第8回 自動認識総合展レポート

RFIDは実運用のステージへ


宮田 健
@IT編集部
2006年9月23日
多くの実証実験を経て、RFIDを導入する企業が増加している。実運用のフェイズにおけるRFIDのいまを、自動認識総合展で見つけた取り組みからレポートする(編集部)

 RFIDによる明るい未来が示されてはや数年、「コストさえ低ければ」といわれることの多いRFID、活用のフィールドはどのように広がっているのだろうか。2006年9月13日〜15日に行われた「第8回 自動認識総合展」で見かけた新たなRFIDの取り組みを取り上げてみよう。

 「店舗単位の導入でも」スマートシェルフがもたらす効果

 RFIDに関する取り組みは生活・産業分野で次々と現実のものとなっている。マイティカードが最も力を入れて紹介していたのは「TrueVUE RFID プラットフォーム」だ。このシステムではRFIDを添付した商品の現在位置、個数、展示期間の個品管理を行うことができる。

 このシステムではIntelliルータと呼ばれる装置を使い、1台のリーダ/ライタで複数のスイッチを管理することができ、2000以上のタグを管理できる。実際の導入時には複数のリーダ/ライタを並列に設置し、故障時に自動的に切り替え、可用性を高めることも可能。システムを管理するソフトウェアはAPIも提供されているので、既存のSCMシステムと連携することもできる。

 このシステムの特徴は、商品が置かれている場所、個数の可視化にある。アイコンが並ぶ画面をクリックするだけで商品が棚にいくつ存在しているかをビジュアルで表示することができる。分かりやすい操作画面で従業員に対しての教育も不要であるため、在庫が切れやすい売れ筋商品の種類や商品が置かれるべき位置など、従来ノウハウに頼っていた作業もこのシステムで対応できることにより、教育コストの削減が可能となりROI(費用対効果)にも貢献できる。

 スマートシェルフをイメージしたデモンストレーションでは、1台のリーダ/ライタで6枚のアンテナをコントロールしていた。ポロシャツのタグの裏に貼り付けられたRFIDタグを棚のアンテナが常に読み取っており、タッチパネルの画面を操作するだけで現在の在庫数を確認することができる。商品の補充に関しても、例えば黒いポロシャツはどこにおけばよいのかという指示を画面を通じて確認できる。

 また事務所をイメージしたコントロール画面では、店舗およびストックルームの棚卸し結果が常に表示されるため、現時点の在庫管理をリアルタイムで確認することができる。デモンストレーションではアパレル業界などをイメージしていたが、生鮮食料品や薬品など消費期限が存在する商品の期限管理も同システムで行うことができる。

スマートシェルフをイメージしたデモブース
従業員が操作する画面はアイコンで構成されている

 「まずは店舗単位での導入でも効果が出る」と同社は説明する。すべての商品にタグを付ける必要はなく、25ドルを超える商品であれば個品管理を行う価値はあるとされる。その価格帯以上のものであれば機会損失によるロスは大きい。英国のスーパーマーケットのテスコや米小売大手のベストバイがDVD販売で同様のシステムを導入したところ、売り上げが10%以上向上したという実績がある。「売れ筋のDVDであれば、店舗の在庫がなくなってしまうこともある。それが1日に数十分だったとしても、機会損失による金額は大きなものになる」とし、在庫管理の可視性の重要性を強調した。導入店舗の機会損失を抑えることで売り上げに貢献し、グループでの導入、最終的に流通センター、製造拠点を含めた大きなサプライチェーンをつくり出すことが期待できるからだ。

 ソリューションを提供できる自信は「実績」から

 マイティカードの取り組みとして、ヨドバシカメラが行っているRFID導入についても大きく取り上げていた。ヨドバシカメラは2005年に各納入メーカーに対してRFIDタグの導入を依頼しているが、このシステムにおいてマイティカードは共用化技術の検証を行った。通常リーダ/ライタは電波干渉を防ぐため、Listen Before Talk(LBT)という共用化技術を使って電波の有無を確認してから電波の発射を行うため、待ちや停止が必要になることから、従来は多数のリーダを同時に稼働させるのは困難とされていた。

マイティカードとヨドバシカメラの実証実験紹介
(画像をクリックすると拡大します)
LBT環境下での30台同時稼動実績を紹介していた

 ブースではLBT環境下において、30台のリーダを同時に稼働させることに成功した事例が紹介されていた。20台のリーダで200枚のタグを読み取っているという状況下にて、残りの10台のリーダを使い、通過する荷物に貼り付けたタグ100枚の一括読み取りに成功している。現場ごとにLBT対策は異なるため、すべての環境下で同様の性能を出すことはできないと前置きしながらも、現場での実験を繰り返すことにより最適なパフォーマンスを提供できると同社は説明した。

 単なるベンダではなく、ソリューションを提供できる企業であることをアピールしていた。

 インテリジェントリーダ/ライタとコンパクトなアンテナが登場

 またマイティカードは業界標準の規格であるEPCglobal Gen2に対応したUHF帯RFIDリーダ/ライタ「XR480-JP」を発表している。特徴としてはスタンドアロンで制御が可能なため、LAN設備がない工場などでもサーバPC不在でのシステム設計が行え、トータルコストを抑えることができる。OSはWindows CEを搭載しており、使い慣れたVisual Studioなどの開発環境がそのまま利用できるため、ミドルウェアやソフトウェアの実装が容易に行える。

発表されたコンパクトなアンテナ2種
従来の半分以下のサイズとなっている。中段は全天候型

 このリーダ/ライタには最大8台(4対)のアンテナが接続可能である。今回アンテナの新商品として、従来に比べて半分以下の大きさとなったシングルポートモード対応のコンパクトなアンテナ「SANT100」と、それに加えアウトドアでも利用可能な全天候型アンテナ「SANT200」が発表されていた。

 従来のアンテナはデュアルポートのみの対応であり、1つのアンテナに送信用、受信用の2つが含まれていた。今回発表されたものは送受信兼用として動作するシングルポートモードに対応し、2台を1対として提供される。コンパクトな筐体のため、従来のアンテナではスペースの問題で配置できないような場所でも利用可能となった。

 
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Index
RFIDは実運用のステージへ
Page1
「店舗単位の導入でも」スマートシェルフがもたらす効果
ソリューションを提供できる自信は「実績」から
インテリジェントリーダ/ライタとコンパクトなアンテナが登場
  Page2
「タグをリーダから離す」というイベントに着目
RFIDが危険を防止します
タグが本物の証、「かにブランド管理システム」
  Page3
アンテナ内蔵のマルチバンド対応タグ、ICペーパーへの応用も
RFID導入のリスクを低くするために

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