特集:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ(前編)
今週にも公開、どうなる!WiMAX規格



2006/11/14
高橋利臣
ノーテルネットワークス


 総務省の描くWiMAX利用シーンの将来像

 総務省と事業者の動向を早足で動向をお伝えした。ここで、期待されるワイヤレス・ブロードバンドシステムの用途についてまとめておきたい。2005年末に、総務省の調査研究会『ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会』において、さまざまな利用シーンが議論された。

 まず、1つ目は次世代移動通信システムだ。ユーザーが場所を意識することなくどこでもアクセスできるワイヤレス環境を実現する。携帯電話網のシステム側では、800MHz帯、1.5/1.7/2.0/2.5GHz帯の周波数の第3世代や、3.4〜4.2GHz帯、4.4〜4.9GHz帯の周波数の第4世代の通信網が実現されると想定されている。4Gでは、移動時に100Mbpsの通信速度を実現する。

図1 次世代移動通信システム 出典:総務省ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会最終報告書

 第2の利用シーンはモバイルオフィス、モバイルホームでの次世代移動通信システムである。必要に応じてインターネットが常時接続が可能となる無線通信とされ、携帯電話や無線LANなどと組み合わせての利用例が考えられている。

 システム側には、IP常時接続を実現する広帯域移動無線アクセスとして、WiMAX=IEEE16eや、次世代PHSなどが想定されている。周波数帯は2.5GHz帯が当てられる予定である。

図2 モバイルオフィス・モバイルホーム 出典:総務省ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会最終報告書

 3つめの利用シーンは、有線ブロードバンドの代替システムである。有線での条件不利地域の通信回線を安価に確立するための無線通信で、ブロードバンドが行き渡らない地域へのコストを抑えた敷設ができるようになる。

 システム的には、見通しのできない範囲にも通信できる手段として、FWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)が考えられている。WiMAX(802.16-2004)、iBurst、高度化DS-CDMAなどである。周波数帯には、移動通信システム用周波数の地域利用として、1.5/2.5GHz帯と登録制度の帯域として4.9〜5.0GHz帯などが相当するだろうと議論されている。

図3 有線ブロードバンド代替システム 出典:総務省ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会最終報告書

 第4の利用ケースは、次世代情報家電、いわゆるホームネットワークである。有線よりも容易に接続できる近距離無線通信として期待されている。システム的には、次世代情報家電がワイヤレスデバイスとなり、無線LANと共用でき、高度化したWiFiとして、5GHzの帯域網が想定されている。

図4 PLCモデムを利用したホームネットワーク構成 出典:総務省ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会最終報告書

 最後の利用シーンは、高度道路交通システム(ITS)である。瞬時にアドホック的な無線通信網が構築できるワイヤレス通信だ。それには、交通事故を削減するための高度化したITSと、見通しの悪い交差点などで車同士の通信が行えるVHF/UHF帯、信号機などから道路状況を伝える路車間通信として5.8GHz帯、通行人、ベビーカーを見分けるミリ波レーダーとして78〜81GHz帯が想定されている。

図5 安全・安心ITS 出典:総務省ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会最終報告書

 このように、ユーザーがいつでもどこでも移動中でも利用できるサービスであったり、デジタルデバイド地域における有線ブロードバンドの代替システムとしてであったり、宅内の限定的なエリアでの家電間の通信システムとしてであったり、さまざまな用途が期待されている。


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目次:総務省が公表するWiMAX規格のチェックどころ
  <page1> 今年こそ、ワイヤレス・ブロードバンド元年!?/今週中にも公開か、総務省のWiMAX技術条件案/続々実施される事業者によるトライアル
<page2> 総務省の描くWiMAX利用シーンの将来像
  <page3> All IPベースのWiMAX、どう使われる?/IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの動向
  <page4> すでに、動画ストリーミングのできる韓国WiBro/カナダ・台湾・米国のWiMAX事例/あらゆるビジネスチャンスを阻害しないWiMAX規格を

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