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連載:コンバージェンス項目解説(1)

4ステップで進める資産除去債務への対応

市瀬洋生
プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社
2009/9/3

企業はIFRSだけでなく、現在進行中のコンバージェンスにも対応が求められている。コンバージェンス対応を適切に行うことはIFRSの円滑な導入にもつながる。コンバージェンス項目解説の第1回は「資産除去債務に関する会計基準」(→記事要約<Page 3>へ)

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(2)特徴

 資産除去債務に関する会計基準では、資産除去債務を負債計上するとともに、その同額を資産計上(=資産負債両建処理)し、有形固定資産の残存耐用年数にわたり各期に減価償却していくという、従来の日本になかった会計処理が行われる。

 この資産負債両建処理を行うことによって、除去に関する将来負担が財務諸表に反映されるため、財務諸表利用者に対して有用な情報を提供することになる。また、これまで除却時の一時費用として営業外費用や特別損失に計上したものが、有形固定資産の耐用年数にわたって減価償却費として適切に期間配分されるようになる。

(3)会計処理

 資産除去債務は、将来の除去費用を見積もり、かつ現在価値へ割引計算して計上することになるため、計上時期や将来キャッシュフローの見積もり方法、適用する割引率が重要な要素となる。

 まず、資産除去債務の計上時期であるが、除去義務が発生した時点が負債の計上時期となる。もし発生時に資産除去債務を合理的に見積もることができない場合、その時点では計上せず、合理的に見積もることができるようになった時点で計上する。

 ただし、ここでいう「合理的な見積もりができない」というのは、決算日現在に入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積もりを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合に限られる。単に履行時期や除去の方法が明確にならないということだけを理由として、合理的に見積もることができないということにはならない。

 次に、将来キャッシュフローの見積もり方法については、過去の実績や当該除去にかかる標準的な料金等を基礎情報として、支出額を見積もることとなる。

 その際、将来キャッシュフローの見積もり要素として、インフレ率及び見積値から乖離(かいり)するリスクを勘案する。また、もし技術革新等による影響額を見積もることができる場合はこれを反映させる。なお、信用リスクは将来キャッシュフローの見積り要素として考慮しない。

 最後の、割引率については、貨幣の時間価値を反映した、無リスクの割引率(利付国債の流通利回りなど)が用いられる。

資産除去債務の会計基準適用が日本企業へ与える影響

 資産除去債務の会計基準適用は日本企業へどのような影響を与えるのだろうか。

 まず、資産除去債務の会計基準によって取得原価に加算された除去費用が、減価償却を通じて製造原価や販売費・一般管理費として計上されるようになるため、営業利益が減少する。特に、不動産を数多く抱える企業や、通常の企業活動において多くの化学物質を使用しているエネルギー関連や金属、化学等の企業は、影響が大きくなることが想定される。

 また、設備取得時等の投資意思決定にも影響を及ぼすことが考えられる。多くの企業において、投資意思決定時の将来キャッシュフローの見積もりとして通常の撤去費用は含めているが、資産除去債務までは含めていないと考えられる。今後は資産除去債務を含めて将来キャッシュフローを見積もり、投資判断をしていくことがリスク管理の点からも求められることになる。

 さらに、資産除去債務の適用により増加する減価償却費は、法人税法上の損金にならなければ、税務上と会計上とで減価償却費は相違することになる。税務上の数値と財務会計上の数値が異なれば固定資産システムにおいて二重の管理が必要となり、企業の事務負担も大きくなると想定される。

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