スペック一覧表

Crusoe搭載ノートPC


デジタルアドバンテージ
2000/11/14

 
カシオ計算機が公開したCrusoe搭載の「CASSIOPEIA FIVA」の試作機

 ノートPC向けの低消費電力プロセッサとして、発表以来話題となっているTransmeta社のCPU「Crusoe」を搭載したノートPCが、ソニー、富士通、日本電気、日立製作所の4社から販売開始となり、量販店の店頭では展示品が多くの人の注目を集めている。また、カシオ計算機もCOMDEX FALL 2000でCrusoe搭載の「CASSIOPEIA FIVA」の試作機を公開すると発表し、開発表明を行った(カシオ計算機のニュース・リリース)。このように各社がCrusoe搭載ノートPCを次々とリリースする一方で、Crusoe搭載ノートPCの開発を表明していたIBMが、同社のノートPC戦略に合致しない、という理由からCrusoe搭載ノートPCの開発を中止したというニュースも伝わってきている。Crusoeは、「低消費電力性を重視する」という、これまでにないアプローチを採用したため、市場でどのような評価を受けるのか予想するのが難しいという点が、IBMの採用を見送らせた原因だろう。同様にCompaqもCrusoe搭載ノートPCの開発を中止したのではという噂が流れた(そもそもCompaqはCrusoeをノートPCに採用するという正式な発表は行っていない)が、この噂についてCompaq側は「開発の中止は決定していない」というコメントを発表したようだ。一部ではアジア向けのノートPCにCrusoe搭載ノートPCを開発中とも言われており、Compaqの動きは不透明である。

 実際に国内外のメディアでも、賛否が分かれている。評価点としては、消費電力や発熱量が少ないことから、新しい形態のノートPCが実現可能であるということ。一方では、性能面で不安視する声も聞かれる。筆者が、WORLD PC EXPO 2000で展示されていた日本電気のLaVie MXと富士通のFMV-BIBLO LOOXを触った感じでは、やはり新しい処理を行うときにもたつく印象を受けた(Microsoft Word 2000での入力作業をしばらく行った後に、スタート・メニューを開くときなど)。このような点がユーザーにどのように評価されるのか、今後の市場動向を見守りたい。

 ただ、全般的に2000年冬モデルとして販売となったCrusoe搭載ノートPCは、同クラスのものに比べて、若干安価な価格設定が行われている。特に富士通のFMV-BIBLO LOOX Sシリーズは、実売価格で15万円前後となっている。重量も軽く、長時間のバッテリ駆動が可能なことから、ノートPCを持ち歩くことが多い人にとっては悪くない選択といえるだろう。ここでは2000年11月現在、販売中あるいは販売を予定している各社のCrusoe搭載ノートPCの仕様を一覧にした*1。購入時の参考にしていただきたい。なお、価格は11月10日現在のものであり、実売価格は編集部の調査による。

*1 掲載している全ノートPCの仕様を同時に比較できるスペック表を用意しました。

Crusoe搭載ノートPCスペック表: spec_crusoe_notepc.zip (約14Kbytes)

 ZIP形式で圧縮されているので、解凍してご利用下さい。閲覧にはMicrosoft Excel 97/2000以降が必要です。

  ソニー 
バイオC1 PCG-C1VJ/BP  ソニーのCrusoe搭載ノートPCは、CCDカメラ(モーション・アイ)を付属したことで話題となったバイオC1シリーズをモデル・チェンジした「バイオC1 PCG-C1VJ」と、PCとデジタル・ビデオを融合した「バイオGT PCG-GT1」の2シリーズをラインアップする。
 バイオC1の
解像度1024X480ドットの横長液晶ディスプレイやCCDカメラの搭載といった特徴は、前モデルと同様である。Crusoeの採用により、オプションのバッテリーパック(LLL)で約20時間と、従来機種の2倍以上のバッテリ駆動が可能になっている。また、このモデルよりマジックゲート メモリースティックに対応している点も新しい。現在のところ、Crusoe搭載ノートPCとしては、富士通のFMV-BIBLO LOOX Sシリーズと並んで最軽量の部類に入る。主に個人ユーザーがターゲットのマシンだが、軽量で長時間のバッテリ駆動が可能なノートPCを望むビジネス・ユーザーも検討に値するだろう。なお、バイオC1にはCD-ROMドライブとMicrosoft Office 2000 PersonalをセットにしたPCG-C1VJ/BPと、それを省いたPCG-C1VJの2モデルがある。
 バイオGTは、バイオC1のモーション・アイ機能をさらに追及し、高画質のデジタル・ビデオとして利用可能としたもの。ソニーらしい、新しいモバイルPCの提案だ。液晶ディスプレイを180度回転させて、ビデオ・カメラのようなスタイルで撮影することが可能。 液晶ディスプレイは、6.4型と小型ながら、XGA表示が可能である。実用面では若干疑問が残るが、遊び心あふれたノートPCといえるだろう。
バイオGT PCG-GT1
 
  日本電気 
LaVie MX/LaVie Gシリーズ LG60TT   日本電気のCrusoe搭載ノートPCは、LaVie MXとLaVie Gシリーズ LG60TTの2モデルをラインアップする。ただし、ハードウェアの違いはほとんどなく(LG60TTが10Gbytesのハードディスクの選択が可能)、両者の違いは販路と添付ソフトウェアのみである(LG60TTは、同社のインターネット直販サイトの「121@store」専用モデル)。事実上、LaVie MXの1モデルといえるだろう。
  他社のCrusoe搭載ノートPCのOSが、Windows 98 SEもしくはWindows Meなのに対し、LaVie MXはWindows 2000 Professionalを採用していることからも分かるとおり、他社のCrusoe搭載ノートPCとは大きく位置付けが異なっている。LaVie MXの最大の特徴は、液晶ディスプレイの裏側にもバッテリを搭載し、最大11時間のバッテリ駆動を実現していることにある。消費電力が少ない反射型液晶ディスプレイを採用した点にも、バッテリ駆動時間を重視する姿勢がうかがえる。反射型液晶ディスプレイは、薄暗いところでは画面が見にくくなるため、プレゼンテーション会場などでの利用にはあまり向かないが、半面、屋外の明るいところでは通常のTFT液晶ディスプレイよりも見やすいという特徴がある。100BASE-TXのネットワーク機能を標準搭載していることからも、LaVie MXがビジネス指向であることが分かる。
 
  日立製作所 
FLORA 220TX
(12.1型TFT:TM5600搭載)
 日立製作所は、FLORA 220シリーズにCrusoe搭載モデルの「220TX」を追加した。ラインアップは豊富で、DVD-ROM内蔵モデル、CD-ROM内蔵モデル、低価格モデルが用意されている。DVD-ROM内蔵モデルは、今回発表となっているCrusoe搭載ノートPCでは最速のTM-5600-600MHzを採用している点が特徴だ。プロセッサ、液晶ディスプレイ、DVD/CD-ROMドライブなどの組み合わせが若干複雑なので、スペック表でよく確認していただきたい。オプションのバッテリー(LL)で約7時間のバッテリ駆動が可能であったり、ドライブ・ベイにCD-R/RWドライブやウェイトセーバー、ベイ内蔵型バッテリなどを搭載できたりと、ビジネス用途での使い勝手はよさそうだ。
FLORA 220TX
(12.1型TFT:TM5400搭載)
FLORA 220TX
10.4 TFT(TM5400搭載)
 
  富士通 
FMV BIBLO LOOX Sシリーズ  富士通は、新たにFMV-BIBLOブランドに「LOOX」シリーズを追加し、Crusoe搭載ノートPCをラインアップした。LOOXには、TM5400-533MHzを搭載しDVD-ROMドライブを内蔵しないSシリーズと、TM5600-533MHzを搭載しDVD-ROMドライブを内蔵するTシリーズの2シリーズが用意されている。さらに、それぞれのシリーズにKDDIのPHS通信であるH"IN(エッジ・イン)モジュールを内蔵するものと、しないものの2モデルがラインアップされる。SシリーズとTシリーズは画面解像度なども異なっており、Sシリーズが低価格なモバイル・ノートPCであるのに対し、TシリーズはDVDビデオの再生も可能なマルチメディア・ノートPCという位置付けである。Sシリーズは実売価格が15万円前後と、同クラスのノートPCの中でも安価なので、とりあえず低価格で持ち運びが容易なノートPCがほしいという人は検討してみるとよいだろう。
FMV BIBLO LOOX Tシリーズ
 
 
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  更新履歴 

【2000/11/17】 掲載している全ノートPCの仕様を同時に比較できるスペック表(Microsoft Excel 97/2000対応、48Kbytes)を用意し、ダウンロードできるようにしました。

 
 
 
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