
続いてOSS導入システムの種類を尋ねたところ、「自社の情報系システム」がトップとなり、僅差で「顧客の情報系システム」が続いている(図2)。
図2 OSS導入システムの種類(OSS活用者/予定・検討者 n=638) |
OSSはインターネットサーバ分野から利用が進んだ経緯もあり、イントラネットなどの情報系で数多く利用されるのは自然な流れだろう。また、情報系以外にも、自社+顧客の基幹/業務系システムへの適用率が計31%に上っている点からは、OSS活用が企業の中枢分野にも進んでいる様子がうかがえる。
OSSシステムの構成は?
では読者がシステムにOSSを活用する場合、商用ソフトウェアとのバランスをどう取っているのだろうか? OSS活用者/予定・検討者にそのシステム構成を聞いた結果、「Linux+Apache+PostgreSQLなど、すべてOSSだけで構築している」のは、該当者の38%であった(図3)。
図3 OSS活用システムの構成(OSS活用者/予定・検討者 n=638) |
全体的には、「LinuxなどのオープンソースOS上で、Oracleなどの商用ソフトも利用」(36%)、「商用UNIXやWindows上で、PostgreSQLなどのOSSを利用」(25%)といった“OSS+商用ソフト併用派”が過半数を占めている。
ちなみに、この結果を図2のシステム用途別に分析すると、“自社の情報系”システムは「すべてOSS」で構築される比率が5割を超える一方、“顧客の基幹系”システムでは商用ソフト併用率が約8割に達していることが分かった。OSSを利用したシステムも、用途/要件に応じた構成の多様化が進んでいるようだ。
OSS採用の目的とは?
次に、読者がOSSを採用する理由/目的を聞いた結果が図4だ。やはりというべきか、OSS活用者/予定・検討者の76%もが「システム構築コストが削減できる」点を挙げており、“コスト・メリット”がOSS採用の最大のトリガであることが確認された。
図4 OSSの採用理由/目的(OSS活用者/予定・検討者 n=638) |
しかし、単にコストが安いだけでは、基幹系などのクリティカルなシステムにOSSが採用されることはないだろう。その意味で、「OSSの機能/性能が、システム要件を満たしている」「OSSでも信頼性/可用性の高いシステムが構築できる」といった項目が、コスト要因に次いで上位に挙げられた点が注目される。最近では、OSSと商用ソフトをTCOの観点から比較する情報が増えているが、その選択をコスト面だけで語る時期はそろそろ終わろうとしているのかもしれない。
OSSの採用効果は?
実際、システムにOSSを採用した読者は、上記目的(=期待)をどの程度実現できたと感じているのだろうか? OSS活用者にその効果を尋ねたところ、該当者の82%が「期待どおりの効果はあった」と答えており、OSS活用に関する満足度水準の高さを示している(図5)。
図5 OSS採用効果の実現度(OSS活用者 n=446) |
OSS採用の課題とは?
今回の調査では、OSS採用のメリット/デメリットについて、読者の体験に基づくコメントをもらっている。ここでその中から、特徴的な意見を紹介しよう。まずOSS採用のメリットについては、
- 何といっても、サーバ構築にかかるコストをハードウェアだけに集約できた
- ニーズに合った安定した(必要ないものを一切含まない)システムが構築できた。OSSだからここまでコントロールできた
など、図4で見たOSSのコスト・メリットや信頼性について、実際に裏付ける意見を聞くことができた。しかしその半面、
- 導入コストは削減できたが、逆に情報収集などに負荷がかかり、総合的に見ると商用ソフトとあまり大差がなかった
- 運用に手間、コストがかかる。問題が発生した場合にLinuxの問題なのか、ハードなのか、そのほかのソフトなのか切り分けに時間がかかる
など、情報収集や運用面における課題を訴える声も多く寄せられた。確かにOSSの採用には“自己責任”的な側面が強いため、状況によっては、
- 社内の技術力がないとお勧めできないように思うが、上司は「低コストだから」という理由だけで採用しようとしているのがちょっと怖い
といった懸念を感じるのも無理はない。最終的にはエンジニアのスキル向上がその解決策となるだろうが、短期的には、
- トラブル時に情報を得やすいことが一番。単にOSSである/高機能であるだけでなく、デファクトに近いかどうか(開発が活発か/利用者が多いか)が大きなポイント
といった観点から、利用OSSを選択するのも有効だろう。
Linuxディストリビューションの利用状況は?
最後に、当調査で聞いた最新のLinuxディストリビューション利用状況を見ておこう。現在は「Red Hat Linux」(RHL)の利用率が、OSS活用者/予定・検討者の54%に達している(図6青色)。しかし、今後の利用予定を見ると「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)がトップに挙げられ、以下RHL、「Fedora Core」と続く結果となった(図6オレンジ)。
図6 Linuxディストリビューション利用状況(OSS活用者/予定・検討者 n=638) |
現在ダントツのシェアを持つRHLは、最終バージョン“9”のアップデート提供期間が2004年4月をもって終了した。既存ユーザーはそろそろ“ポストRHL”を検討していると思うが、コミュニティベースのFedoraより企業向けサポートに重点を置いたRHELのポイントが高くなったことからも、業務システムOSとして安定運用を求められる現在のLinuxのポジションがうかがえる。
調査概要 | |
調査方法
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Linux SquareフォーラムからリンクしたWebアンケート |
調査期間
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2004年3月1日〜3月26日 |
有効回答数
|
795件 |
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