プロダクト・レビュー

10万円未満の低価格IAサーバを斬る
―― デルコンピュータPowerEdge 500SC ――

2. サーバ専用チップセットの採用がポイント

デジタルアドバンテージ 島田広道
2001/10/18

デスクトップPCとの最大の相違はチップセット

 次はマザーボードを本機とデスクトップPCで比較してみよう(下の写真)。

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マザーボードの比較 (拡大写真へ
左がPowerEdge 500SC、右がDimension 4100のマザーボード。どちらもATX対応という点では同じだ(多少、PowerEdge 500SCの方が大きいが)。またプロセッサ数も1つだけと共通で、サーバ・システムでよく使われるSMPには非対応である。一方、本機には緑色で大きめの拡張スロット(64bit/66MHz PCIスロット)が2本あるほか、メモリ・ソケットの数も異なる。

 このように一見しただけでは、両者の違いははっきりしない。しかしこのマザーボードには、本機を決定的にサーバとして位置付けているものが搭載されている。それはチップセットだ。現在、PCアーキテクチャをベースとしたシステムにおいて、プロセッサやメモリ、拡張バスなどとのインターフェイス回路など中核の部分はチップセットに集積されており、チップセットの仕様や性能はシステム全体の性能や機能を大きく左右する。

 本機が採用しているチップセットは、IAサーバ向けチップセットの設計・製造で有名なServerWorks製のServerSet III LEだ(ServerWorksは、通信向け半導体の最大手Broadcom社の一部門である)。以下、代表的なデスクトップPC向けチップセットとServerSet III LEそれぞれによるマザーボード上のシステム構成を、ブロック図で示す。

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PowerEdge 500SCと一般的なデスクトップPCのシステム構成 (拡大図へ
この図は、チップセットを中心としたコンピュータ・システムをブロック図で表しており、左がPowerEdge 500SCで、右が一般的なデスクトップPCのものだ。両者の最大の違いは、デスクトップPCがクライアント用途で重要なグラフィックスのためにAGPという専用バスを装備しているのに対し、PowerEdge 500SCではAGPではなく64bit/66MHz PCIという汎用かつ高速な拡張バスが設けられていることだ。
 
本機に搭載されているチップセット「ServerWorks III LE」
左がノースブリッジで、プロセッサやメモリ、PCIバスとのインターフェイスを担当する。右はサウスブリッジで、IDEUSBのホスト・コントローラなど各種I/Oを集積している。このチップセットは、ServerWorksのラインアップでは最下位のエントリ向けであり、デスクトップPCとの機能差も小さい。より上位のチップセットでは、PCIバスの系統数の増加や、インターリーブ・アクセスによるメイン・メモリの高速化などといったアドバンテージがあり、より「サーバ」向けチップセットらしくなる。

 このように、デスクトップPC向けチップセットがグラフィックス性能を重視しているのに対し、ServerSet III LEはグラフィックス以外の高速なI/Oとのインターフェイス(拡張バス)を重視していることが分かる。また上図には記していないが、メモリについてもデスクトップPCに比べてメリットがある。以下では、拡張バスとメモリに関する本機の特徴を説明しよう。

従来の4倍高速な64bit/66MHz PCIバスを装備

クリックで拡大写真へ 2種類のPCIスロット
左側のが一般的な32bit/33MHz PCIスロットで、右側のが64bit/66MHz PCIスロットだ。64bit幅のPCIスロットは、デスクトップPCではまず見かけないサーバ/ワークステーション専用の仕様である。は別々の系統に分かれており、に装着した低速なデバイスが原因で、の高速なデバイスの足を引っ張らないよう注意が払われている(詳細は前述のブロック図を参照)。

 本機の仕様のうち、デスクトップPCと比べて最も異なる点は、この64bit/66MHz PCIスロットのサポートだろう。上の写真のように、本機には最大で2枚の64bit/66MHz PCIカードを装着できる。

 64bit/66MHz PCIの存在が重要なのは、従来の32bit/33MHz PCIでは速度の足りないI/Oデバイスがサーバで利用され始めているからだ。その1つとしてギガビット・イーサネットがある。ギガビット・イーサネットのホストアダプタは、通信方式にもよるが100M〜200Mbytes/s以上という高速な転送速度を必要とする。つまり最大133Mbytes/sの32bit/33MHz PCIでは、その性能をフルに発揮できないわけだ。

 また、高性能なハードディスクやRAIDユニットの接続に使われるUltra160 SCSIやUltra320 SCSIも、それぞれ160Mbytes/sおよび320Mbytes/sという転送速度を要求する。

 こうした高速なI/Oを、果たして10万円以下の低価格サーバに実装する機会があるのか? という疑問もあるかもしれない。しかし、サーバはクライアントPCよりずっと長く運用するものだし、すでにサーバ間の接続ではギガビット・イーサネットの利用が始まっている。数年後にはこうした高速I/Oも手軽に入手でき、また必要性も高まっているかもしれない。その点では、いまのうちに高速I/Oに対応していたほうがよいことは間違いない。

スケーラビリティの高いメイン・メモリ

4枚までDIMMを装着可能なメモリ・ソケット
DIMMなどメモリ・モジュールは、一般的にデスクトップPCでは2〜3枚しか装着できないが、本機は4枚まで装着可能だ。これはDIMMを増設できるチャンスが多く、将来、負荷が増してメモリ使用量が増えても対応しやすいことを意味する。最大容量は2Gbytesだ。
 
本機に装着されていたRegistered DIMM(RDIMM)
本機に必要なメモリ・モジュールは、PC133対応のECC付きRDIMMである。RDIMMは、デスクトップPCで一般的なUnbuffered DIMMに比べ、より多くのメモリ・モジュールを同時に実装できるよう設計されている(その分、高価でもあるのだが)。

 メイン・メモリの最大容量は2Gbytesと、絶対的には特筆するほど大容量というわけではない。実際、SDRAM対応のPentium 4搭載デスクトップPC向けチップセットであるIntel 845は、最大3Gbytesのメイン・メモリをサポートする。それでも、ServerSet III LEと同じPentium III向けで標準的なデスクトップPC用チップセットであるIntel 815Eは、最大512Mbytesしか実装できず、その差は大きい。何よりメモリ・ソケットの数が多く、増設できる機会も多い点は、サーバとして重要なメリットである。

オンボード実装されたネットワークやグラフィックス

 そのほかに、本機の特徴的な部分を挙げておこう。

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イーサネットはオンボード
Intel製のイーサネット・コントローラ「82559」が、マザーボード上に実装されている。最新の82550のようにIPSec用の暗号化アクセラレータは内蔵していない。とはいえ、PCIスロットを無駄に消費していないというメリットはある。
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グラフィックスもオンボード
これはATI Technologies製グラフィックス・コントローラ「RAGE XL」。サーバ用途なら十分すぎるスペックを持つ。やはり拡張スロットを消費しないよう、マザーボード上に搭載されている。
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ケーブルをロックするツメの付いているコネクタ
青いコネクタはIDEデバイスやフロッピードライブ用のフラット・ケーブルを接続するためのもの。その両脇にはツメが付いており、ケーブルをしっかり固定できるほか、ケーブルの確実な接続を確認しやすく、メンテナンス時の接続ミスを防いでくれる。当然ながらツメなしのコネクタより高価なので、低コスト優先になりがちなデスクトップPCでは、このツメ付きコネクタはあまり見かけない。

 以上のように、PowerEdge 500SCはケースやドライブ・ベイについてはデスクトップPCとほとんど変わりなく、ドライブの拡張性や耐障害性も同程度だ。もっとも、安価になった数十Gbytesの大容量IDEハードディスクを最初から搭載しておけば、後からハードディスクを追加する機会はそうそう多くないはずだ。耐障害性は、小規模なシステムなら、市販のディスク・ミラーリング・ユニットなどでカバーできる。最悪、64bit/66MHz PCI対応のSCSIカードやRAIDコントローラで大容量ストレージを外付けすることで、拡張性や耐障害性を確保する道は残されている。

 一方、メモリや拡張バスについては、デスクトップPCと比べて明確にスケーラビリティの良さが認められる。これにより、例えばユーザー数の増加などでサーバにかかる負荷が増えても対応しやすい。プロセッサの性能が高められない(最大でもPentium III-1GHz×1基まで)点は気になるが、前述のとおり、このクラスのサーバを使うときには単一サーバの性能を向上させるよりも、サーバの台数を増やしてシステム全体のスループットを向上させるスケールアウト方式を検討すべきだろう。逆に言えば、スケールアップの必要なサーバ・アプリケーションやデータベースとして、こうした低価格なIAサーバを採用すると、将来の拡張・増強は簡単ではないと覚悟する必要があるだろう(デルコンピュータのラインアップに当てはめると、この場合は上位機種であるPowerEdge 2500/4400以上が対象となるだろう)。

 これまで高価なサーバが購入できず、デスクトップPCで代用するということは、特にSOHOや企業の一部署ではよくあった光景だ。しかし、「サーバ」と銘打たれ、かつ機能や性能でも優れるIAサーバがデスクトップPCと同価格帯で入手できる現在、サーバ用途としてどちらを選ぶべきかは明白だろう。性能もさることながら、安定性が重視されるサーバ用途では、サーバ向けOSの検証が十分に行われているという点だけでも、こうした低価格なIAサーバを選ぶメリットがあるはずだ。記事の終わり

項目
内容
メーカー名
デルコンピュータ株式会社
製品名
PowerEdge 500SC
価格
7万9800円(評価した下記スペック製品の場合)
製品URL
問い合わせ先
TEL 044-556-1465
プロセッサ
Pentium III-1GHz×1
2次キャッシュ
256Kbytes
チップセット
ServerWorks ServerSet III LE
メモリ
PC133 ECC SDRAM Registered DIMM 64Mbytes(最大2Gbytes)
拡張スロット(空きスロット数)
64bit/66MHz PCI×2(2)、32bit/33MHz PCI×3(3)
拡張ベイ(空きベイ数)
3.5インチHDD専用×3(2)、5.25インチ前面アクセス可能ベイ×2(1)
フロッピー・ドライブ
3.5インチ2モード
ハードディスク
7200RPM 10Gbytes IDEハードディスク×1台(Ultra ATA/100対応)
CD/DVDドライブ
ATAPI CD-ROMドライブ(20〜48倍速)
ネットワーク
10/100BASE-TX対応(オンボード実装、Intel 82559コントローラ)
FAX/モデム
−(オプション)
グラフィックス
ATI Technologies RAGE XL(オンボード実装、PCI接続、4Mbytesグラフィックス・メモリ、最大解像度1600×1200ドット65536色)
インターフェイス
シリアル・ポート×1、パラレル・ポート×1、USBポート×2、ディスプレイ(アナログRGB)×1、PS/2キーボード×1、PS/2マウス×1、イーサネット・ポート×1
電源容量
250W
外形寸法
206(W)×437(D)×431(H)mm
重量
最大20.4kg
OS
−(Windows NT/2000 Server選択可能)
付属品 109日本語キーボード、ホイール付マウス、電源ケーブル、オンライン・マニュアル収録CD-ROM、セットアップ用CD-ROMなど
PowerEdge 500SCの主な仕様
 
 
 

 INDEX
  [プロダクト・レビュー]10万円未満の低価格IAサーバを斬る
    1.低価格IAサーバの存在意義
  2.サーバ専用チップセットの採用がポイント
 
「PC Insiderのプロダクト・レビュー」


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