プロダクト・レビュー

スケーラビリティの高い1Uサーバ
「PowerEdge 1550」

1.RAID 5にも対応可能なディスク・サブシステム

澤谷琢磨
2001/04/14

 厚さがわずか44.4mmの1Uから大型の7Uまで、デルコンピュータのラックマウント型IA(Intel Architecture)サーバは、幅広くラインアップされている。その中でPowerEdge 1550は、1Uサーバのうちの上位モデルに位置付けられる(デルコンピュータのPowerEdge 1550の製品情報ページ)。薄型ケースという制限の中で、性能や機能、拡張性を下位モデルより重視した製品といえる。一方、その下位モデル(PowerEdge 350)の位置付けは、大量導入向けの低価格機である。ここでは、同じ1Uでも下位モデル*1にはないPowerEdge 1550の特徴的な部分に注目して紹介していこうと思う。

 なお評価したマシンは出荷前のサンプル品であり、実際の製品とは細部において一部異なる可能性があることをご了承いただきたい。また、本機の詳細なスペックは、「資料:1Uラックマウント型IAサーバ」の「デルコンピュータ PowerEdge 1550」をご覧いただきたい。

*1 1Uサーバの下位モデルに相当する製品は、「プロダクト・レビュー・スペシャル:大量導入向け低価格1Uサーバ「コンパック ProLiant DL320」にて紹介しているので、本機と比較していただきたい。
 
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デルコンピュータのPowerEdge 1550 (拡大写真:26Kbytes
外形寸法は幅447mm×奥行き610mm×高さ43.2mm。奥行きが長いケースであることが分かる。フロント・パネルに見えるのは、スイッチ類の誤操作などを防ぐためのカバーである。セキュリティ確保のため、このフロント・パネルはカギでロックできる。

高密度でパーツが実装されたケース内部

 PowerEdge 1550の上部カバーを後ろにスライドさせて取り外すと、高密度で実装されたパーツ群が姿を現す。内部パーツの実装密度が高くなるのは、極薄ケースの1Uサーバにとって宿命であり、それはPowerEdge 1550でも同じだ。

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PowerEdge 1550の内部 (拡大写真:68Kbytes
写真手前側から順に、3台のハードディスクを内蔵できるドライブ・ベイ、ホットプラグ可能なSCSIコネクタを備えたバック・プレーン、大型のヒートシンクに覆われた2基のプロセッサ、幅広な2本のPCIスロットなどが目を引く。各パーツの詳細は後述する。

充実したディスク・サブシステム

 PowerEdge 1550の特徴として挙げられるのは、ハードディスクを最大3台まで内蔵できる点だ(多くの1Uサーバは2台まで)。またホットスワップにも対応し、ハードウェアRAIDコントローラもオプションで用意されている。そのため、RAID 5RAID 1ホットスペアなど耐障害性の高いディスク・サブシステムを、この薄型ケースに内蔵できるデバイスだけで実現できる、というメリットがある。サーバとしての用途が広がる重要な特徴といえよう。

ハードディスク・ベイはホットスワップ対応
フロント・パネル側に組み込まれているハードディスク・ベイは、厚さ1インチまでの3.5インチ・ハードディスクを最大3台まで内蔵できる。ホットスワップ対応なので、各ハードディスクは写真のようにレバー操作で容易に引き出せるよう、アダプタが取り付けられている。PowerEdge 1550のBTOメニューでは、ハードディスクの容量は9Gbytes、18Gbytes、32Gbytesから選択可能だ(2001年4月中旬時点)。
 
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10000rpm/Ultra160 SCSIの高速ハードディスクを搭載 (拡大写真:47Kbytes
これは評価機に搭載されていたSeagate Technology製のCheetah 18XL(ST39204LC)というハードディスクだ(Seagateの製品情報ページ)。容量は9.2Gbytesと少なめだが、回転速度は10000rpmと高速だ。またインターフェイスはUltra160 SCSIで最大データ転送レートは160Mbytes/sに達する。SCSIコネクタは、電源と信号線を同梱するSCA-2コネクタである(ホットスワップ対応ハードディスクではよく採用されるコネクタだ)。
 
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Ultra160 SCSI対応のコントローラを標準装備 (拡大写真:70Kbytes
これは、マザーボード上に搭載されているSCSIコントローラとその周辺回路。オプションのRAIDコントローラを利用しない場合、内蔵ハードディスクはこのコントローラに接続される(ハードウェアRAID機能は備えていない)。また、このコントローラは2チャネルのSCSIバスをサポートしており、内蔵ハードディスクと外部SCSIデバイスを別々のチャネルに接続・制御できる。
  Adaptec製SCSIコントローラ「AIC-7899」
2チャネルのUltra160 SCSI(Ultra3 SCSI*2)バスを管理できるSCSIコントローラ。PCとの接続に利用するPCIバスも、64bit/66MHz対応と高速である。
  SCSIターミネータ(内蔵ハードディスク用)
  SCSIターミネータ(外部デバイス用)
  SCSI外部コネクタ
テープ・ドライブなどの外部SCSIデバイスを接続する。
*2 Ultra160 SCSIとUltra3 SCSIは、ほぼ同じ規格で最大転送レートも同じ160Mbytes/s。
 
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全内蔵ドライブが接続されるバック・プレーン (拡大写真:87Kbytes
バック・プレーンとは、コネクタを介していくつものドライブや基板などを接続する回路基板のこと。本機ではドライブ・ベイの背後にこのバック・プレーンが位置しており、内蔵の全ストレージが接続されている。ハードディスクのホットスワップの管理やドライブのステータス監視などを担当している。
  ドライブを監視するチップ
これはQLogic製のGEM359というチップで、ドライブ・ベイのモニタリングとコントロールを担当する(QLogicの製品情報ページ)。ケース内の温度や電圧、冷却ファンの回転速度、動作状況などを管理できる。
 
ハードディスク・ベイ上のすき間に入ったCD-ROM/フロッピードライブ
1Uサーバとしては珍しくハードディスクを3台内蔵できるうえ、PowerEdge 1550はCD-ROMドライブとフロッピードライブの両方とも標準で装備している。ハードディスク・ベイ上の限られたスペースに押し込むため、ノートPC向けの薄型ドライブが採用されている。両ドライブの位置はハードディスク・ベイの直上であり、発熱の影響を受けないのか不安は残るが、障害発生時に限らず平時でもCD-ROMやフロッピーが利用可能というのは、各種メンテナンスが容易になるので評価できる。

オプションのRAIDコントローラは2チャネル対応

 評価機には、PowerEdge 1550のオプションであるRAIDコントローラ・カード「PERC3/DCL」が装着されていた。RAIDコントローラを追加できる1Uサーバというのは珍しくなく、大量導入向けの廉価モデルを除けば、PCIスロットにRAIDカードを装着できる場合が多い。

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コンパクトなRAIDコントローラ・カード「PERC3/DCL」 (拡大写真:102Kbytes
本カードは、ディスクとの接続に2チャネルのUltra160 SCSIを、またPCとは64bit/66MHz PCIという高速バスをサポートしている。RAIDレベルは、0/1/3/5/10/30/50と、実用的なレベルをほぼすべてサポートする。これだけの仕様でハーフ・サイズのPCIカードというのはコンパクトな方だ。なお、本カードはAMI製MegaRAID Elite1600(AMIの製品情報ページ)のOEM供給品と思われる。
  Ultra 160 SCSIコントローラのQLogic ISP12160A/66
Ultra 160 SCSIインターフェイスを2チャネル備えた、64bit/66MHz PCI対応のコントローラである(QLogicの製品情報ページ)。
  マイクロプロセッサのIntel i960RN
100MHzで駆動するi960JTプロセッサをベースに、RAIDで多用されるXOR演算のハードウェア処理機能を付加した64bit/66MHz PCIバス専用コントローラ(Intelの製品情報ページ)。PCIバス・コントローラ、PCI-PCIブリッジ、そしてメモリ・コントローラとしても働く。
  PCI-PCIブリッジのIntel 21154BC
64bit/66MHz PCIをサポートしている(Intelの製品情報ページ) 。i960とSCSIコントローラの組み合わせはRAIDカードの定番だが、本カードの場合、i960RNに内蔵のPCI-PCIブリッジではなく2個の外付けPCI-PCIブリッジ・チップを用いているのは特異だ。なぜこのようにブリッジだらけになっているのかは不明である。
  バッファ・メモリ用DIMMソケット
撮影のために取り外しているが、このDIMMソケットには容量64MbytesのPC100 SDRAM DIMMが取り付けられる。PC100メモリを用いているが、実際には66MHz駆動で用いられている。なお、これをバックアップするバッテリは用意されていない。
  内蔵デバイス用SCSIコネクタ
それぞれ1チャネルずつ内部コネクタに割り当てられている。向かって右の内部コネクタはブラケット部分下側の外部コネクタと共通のチャネルに接続されている。左の内部コネクタも同様に上側の外部コネクタと接続されている。
  外部デバイス用SCSIコネクタ
内部コネクタ同様、外部コネクタも2チャネル分、実装されている。コネクタ形状はVHDCIである。
 
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RAIDコントローラのグラフィカルなBIOSセットアップ画面 (拡大写真:48Kbytes
これはPERC3/DCLカード上のROMに格納されたBIOSセットアップ・プログラム「WebBIOS」の画面だ。RAIDの構築とメンテナンスは、このBIOSセットアップか、またはWindowsのプログラム「Array Manager 2.7」から行える。WebBIOSという名称は、Webブラウザ風のGUIを採用していることによる。ネットワーク経由での設定をサポートしているわけではない。

 次のページでは、PowerEdge 1550の内部構成を、さらに詳しく探ってみる。

  関連記事(PC Insider内)
資料
1Uラックマウント型IAサーバ:「デルコンピュータ PowerEdge 1550
大量導入向け低価格1Uサーバ「コンパック ProLiant DL320」
IT Market Trend:第2回 拡大するラックマウント型サーバ市場
SCA-2やVHDCを含む各種SCSIコネクタの一覧
RAIDの基礎知識−RAIDレベルを理解しよう−

  関連リンク
PowerEdge 1550の製品情報
SCSIハードディスク「Cheetah 18XL(ST39204LC)」の製品情報ページENGLISH
ドライブ・ベイなどの管理用コントローラ「GEM359」の製品情報ENGLISH
RAIDカード「MegaRAID Elite1600」の製品情報ENGLISH
SCSIコントローラ「ISP12160A/66」の製品情報ENGLISH
マイクロプロセッサ「i960RN」の製品情報ENGLISH
PCI-PCIブリッジ「21154BC」の製品情報ENGLISH
 
 
 

 INDEX

  [製品レビュー]スケーラビリティの高い1Uサーバ「PowerEdge 1550」
  1.RAID 5にも対応可能なディスク・サブシステム
    2.性能や拡張性を重視した内部構成
 
「PC Insiderのプロダクト・レビュー」


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