連載:コンバージェンス項目解説(1)
4ステップで進める資産除去債務への対応
市瀬洋生
プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社
2009/9/3
企業はIFRSだけでなく、現在進行中のコンバージェンスにも対応が求められている。コンバージェンス対応を適切に行うことはIFRSの円滑な導入にもつながる。コンバージェンス項目解説の第1回は「資産除去債務に関する会計基準」(→記事要約<Page 3>へ)
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日本企業のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用についての将来展望を示した、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」が6月30日に金融庁から公表された。
この中間報告には、上場企業の連結財務諸表を対象にIFRSの強制適用が2015年または2016年に開始される見通しであることが記載されている。いよいよ日本も、IFRS適用(アダプション)へ向けて大きく動き出した。しかし、それと同時に、IFRS適用後も日本の資本市場の魅力を高め国際競争力を維持・向上させていく点から、引き続き日本基準とIFRSの差異を解消していく必要があると記載されている。日本企業は今後も継続してコンバージェンスに対応していかなければならないのだ。
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資産除去債務の会計基準の概要
今回解説する「資産除去債務に関する会計基準」及び「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」も、コンバージェンスの一環としてASBJで開発され、2010年4月(2011年3月期)から適用される。ここではまず資産除去債務の(1)定義、(2)特徴、及び(3)会計処理について触れておく。
(1)定義
資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じる、将来の有形固定資産の除去義務並びに有形固定資産を除去する際における有害物質等の除去義務のことをいう。
ここで注意すべきことは、資産除去債務の計上は、除去することが法律やそれに準ずるものにより要求されていることが条件となることである。すなわち、設備等の撤去が将来において計画されていたとしても、法律等の要求に基づくものでない限りは、自発的な計画となり、資産除去債務とはならない。
また、有害物質については、有形固定資産の除去する際に取り除く必要があるものだけが対象となる。従って有形固定資産の除去を伴わず取り除かなければならないものは資産除去債務とはならない。
なお、法律及び契約等の法律上の義務だけではなく、過去の判例や行政当局の通達等のうち違反した場合は制裁が課せられるようなものについても、法律上の義務に準ずるものとして、資産除去債務に含まれることになる。
資産除去債務に該当する例としては、建物賃借契約における内部造作の除去義務や、定期借地権契約における建物の除去義務、原子力発電施設の解体義務、及び鉱山の原状回復義務等が該当する。また有形固定資産を除去する際に併せて取り除かれる有害物質としては、有形固定資産の除去時に除去や調査が法律上義務付けられているアスベスト、PCB、土壌汚染、さらに、土地の売却時や返還時に契約上原状回復が求められている土壌汚染等が該当する。
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