特集:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ(前編)
今週にも公開、どうなる!WiMAX規格



2006/11/14
高橋利臣
ノーテルネットワークス

 すでに、動画ストリーミングのできる韓国WiBro

 韓国では、すでに、WiMAX機器を用いてWiBroというサービスが6月30日に開始されており、移動しながら高速なインターネットアクセスを行うことが可能な環境にある。

 WiBroという言葉は、「Wireless Broadband」の略名で、当初は、韓国で独自に拡張された次世代無線通信技術であったが、現在では、WiBroシステムの要求事項はWiMAX Forumで定義されているプロファイルの一部として位置付けられている。

 現在は、KTとSK Telecomの2社がWiBroサービスを展開しており、当初はソウル市内を中心にサービスを提供して, 以後、ソウル全地域および近隣首都圏へ拡大する見込みである。

 価格体系については、プロモーション期間中とはいえ、ブロードバンド通信が定額制でしかも安い値段で利用できることは、従来の携帯電話システムでは実現しづらい大きな特長といえる。(参照記事:SKT陣営とKT陣営が激突──WiBroとHSDPAを巡る争い:2006/7/10

 実際には、加入者が付くのはこれからといった状況であるが、ハンドオーバやアプリケーションの使用感はスムーズで、従来のメール、音声通信以外に、プッシュ型配信サービスや、高速なインターネット環境を利用した放送型の動画ストリーミングなどが利用可能である。

 加入者端末としては、現在PCMCIAカードが提供されているが、来年以降は、ハンドセットタイプのものなど多種多様な端末が市場に出回るものと思われる。

 カナダ・台湾・米国のWiMAX事例

 世界のほかの地域では、WiMAXはどのように展開されているのだろうか。

カナダ・アルバータ州特別地区局(SAB)―農村部におけるデジタルデバイドの解消

 SABは、カナダの新興ワイヤレス・サービスプロバイダであるNETAGO Wireless社と協力し、アルバータ州南東部に広がる約8000平方マイル(2万1000平方キロ)の農村部に、WiMAX機器を用いてワイヤレス・ブロードバンド・サービスを提供。

 同プロジェクトにおいて、アルバータ州内にある429のコミュニティを支える政府機関、保健機関、図書館、教育施設など約4200の施設に適した価格でブロードバンド・サービスを提供し、デジタルデバイドの是正を図っている。WiMAXシステムが固定無線アクセスシステムの一翼を担うことが見て取れる(リリース:2005/12/5)。

台湾・国立台湾大学−大学構内におけるポータブルWiMAXソリューション

 国立台湾大学のWiMAX実験施設では、 PDAやラップトップ・コンピュータ、Wi-Fi端末、WiMAXの加入者宅内機器を使用して、VoIP、ビデオ・ストリーミング、監視カメラ、 WiMAX/WLANから3Gネットワークへのハンドオーバといった多様な広帯域幅マルチ・メディア・アプリケーションの実地試験とデモンストレーションを行っている(リリース:2006/5/23)。

米国・スプリント・ネクステル−第4世代ワイヤレスネットワークとしてモバイルWiMAXを採用

 次世代のブロードバンド・ワイヤレスネットワークの構築にモバイルWiMAX技術を利用することを発表した。

 2.5GHzの周波数帯を使用し、アメリカ内の主要地域の85%をカバーする見込み。2007年に10億ドル、2008年に15〜20億ドルの設備投資を予定しており、2008年中に1億人がサービスを利用できる環境を構築する計画を発表した(参照記事:Sprint Nextel、4Gワイヤレスネットワーク構築でIntel、Motorola、Samsungと提携:2006/8/16)。

 今後、数年の間にWiMAXの商用網が全世界的に展開されていくものと見込まれている。

 あらゆるビジネスチャンスを阻害しないWiMAX規格を

 WiMAXは、規格団体、チップベンダ、基地局ベンダ、システム・インテグレーター、ソフトウェア開発ベンダ、業界団体など、さまざまな企業・団体が開発・生産・認証にかかわることで、エコシステム環境が構築されている。都市部・郊外でのモバイル環境におけるワイヤレスブロードバンドアクセス手段の提供、また、FTTHやDSLが届いていないブロードバンド・ゼロ地域におけるブロードバンドアクセス手段の提供などのさまざまな場所での利用が期待される。

 また、オールIPのアーキテクチャということで、既存のIP系のアプリケーションとの親和性が高く、従来の携帯電話型の端末だけでなく、PCへの埋め込み型、PDA、車載端末、音楽プレーヤなど、さまざまなデバイスでのサービス利用が見込まれる。

 日本においては、現在検討中の技術条件、そして免許の割り当て次第で、どのようなサービスが展開されるか不透明な点が多いが、期待されているあらゆるビジネスチャンスを阻害しない環境が整うことを希望する。


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後編は公布後の企画案をチェック予定
目次:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ
  <page1> 今年こそ、ワイヤレス・ブロードバンド元年!?/今週中にも公開か、総務省のWiMAX技術条件案/続々実施される事業者によるトライアル
  <page2> 総務省の描くWiMAX利用シーンの将来像
  <page3> All IPベースのWiMAX、どう使われる?/IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの動向
<page4> すでに、動画ストリーミングのできる韓国WiBro/カナダ・台湾・米国のWiMAX事例/あらゆるビジネスチャンスを阻害しないWiMAX規格を

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