物流現場から見るRFID


第5回 成功例で見る梱包業界のUHF帯RFIDタグ導入


株式会社イー・ロジット
コンサルティング部
2008年2月29日


 RFIDタグシステムの機能とその有用性

 鈴鹿LSセンターで機能するRFIDタグを活用したシステムについては以下のように整理することができます。

  1. RFIDタグの一括読み取り機能
  2. 顧客製品情報登録機能
  3. 梱包情報登録機能
  4. 梱包検証機能
  5. 必要帳票の出力機能
  6. 出荷検証機能

 全体を通して見ると、作業のスピード化とヒューマンエラーによる誤送や欠品を未然に防止できるシステムであることが一目瞭然です。特にRFIDタグの機能が有効に活用できる作業工程としては、梱包検証と出荷検証の2カ所となります。

 梱包検証ゲートでは、仕向け地、オーダー情報とバケット数の母数24個をシステムに与え、外装となるケース単位に一括で読み取ります。これにより、混載防止のための仕向け地の自動認識と欠品防止のチェックを一括して行います。

 チェックがOKであれば、梱包検証後のケース内梱包明細であるパッキングチェックシートとRFIDタグが付いたケースマークラベルがプリントされます。これにより、ケース内でのカートンの混載と欠品防止、複数内装容器の一括読み取りによる検証作業の効率アップ、手書き帳票の機械化による事務作業の効率アップが実現されました。

 なお、RFIDタグと現品は常に1セットとするシステム運用であるため、ケース内に1個でも違うバケットが入っていた場合、アラートが出る仕組みとすることで異なるバケットを検出します。

 出荷検証ゲートでは、コンテナ内のバンニングレイアウト情報をシステムに事前登録し、ケースのままゲートを通過すれば一括読み取りでき、バンニングレイアウト情報との照合により、異仕向地ケースの混載、投入順位や適正ケースの満杯チェックなどを一括で行うことができます。これにより、コンテナ単位で異仕向地への誤送防止、コンテナ内で異仕向地ケースの混載防止、コンテナ内での欠品(ケース)防止、バンニング作業の効率アップなどが実現されました。

 以上のようなシステム機能により、出荷精度の向上と業務の省力化を図ることが可能となりますが、そうしたメリットもさることながら、確かな出荷保証を約束するシステムの運用は、お客さまからの信頼の向上につながることはいうまでもありません。

 RFIDタグの回収・再利用、作業効率化によるコストメリット

 RFIDタグを活用したシステムの本格運用からおよそ2年を経た今日の状況や成果について紹介します。

 実証実験では、東洋電装製品の上海向け梱包・出荷業務のみで開始されましたが、今日では4カ所の仕向け地にまで運用が拡大されています。システムで使用されるRFIDタグの数量は、1週間でおよそ1000個から1200個ほど(鈴鹿LSセンター内に常備するRFIDタグの数量は約3000個)です。上記の図でも示したとおり、バケットに張り付けられたRFIDタグは、梱包検証作業が終わればその役目を終了するため、回収して再利用されます。

 ただし、1週間に約60ケースが出荷されるため、ケースマークラベルのRFIDタグはワンウェイとなり、リターナブルに利用されることはありません。それでも、構内で回収・再利用されるRFIDタグの数量の方が圧倒的に多く、運用上のネックとされている消費RFIDタグのコスト的な問題をほぼクリアした理想的な運用体制といえるでしょう。

 コストメリットでいえば、作業の省力化による効果も大きなものでした。入荷検収からバンニングまでの作業において、従来は8名が作業に従事していましたが、運用後は5人でできるようになりました。導入検討時の目標であった“物流効率30%アップ”が、見事に達成されたことが分かります。

 また、梱包、出荷の精度が改善されたことで、荷繰りのスピードも向上しました。荷繰り作業そのものは、顧客単位で検証収集していくため、梱包の間違いを検出した場合の対応も迅速な処理が可能になりました。

 Gen2の早期適応と運用範囲の拡大を望む

 今日までの運用においては、期待どおりの効果を創出した鈴鹿LSセンターのRFIDタグシステムです。しかしながら、RFIDタグ導入のメリットである一括読み取りに関しては、まだまだ「瞬時」読み取りには至らないといいます。

 これは、現行のRFIDタグシステムが、EPCglobal Gen1(ジェネレーション1)の規格をベースに構築されているためであり、電波の周波数と広がり特性が弱いことに起因するものです。また、取り扱う荷物も金属製品が多いことも原因の1つです。しかも、バケットを収めるケースにしてもスチール製であるため、利用環境としては必ずしも最適な条件ではないからだといえるでしょう。

 これらの点については、当然ながら実証実験の段階で明らかとされていました。それでも、最大の効果を創出するための工夫を随所に盛り込みながら、大きな活用メリットにつなげたことは、高く評価すべき実用事例と見ることができます。特にRFIDタグの電波出力の問題に関しては、新たなEPCglobal Gen2(ジェネレーション2)への対応を強く望んでいる現状です。

 これらの点については、当然ながら実証実験の段階で明らかとされていました。それでも、最大の効果を創出するための工夫を随所に盛り込みながら、大きな活用メリットにつなげたことは、高く評価すべき実用事例と見ることができます。特にRFIDタグの電波出力の問題に関しては、新たなEPCglobal Gen2(ジェネレーション2)への対応を強く望んでいる現状です。

 そこで本年より、荷物の受け入れ先でもRFIDタグを活用できるシステムのテストを行っていく計画があります。鈴鹿LSセンターから送った商品に対し、受け入れ先がRFIDタグを使って入荷検品し、入庫検収、在庫管理などを行うシステムです。

 容器管理による回収物流はその次のステップとして位置付けていますが、すでに同社の狭山LSセンターでは、英国向けの物流に対しRFIDタグを活用したリターナブル容器がテストされているそうです。

 今回のRFIDタグの実用化をはじめ、さまざまなシステム開発で蓄積されたノウハウをベースに、自動化、ライン提案、トレーサビリティ管理、リターナブル容器管理の提案など、国際的なグローバルネットワークへの対応とサプライチェーンの推進に向け、より付加価値の高いサービスの提供に取り組んでいく計画にあります。今後の展開が大いに期待される日通商事鈴鹿LSセンターです。

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Index
成功例で見る梱包業界のUHF帯RFIDタグ導入
  Page1
実証実験で実用ノウハウを蓄積
QRコードとRFIDタグのデータのひも付けを基本に
Page2
RFIDタグシステムの機能とその有用性
RFIDタグの回収・再利用、作業効率化によるコストメリット
Gen2の早期適応と運用範囲の拡大を望む

Profile
株式会社イー・ロジット
コンサルティング部

通販物流をはじめとする多品種少量多頻度の物流、いわゆる「小口高回転物流」でビジネスを行う会社を、アウトソーシング、コンサルティング、システム導入支援という3つの側面で全面支援。

「センター立上げ支援」「物流現場改善」「物流システム導入支援」など、多くの経験値を持っている。

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