特集:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ(前編)
今週にも公開、どうなる!WiMAX規格



2006/11/14
高橋利臣
ノーテルネットワークス

 All IPベースのWiMAX、どう使われる?

 その中でも、ワイヤレス・ブロードバンドシステムとして位置付けられるWiMAXは、All IPベースのアーキテクチャである。そのため、都市部などブロードバンドの需要の大きいエリアで大容量のコンテンツを安価に提供することができる技術として注目されている。

 第3世代携帯電話のシステムを補完するシステム、固定通信と融合して新たなノマディックサービスを提供可能な技術として位置付けられている。また、物理的に有線のブロードバンドが提供できない地域、需要不足や整備コストの高い地域においても、ブロードバンド環境を提供する手段として期待される。

図6 WiMax利用の進化予想 2007年にはPDA、スマートフォン、カーナビなどで利用されると見られている

 実際に、韓国では、都市部においてすでにモバイルのサービスが展開されており、一方、その他諸外国では固定無線アクセスとしてもWiMAXが利用されている。

 IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの動向

 標準規格に目を向けていくと、IEEE 802.16とWiMAXフォーラムにおいて、さまざまな仕様が議論され規格化されている。

 IEEE 802.16では、無線MAN (Metropolitan Area Network)におけるBWA(Broadband Wireless Access)技術の標準化を行っていて、具体的には、物理層とMAC層(OSI参照モデルにおけるレイヤ1と2)のプロトコルの標準化の策定を行っている。

 物理層では、変調方式やOFDMのサブキャリア配置、出力制御などの方法が規定されている。MAC層では、誤り検出方法やハンドオーバー、QoSなどが規定されている。その上位レイヤに関する規定は、WiMAX Forumで作業が行われている。

 現在では、802.16-2004(固定無線アクセスシステム)、802.16e-2005(固定&移動無線アクセスシステム)などが標準化されていて、今後、802.16h(非ライセンスバンドにおける共用のための仕様)や802.16j(マルチホップリレーシステム)の標準化が行われていく見込みである。

 一方、WiMAXフォーラムでは、802.16にて標準化された規格に基づく機器の相互接続性や仕様適合性を認証したり、ネットワークアーキテクチャやセキュリティなどの上位レイヤの規格化を行っている。

 WiMAXフォーラムではさまざまな検討が行われており、組織としては、以下の表のとおり8つのワーキンググループで構成されている。

ワーキンググループ

活動内容

サービスプロバイダWG(SPWG)

WiMAXネットワークに対する要求仕様の検討を行う

アプリケーションWG(AWG)

WiMAXネットワークでの利用が期待されるアプリケーションやネットワーク側への要求仕様を検討する。このWGの中には、アーキテクチャを検討するApplication Architecture TG (AATG)と、実用性を検討するApplication Business TG (ABTG)の2つのTask Groupが存在する

ネットワークWG(NWG)

SPWGの要求仕様を基に、エンドツーエンドでのWiMAXネットワークアーキテクチャの仕様の検討を行う

テクニカルWG(TWG)

WiMAXシステムの周波数帯や帯域幅などを含んだシステムプロファイルの規定を行う。このWGの中には、OFDMAベースのモビリティ用途を前提としたシステムを検討するMTGと、OFDMベースのポータブル・固定用途を前提したシステムを検討するETGの2つのTask Groupが存在し、今後、2つのTGがWGとして活動していく方向が示されている

サーティフィケーションWG(CWG)

WiMAX機器の認証方法やテストベッドの構築の検討を行う

レギュラトリーWG(RWG)

各国の周波数事情を勘案し、レギュレーションや標準化団体との調整を行う。

マーケティングWG(MWG)

WiMAXの広報活動を行い、イベントなどの調整を行う

グローバルローミングWG(GRWG)

グローバルローミングを行う際に必要な仕様やビジネスモデルなどについて検討を行う

表1 WiMAXフォーラムの8つのワーキンググループ 出典: WiMAXフォーラムより

  WiMAXフォーラムでは、プロファイルという形で周波数帯・周波数幅・複信方式などを規定し、認証や相互接続の試験を推進している。すでに、各国の規制等を勘案し、用途ごとに規定されたプロファイルや審議中のプロファイルが存在する。

 固定用途では、3.5GHz帯や5.8GHz帯の周波数帯で計5種類のプロファイルが定義されている。

名称

周波数帯(GHz)

周波数幅(MHz)

複信方式

5.8T

5.8

10

TDD

3.5T1

3.5

7

TDD

3.5T2

3.5

3.5

TDD

3.5F1

3.5

7

FDD

3.5F2

3.5

3.5

FDD

表2 固定WiMAXの5つの周波数帯 出典: WiMAXフォーラムより

 また、固定だけでなくノマディックやポータブルといった用途向けに、ETGという計8個のプロファイルが検討されている。まずは、日本でも登録制度の下で開放されている4.9GHz帯(ETG8)のプロファイルについて、いち早く認証が行われていく模様である。

名称

周波数帯(GHz)

周波数幅(MHz)

複信方式

ETG1

3.4‐3.8

3.5

TDD

ETG2

3.4‐3.8

3.5

FDD

ETG3

3.4‐3.8

5.0

TDD

ETG4

3.4‐3.8

7.0

TDD

ETG5

3.4‐3.8

7.0

FDD

ETG6

3.4‐3.8

10.0

TDD

ETG7

2.305‐2.320、 2.345‐2.360

3 / 3.5

TDD

ETG8

4.935‐4.990

5

TDD

表3 ポータブルWiMAXの8つの周波数帯 出典: WiMAXフォーラムより

 さらに、モバイル用途においては、2.3GHz帯、2.5GHz帯、3.5GHz帯の周波数帯において計12個のプロファイルが定義されており、需要の多いプロファイルから認定が行われようとしている。

名称

周波数帯(GHz)

周波数幅(MHz)

複信方式

1A

2.3‐2.4

8.75

TDD

1B

2.3‐2.4

5 / 10

TDD

2B

2.305‐2.320、 2.345‐2.360

5

TDD

2C

2.305‐2.320、 2.345-2.360

10

TDD

3A

2.496‐2.69

5 / 10

TDD

4A

3.3‐3.4

5

TDD

4B

3.3‐3.4

7

TDD

5A

3.4‐3.8

5

TDD

5AL

3.4‐3.6

5

TDD

5BL

3.4‐3.6

7

TDD

5C

3.4‐3.8

10

TDD

5CL

3.4‐3.6

10

TDD

表4 モバイルWiMAXの12の周波数帯 出典: WiMAXフォーラムより

 このようなプロファイルを規定することで、機器認証の簡便さや相互接続性の向上が期待される。


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目次:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ
  <page1> 今年こそ、ワイヤレス・ブロードバンド元年!?/今週中にも公開か、総務省のWiMAX技術条件案/続々実施される事業者によるトライアル
  <page2> 総務省の描くWiMAX利用シーンの将来像
<page3> All IPベースのWiMAX、どう使われる?/IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの動向
  <page4> すでに、動画ストリーミングのできる韓国WiBro/カナダ・台湾・米国のWiMAX事例/あらゆるビジネスチャンスを阻害しないWiMAX規格を

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