連載:見えてきた「次世代IFRS」(1)
米国会計基準の影響で変化を遂げるIFRS
井上寅喜
株式会社ヒューロン コンサルティング グループ
2009/9/10
日本が受け入れを決めたIFRS。しかし、そのIFRS自体が大きく変わろうとしていることに注意する必要がある。IFRSの改訂作業だけでなく、米国会計基準とのコンバージェンス作業が進んでいるからだ。2011年にも生まれる「次世代IFRS」の姿とは(→記事要約<Page 3>へ)
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金融庁企業会計審議会は2009年6月、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(以下、「ロードマップ意見書」という。)を公表し、IFRS に関する方向性を示した。
これを受け、今回は今後予定されるIFRSの改訂がどのようなインパクトを及ぼすか問題提起し、IFRSのこれまでの動きを米国会計基準との関係からひも解いていく。
また次回は、これまでの動向を基礎として、今後のIFRSがどのような形で変貌を遂げ、日本会計基準そして日本企業にどのようなインパクトを及ぼしうるか検討していく。
なお、本稿は筆者が個人的な立場で執筆するものであり、文中の意見にわたる部分は筆者の所属する組織の見解を反映するものではなく、個人的な見解であるに過ぎないことをあらかじめお断りしておく。
次世代IFRSが及ぼすインパクト
前述のとおり、金融庁企業会計審議会はIFRS受け入れに関する方向性を示したが、そもそも受け入れるIFRSとは何を意味しているのかについて検討する必要がある。
1996年の会計ビッグバン宣言以降、日本でも金融商品会計をはじめとする多くの会計基準の設定・改訂が継続されている。会計基準のコンバージェンスはこれまでに大きな進展があり、改訂を重ねてきた日本会計基準からIFRSに移行することのインパクトは必ずしも大きくない、という見方もできるかもしれない。
しかし、現状としてIFRS自体が大きく変わろうとしていることに注意しなければならない。
【図1】をご覧いただきたい。2009年だけでも、数多くの各種基準の改訂等が公表されていることがご了解いただけるであろう。そして、このような改訂の動きは後述するように、今後もしばらくの間、継続することが予想される。
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