第8回 自動認識総合展レポート

RFIDは実運用のステージへ


宮田 健
@IT編集部
2006年9月23日

 「タグをリーダから離す」というイベントに着目

 RFIDの利用シーンはタグをアンテナで検知することからスタートすることが多いが、逆の発想で何かできないか……? ソーバルはRFIDの応用例として、人間の行動に応じた情報提供を行うシステム「TagNavi II」を応用した、店頭販売促進支援のデモンストレーションを参考出展していた。携帯電話の販売スタイルを用いて、携帯電話の模型を陳列棚から取り出すことをきっかけとし、その商品を説明する映像が流れる仕組み。携帯電話の模型にはRFIDタグが、棚にはセンサーが取り付けられている。また手に取った携帯電話の模型を横に設置したセンサーにかざすことで、ほかの携帯端末との比較を行う機能についてもデモンストレーションされていた。

ソーバルの店頭販売促進支援のデモ
携帯電話を取り出すだけで紹介ビデオが流れる

 「今回、携帯電話販売を例にして展示をしているが、あくまでRFIDを人間の行動に当てはめて応用したもの。携帯電話販売だけでなくさまざまな応用ができる」と同社は説明した。携帯キャリアや販売店をターゲットの1つとしているが、そのほかにもショールームなど製品の説明が必要な場所に導入することを想定しており、すでに引き合いもあるという。

 RFIDが危険を防止します

 東レでは薬品などの在庫管理および移動管理を行う「危険物管理システム」のデモを行っていた。

 薬品には内容物に応じて危険度が設定されており、薬品庫や実験室に置かれた薬品の総危険度が、法令で定められた一定のしきい値を超えないよう管理する必要がある。従来は薬品庫ごとに台帳を手作業で管理していたのを、このシステムにより自動化することができる。

東レの「危険物管理システム」
アンテナに薬品を近づけることで薬品の一覧が表示される

 システムはRFIDリーダ、RFIDチップ、タグプリンタ、管理ソフトウェアなど関連する機器が1つのパッケージとして提供されており、このシステムを導入するだけで薬品の移動、入庫、廃棄処理を管理することができる。液体や金属など、タグが読み取れない可能性があるものについては、容器にスペーサーを付けたりバーコードと併用することもできる。

 例えば特定の薬品を別の薬品庫に移動する場合には、薬品のケースに付けられたRFIDタグをリーダに近づけ、移動しようとしている薬品の確認を行うとともに移動先を指定する。このとき、移動先の薬品の総危険度がしきい値を超えてしまう場合に警告が出され、移動は行えなくなる。

 タグが本物の証、「かにブランド管理システム」

 日立が提供している非接触ICチップ「ミューチップ」は、2005年に行われた愛・地球博のチケットに埋め込まれており、身近なところで活躍していた。そのミューチップの活用法として興味深いシステムが展示されていたので紹介する。

 「かにブランド管理システム」では、ミューチップをプラスチックでできたバンドに埋め込み、カニが水揚げされたタイミングでバンドを巻き、トレーサビリティを確保する。このバンドの裏には2次元バーコードが貼り付けられており、ミューチップを読み取る際に、管理サーバではミューチップのIDとバーコード情報のリンクが行われる。

「かにブランド管理システム」で利用されるICタグ
かにの形をしたバンドの裏には2次元バーコードが印字されている

 例えば、調理されたカニと一緒にこの黄色いタグも皿に添えられる。そのタグの裏に付けられた2次元バーコードを携帯電話で読み取ることにより、目の前にあるカニがいつ、どこで水揚げされたものであるのかを知ることができる。つまりタグ内蔵のバンドをカニのブランド価値を証明するマークとして利用しているのである。

 そのほか、経済産業省の研究開発委託事業として2004年半ばからスタートし、RFIDタグの安定供給を目的とした「響プロジェクト」に関する成果についても展示がされている。「ICタグを1つ5円で提供できるめどはついた」とのことであるが、そのためには月産1億個の受注が必要であり、それを支えるためのニーズがまだ存在しないのが現状である。

2/3

Index
RFIDは実運用のステージへ
  Page1
「店舗単位の導入でも」スマートシェルフがもたらす効果
ソリューションを提供できる自信は「実績」から
インテリジェントリーダ/ライタとコンパクトなアンテナが登場
Page2
「タグをリーダから離す」というイベントに着目
RFIDが危険を防止します
タグが本物の証、「かにブランド管理システム」
  Page3
アンテナ内蔵のマルチバンド対応タグ、ICペーパーへの応用も
RFID導入のリスクを低くするために

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