DNSの逆引きゾーンを定義しておくと、IPアドレスからホスト名(FQDN)を求めることができる。逆引きゾーンでサブドメインを利用すると、サブネットに関する管理を他のDNSサーバに委任できる。逆引きゾーンの管理は、正引きゾーンと同じDNSサーバで行うようにするよとい。サブドメインを作成するには、同一ゾーン内に定義する方法と、委任を利用する方法がある。
対象OS:Windows 2000 Windows Server 2003
Tech TIPS「WindowsでDNSの逆引きゾーンを定義する(イントラネット編)」では、主にイントラネット用途において、IPアドレスから名前(FQDN)を求めるという、逆引きDNSサービスの設定方法について解説した。
例えば「10.20.5.0/24」「10.20.6.0/24」「10.20.7.0/24」「10.20.8.0/24」「10.20.9.0/24」という5つのネットワークが組織内のネットワークで利用されているとすると、次のような5つの逆引きゾーン(ドメイン)を定義しておけばよい。
ネットワーク | 定義するゾーン名 |
---|---|
10.20.5.0/24 | 5.20.10.in-addr.arpa |
10.20.6.0/24 | 6.20.10.in-addr.arpa |
10.20.7.0/24 | 7.20.10.in-addr.arpa |
10.20.8.0/24 | 8.20.10.in-addr.arpa |
10.20.9.0/24 | 9.20.10.in-addr.arpa |
逆引きゾーンで定義するゾーン名 5つのネットワークがあれば、このように5つの逆引きゾーンが必要となる。 |
「10.20.5.0/24」または「10.20.5.0/255.255.255.0」というネットワークアドレス表記は、「10.20.5.0〜10.20.5.255」というIPアドレスの範囲を示す。これに対応する逆引きゾーン(ドメイン)名は、以下のように生成すればよい。
DNSの管理ツールを起動し、これらのゾーンを「逆引き参照ゾーン」の下に作成しておけばよい。
前出のTech TIPSでは、例として、1台のDNS上にこれらすべてのゾーンを作成する例を示した。DNSのクライアントコンピュータで参照しているDNSサーバがただ1台だけならば、このようにしておかないと、すべての逆引きゾーンに対して正しくアクセスできないからだ。
しかし、実際のネットワークでは、ネットワーク(サブネット)ごとに管理の主体が異なっていることが多いだろう。
例えば「10.0.0.0/16」は本社、「10.4.0.0/16」は支社1、「10.8.0.0/16」は支社2、などとなっており、それぞれの拠点ごとに管理者が配置されていたり、DNSサーバそのものが(サブドメインとして)分散して配置されていたりする。となると、当然逆引きゾーンのデータも各拠点ごとに独立して管理できなければならない(正引きも逆引きも同じDNSサーバを参照するので、正引きはサブドメインで分散する一方で、逆引きはどこか1カ所でまとめて管理する、という形態は現実的ではない)。
正引きゾーンと同じように、逆引きゾーンもサブドメイン化して、階層的に管理することも可能である。こうすれば、ネットワークごとに異なるDNSサーバを利用することが可能になる。
逆引きゾーンをサブドメイン化するには、正引きの場合と同じように、同一ゾーン中に複数のゾーンを含める方法と、委任(delegation)を利用して別のDNSサーバ(同じDNSサーバでもよいが)へ依頼する方法の2通りがある。本Tech TIPSでは、これらの方法についてまとめておく。概念を含む詳細については、以下のTech TIPSを参照していただきたい。
ちなみに、デフォルトでは、「0.0.127.in-addr.arpa」という逆引きゾーンは(これは「127.0.0.1」→「localhost」という、ループバックアドレスに対する逆引き定義)、単一ゾーン中にサブドメインを定義する方法で用意されている。
以下の例では、「10.20.5.0/24」「10.20.6.0/24」……というネットワークアドレスに対して、サブドメインを利用して逆引きゾーンを定義してみる。
前出のTech TIPSでは、これに対して「5.20.10.in-addr.arpa」〜「9.20.10.in-addr.arpa」というゾーンを定義した。しかし、サブドメインを利用する場合は、1byteごとに区切って、階層的な逆引きDNSドメイン名空間を構築する。まずトップレベルとして、
という逆引きドメインを定義する。そして、この下に、
というサブドメインを作成し、さらにこの下に、
というサブドメインを順次定義する。
サブドメインを定義する場合、同一ゾーン中に作成すれば、親ドメインと同じゾーン(同じDNSサーバ)で管理されることになる。これに対して、委任を利用すれば、他のDNSサーバへ依頼できる。
最初に「10.in-addr.arpa」というゾーンを定義する。このためにはDNSの管理ツールを開き、[逆引き参照ゾーン]で[新しいゾーン]メニューを実行して、ウィザードを開始する。
まずトップレベルのドメイン「10.in-addr.arpa」を作成する。ウィザードを起動し、[プライマリ ゾーン]の作成を選択して、先へ進めると、次のような、逆引き参照ゾーン名の入力ダイアログが表示される。前出のTech TIPSの方法と比べると、[ネットワーク ID]に対して、IPアドレスの先頭部分しか指定していないところが異なる。2byte目と3byte目は空白にしておくことに注意。
ウィザードを進めて終了すると、次のようになっているはずである。トップレベルドメインが作成できれば、次はその直下に「20.10.in-addr.arpa」に相当するサブドメインを作成する。ここでは、同じゾーン内に作成してみよう。つまりこのドメインは、同じDNSサーバで管理するということである。
同一ドメイン内にサブドメインを作成する場合は、そのドメインの名前を入力するだけでよい。ここでは「20」と入力する。
次は、同様にして、今作成した「20.10.in-addr.arpa」の下に「5」というサブドメインを作成する。やり方は同じなので省略する。完成すると次のようになっているはずである。
「5.20.10.in-addr.arpa」という逆引きゾーンの作成は以上で終了である。これ以上は、何も設定する必要はない。
次は同様にして、「6.20.10.in-addr.arpa」というサブドメインを作成してみよう。ただし今度は同一ドメインではなく、別のDNSサーバへ委任する例を取り上げる。
まず「20.10.in-addr.arpa」ゾーンでポップアップメニューを表示させ、[新しい委任]を実行する。
サブドメインを委任する場合は、ドメイン名(ここでは「6」)の指定後、委任先のDNSサーバのFQDNとIPアドレスを指定しなければならない。ウィザードの画面は簡単なので省略する。完成すると、DNSの管理画面は次のようになるはずである。
「5.20.10.in-addr.arpa」と「6.20.10.in-addr.arpa」は、同じサブドメインである一方で、同一ゾーンか、外部に委任するかが違う。委任する場合はこのように、委任先のDNSサーバを指すための、Name Serverレコード(NSレコード)が定義されている。
そして委任先のDNSサーバ(この画面では「osaka-svr01.osaka.example.co.jp」)には「6.20.10.in-addr.arpa」という逆引きゾーンを定義しておく。その場合、「10.in-addr.arpa」というゾーンを作成後、さらに「20.10.in-addr.arpa」「6.20.10.in-addr.arpa」サブドメインを作成してもよいし、最初から「6.20.10.in-addr.arpa」toiuというゾーンを1つだけ作ってもよい。
「192.168.*.*」「172.16.*.*」などの場合でも、以上の「10.*.*.*」の例と同様である。まずトップレベルの逆引きドメイン「192.in-addr.arpa」「172.in-addr.arpa」を作成後、同一ゾーン内にサブドメインを作るか、外部DNSサーバへ委任すればよい。
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