第1回 進むRFID標準化と実証実験
河西 謙治
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長
2006年5月10日
2006年はどのような年になるのか
ここまで見てきたように2005年(平成17年度)は、実証実験が精力的に実施された年であったが、一方で、静かに、だが着実にRFIDの実用化が進み始めた年でもあった。では、2006年(平成18年度)はどのような位置づけになるのだろうか。これは、一層の商用利用が期待される年であるといえるだろう。
本年度、商用化が一層進むと見られているのは、物流(パレットや通い容器レベルでの所在管理)、製造(進ちょく状況、仕掛り、在庫の可視化・生産指示の自動読み取り)、物品管理(重要書類、カセット磁気テープ(CMT)などの媒体、リースレンタル品、設備など)といった分野である。
しかしながら、必ずしも楽観的な見方ばかりではない。シンクタンクや関連省庁のRFIDの本格普及についての予測は、数年前から見ても後ろ送りになっているものが散見され始めており、現在では2010年との見方も出てきている。
この最大の要因が、従前から、RFIDシステム普及における最大の鍵であり、商用化への課題といわれているROI(投資対効果)の明確化である。現在でも、ROIのある分野(商品単価が高くRFIDのコスト吸収力が強い、大幅な作業時間短縮や作業自動化が図れるなど)には着実に導入されているものの、期待されているような爆発的な普及には次のような課題を解決する必要がある。
ハードウェア(デバイス)やソフトウェアのさらなる低価格化
普及→大量生産→低価格化→適用分野拡大のスパイラルが回るか
レガシーシステムとのシームレスな連携
例えば、RFIDが独立した在庫管理システムとして存在するのではなく、既存の受発注システムや会計システムと連動することにより、その効果は極大化される
単なる自動化や可視化にとどまらず、蓄積されたデータを活用した業務改善効果でROIを測定する
RFIDシステムを導入した部分のみの自動化や可視化だけに効果を見いだすのではなく、蓄積や共有されたデータを基に行われる在庫削減、処理時間短縮、ビジネスプロセス改善などの幅広い効果を考える必要がある
また、RFIDは過酷な現場で使用されるので、使用環境や使用条件、使用する機器により読み取り性能などが大きく異なる。このため、実フィールドでの適用経験の蓄積が求められる。特にUHF帯では、ほかの周波数帯に比べて電波が飛ぶが故の課題も出てきており、実務に耐えるものとしていくにはこれからさらなる経験の積み重ねが必要となるであろう。
さらに、コスト負担についても一企業でのクローズドな使い方であれば問題にはならないが、複数のプレーヤー間での利用となる場合は、ソースタギング(タグの添付)のコスト負担者とメリットを享受するプレーヤーが異なることが多いため、費用負担モデル(ビジネスモデル)の構築も課題となっている。
次回は、2005年に各ベンダが急ピッチでリリースしてきたRFIDミドルウェアに着目する。RFIDシステムの特徴と課題、ミドルウェアが果たす役割について、NTTデータのRFIDプラットフォーム群を素材として見ていきたい。
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Index | |
進むRFID標準化と実証実験 | |
Page1 普及期のRFID1.5、来るべきRFID2.0時代に備えよ 活発な2つのRFID標準化 |
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Page2 RFID1.5に向けた実証実験の活発な推進 |
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Page3 バーコードの課題を突破するRFIDの高機能化 |
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Page4 2006年はどのような年になるのか |
Profile |
河西 謙治(かわにし けんじ) 株式会社NTTデータ ビジネスイノベーション本部 ビジネス推進部 課長 戦略コンサルティング、新規ビジネス企画、全社事業戦略策定を経て2003年度よりRFIDビジネスに従事。NTTデータのRFID組織の立ち上げおよびサービス体系を策定。 現在は同分野におけるリレーションシップビルダーとして対外的情報発信を担当。 |
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